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ゲッター線を浴びたい人に送る「新ゲッターロボ」のプレゼン

 みなさん、今年のゴールデンウィークはどのように過ごされましたでしょうか。
 旅行やドライブ、街歩きでアクティブな休日を楽しんだか、あるいは自宅でのんびり羽根を伸ばしてくつろいだか。休日の過ごし方は人それぞれとは思いますが、満足のいく休暇になりましたでしょうか。

 もしも「楽しかったなあ」という充足感よりも「もう休みが終わっちゃう……」「何もしてないのに終わった」などという喪失感や後悔が先立つようでしたら、ゴールデンウィークの最終日に華を添えるたいへんに良いものがございます。

 OVA『新ゲッターロボ』(全13話)という劇薬がなァ!!!!!

 この新ゲッターロボはバンダイチャンネルの他にAmazonプライムビデオdアニメストアなどでも配信されており、これからゲッター線を浴びたいという狂人初心者にうってつけの作品となっております。
 ゴールデンウィークをゲッターウィークに変えるなら今がチャンス!

『スーパーロボット大戦DD』より引用 ゲッターノワールGの必殺技・ゲッタービームの戦闘アニメ
みんなゲッターになるビーム☆

新ゲッターロボとは

 新ゲッターロボはゲッターロボOVAの3作目で、兄弟で言うと末っ子のポジションにある作品です。

 最大の特徴は、ゲッターロボの元祖主人公として名高い流竜馬が初めて主人公を張ったOVA作品であるということ。
 実は初のOVA作品である「真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日」や先日紹介した「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」は號(一文字號)が主人公なので、流竜馬が名実ともに主役となるのは新が最初で最後なんですね。真!!じゃ主役を食うレベルの存在感を出してるせいでよく主人公と間違われますが。

 ともあれ、そんな記念すべき流竜馬主演作品は一体どんなテイストに仕上がっているのかというと……

敵は何処かから襲い来る『鬼』。

対するは鬼も裸足で逃げ出す強者達。

ゲッターが出て殺す!何なら素手でも殺す!

飛び散る血飛沫!こぼれる臓物!

和風ダークロボットアクションムービー
「新ゲッターロボ」このあとすぐ!

 とまあ、だいたいこんな感じの作品です。
 先日ネオゲはゲッターOVAの中でも明るくライトな作風だとお話ししましたが、では残りふたつの作品はどうかというとどちらもテイストは違えどダークでバイオレンスで部分的にホラーな仕上がりになっております。

 なにせ「襲われたら同じ化け物にされる」タイプの化け物が敵なので、モンスターパニック的な描写がおつまみ程度に挟まってくるわけで。
 さらには非戦闘員が敵に襲われて死亡したり、何ならちょっとトラウマになりかねない死に様も描かれたりするわけで。正直なところビギナー向けにしてはかなりアクが強い出来なわけです。

 ただ、そのアクの強さがあってもなお「ゲッターとはどんなものか」を知りたくてやってきたゲッター入門者にとってこの上なく好条件が詰まっているのが新ゲッターロボという作品なのです。

新ゲッターロボのどこが入門向きなのか

 新ゲッターロボがビギナー向けである理由は大きく分けて三つ。

  1. ストーリーが一から始まる

  2. 物語上の謎は本編さえ観れば解ける

  3. 石川賢先生のテイストを濃く取り入れている

 順に解説していきましょう。

1.ストーリーが一から始まる

 これは単純に「前日譚」が用意されているかいないか、というだけではなく事前情報なしに各キャラクターの背景や相関図を理解できるか、という話も含まれます。

 まず、1作目の「真ゲッターロボ 世界最後の日」は序盤からあんまり説明もないまま怒涛の展開と数々の謎を叩きつけてくる最初からターボ全開な凄まじい作品でありました。そして最終回さえ音速を超えて視聴者を置き去りにしていくスタイル
 2作目の「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」は全4話という尺もあってかシンプルかつ王道な味付けの視聴者にやさしい熱血ロボアニメなのですが、「旧ゲッターチームと恐竜帝国の戦い」があったことを前提に話が進み、なおかつその詳細は尺の都合もあって本編では語られません。

 一方、新ゲッターロボは主人公が駆るゲッターロボと敵との戦いが始まるまさにその瞬間を第1話で描き、そこから3話までゲッターチームが揃うまでのストーリーを展開して、4話で急造のチームがようやくひとつにまとまる話をする…と一から丁寧に物語を進めてくれます。

 このわかりやすさ、この丁寧さこそが新ゲッターロボの売り。
「ゲッターロボってどういう話なの?」というビギナーがその身にゲッターのいろはを叩き込むにあたって、これ以上やさしい教材はありません。
 作風のアクが強すぎて全然やさしくない味わいなのはご愛嬌。

2.物語上の謎は本編さえ観れば解ける

 1と若干被る部分がありますが、「物語の理解に他媒体で得られる情報・知識が求められるか」というお話です。

 『真ゲッターロボ 世界最後の日』は序盤の謎は後半でだいたい明らかになるものの、わからん所は公式のムック本を読もうがググろうがどうしようがわからんというとんでもない置き土産を残していく作品ですし、『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』もそれ単体では「ゲッター線ってそもそもなんなの?」という解説が十分になされていないという弱点があります。

 では、新ゲッターロボはどうなのか。
 端的に言うと、物語内で提示される謎の答えはほとんど作中で得られます。
「鬼とは一体何なのか」「なぜ鬼はゲッターと戦うのか」「ゲッター線とはそもそも何か」という疑問は登場人物の台詞やそこから得られる推測で片が付くようになっています。

 一応補足しておくと「ゲッター線とは何か、どういう存在なのか」という謎に関しては視聴者が自分自身の解釈と考察を挟む余地があるのですが、それを考えるだけの材料は十二分に用意されているのでご安心を。
 何なら頭で考えなくても、魂で感じるだけでもいいのです。「ゲッターとは何なのか」が言葉にはできなくてもなんとなく心で理解できたなら、それが骨の髄までしっかりゲッター線を浴びた証拠です。

石川賢『ゲッターロボ號』より引用 真ゲッターに搭乗した號がゲッターのエネルギーを見てすべてを理解する場面
うまく説明できなくてもこういう気持ちになったら
それがゲッターを「理解」したということです

3.石川賢先生のテイストを濃く取り入れている

 これに関しては、まず石川賢先生による漫画版『ゲッターロボ』とOVAゲッターロボの関係からお話しせねばなりません。

 ゲッターロボという作品はそもそも東映アニメーションによる「TVアニメ版」と石川賢先生ほかダイナミック企画の先生方による「漫画版」のふたつのメディアミックスを同時展開させた作品であり、中でも石川賢先生が少年サンデーなどで連載していた漫画版ゲッターロボは『ゲッターロボ・サーガ』と呼称されています。

 OVAゲッターロボは主にこの『ゲッターロボ・サーガ』をベースに制作されており、作中にはしばしば漫画をオマージュしたシーンや台詞が登場します。

 新ゲッターロボは特にこの『ゲッターロボ・サーガ』の影響が大きく、流竜馬ほかふたりがゲッターチームのメンバーとしてスカウトされゲッターに搭乗するまでの様子を描く1話〜3話は、石川賢先生による『ゲッターロボ』における同一のエピソードをリメイクしたような造りとなっています。

『ゲッターロボ・サーガ』はOVAのみならず近年のメディアミックス作品にも多大な影響を与えており、ゲッターを味見すればだいたいサーガの風味が入っていると言ってもよいくらいには石川賢先生の影響は偉大なのです。 

 つまり、『ゲッターロボ・サーガ』のエキスを濃く注入された新ゲッターロボを観ればゲッターロボがどんな雰囲気の作品なのかだいたいわかっちゃうんです。

 新ゲッターロボはほか2作と比べると和のテイストが強い異色作でもあるのですが、実はその「和」の成分にはゲッターロボ以外の石川賢作品がちょいちょい混ざっているという始末なので、何なら石川賢作品の予習もできて一石二鳥です。
 新ゲッターロボを摂取してまんまと万が一ゲッター線の中毒になってしまった場合、『ゲッターロボ・サーガ』を経由して様々な石川賢作品に手を出してしまうおそれがあるので備えておくに越したことはありません。
 なお私のおすすめは『極道兵器』と『スカルキラー邪鬼王』です。どっちも面白いよ。

ここが見所だよ!新ゲッターロボ

 前置きが長くなりましたが、ここからいよいよ本題です。
 新ゲッターロボの面白さとは何か、ここまで熱く語れるほどの魅力の源はどこにあるのかという部分に迫ります。

 冒頭でゲッターが出て殺すだのモンスターパニックがどうだのと胡乱なことを書き綴りましたが、ゲッターロボの本質はロボットアニメ。
 つまりでっかいロボットががっしゃんがっしゃん動いて大迫力のアクションを披露する戦闘シーンこそがキモなのです。

 新ゲッターロボの戦闘シーンは、とにかく豪快で痛快。
 悪人面でマッシブなゲッターがどでかい敵をぶん殴ってぶった斬ってぶっ飛ばして、塵も残らず焼き尽くす。それが全てです。

 時には一筋縄ではいかない敵もいるけれど、隙と弱点を突いて一発逆転。そしてとどめに流れる処刑用BGM。激アツ挿入歌も複数完備で盛り上がりもカタルシスもポイント倍点。そんな100点満点のスーパーロボットのお約束が、新ゲッターロボにはふんだんに盛り込まれています。

 そう、たとえ作風がダークだろうがバイオレンスだろうが新ゲッターロボは紛れもなく「スーパーロボット」なのです。
「スーパーロボットってのはなァ!!こういうモンなんだよ!!これが最高にかっこいいんだよ!!」という制作陣の熱い心意気を右ストレートで叩きつけられているかのような熱量のこもった痛快熱血バイオレンスアクションスーパーロボットアニメ、それこそが『新ゲッターロボ』の本質です。

 また、物語を彩る様々なアクの強い登場人物も新ゲッターロボの大きな魅力のひとつです。

 殺人空手の使い手にして悪役よりも恐ろしい悪人面を披露するガラも口も頭も悪い主人公・流竜馬
 やっていることが恐ろしすぎてここではとても記述できないレベルの過激で狂気的な男・神隼人
 アホでスケベで野蛮だけどこの中で一番人の心がある良識人枠の元山賊坊主・武蔵坊弁慶
 これらの常軌を逸した野郎共をゲッターロボの乗り手としてスカウトしたナチュラル狂人・早乙女博士
 早乙女の娘であり、父子間に確執を抱えるちょっと態度がキツくて怖くて女王様っぽい貴重な女性キャラ枠・早乙女ミチル

 こんな個性豊かで怖くて気が狂った愉快な面々が出迎えてくれるイカレたイカした作品、それが新ゲッターロボ!

 特に学生運動のリーダーにして高校生の身分でありながら大臣暗殺を企てる危険人物、というあまりにも過激すぎる『サーガ』の設定から年齢を引き上げてもなお危険度は据え置きどころかさらにとんでもないことをやらかしている神隼人の活躍は必見です。

 初登場エピソード以降急にテンションが落ち着いて、頭脳派ポジション兼博士の助手枠にしれっと収まっている様子まで含めて原作再現なんです。何なら原作はもっと落ち着くのが早かったという恐怖のジェットコースター男こと神隼人をよろしくお願いします。

おわりに

 今回はゲッター線を浴びてみたい人向けの作品として『新ゲッターロボ』をチョイスしましたが、いきなり特濃のゲッター線を浴びて気が狂いたいなら『真ゲッターロボ 世界最後の日』から入るのもおすすめです。

 というか、たとえ理解が追いつかなくてもゲッター線を肌で感じたい!ゲッターの闘いをこの目に焼き付けたい!と思うのであれば極論どの作品から入っても構いません。
 ゲッターロボ・サーガから入ろうが、東映アニメ版ゲッターロボから入ろうが、OVAから入ろうが、TVアニメ『ゲッターロボ アーク』から入ろうが、ほかのメディアミックス作品から入ろうが、スパロボから入ろうが、推しのゲッターミームから入ろうが何だっていいんです。

 つまりこの記事で書いたことは微塵も参考にせず綺麗さっぱり忘れてくれていいってことです。

 ご清聴ありがとうございました。

ExtraStage:さらなるゲッター地獄へ

 ネタバレを含むためこの記事では物語の核心にあたる部分は伏せていますが、『新ゲッターロボ』に含まれるとある重要なゲッター真実について補足する記事を書きました。
 全13話を鑑賞した上での閲覧を推奨しますが、ネタバレ上等の覚悟がある方はどうぞ。

題名からしてすでにネタバレすぎるから伏せるけど次の記事へのリンクで正直モロバレな補足記事


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