『ジョーカー』

✳︎ネタバレあり

『ジョーカー』


【目次】
●格差社会
●臭いものにフタ
●そして英雄へ

【格差社会】
本作の舞台となるゴッサムシティでは
富裕層と貧困層の格差が広がる世界
おまけに治安が最強に悪い👎
この社会で起きる富裕層への不幸は
貧困層にとっては大好物である。
ひたすらに美味い。金持ちが没落する姿を
歓迎し、殺人者を喝采する。
本作の序盤、地下鉄での射殺事件の後
殺人者は英雄へと変貌する。社会が犯罪を歓迎する世界である事に気付き始めるのだ

【臭いものにフタを】
何故犯罪が歓迎されたのか?
作品冒頭ではゴッサムシティの状況がテレビから聞こえてくる。ゴミが溢れていると。飲食店の外には大量のゴミ袋。しかし町は処分をしない。ゴミを直視せず、目を背けているのだ。これは富裕層や町が貧困層の存在に蓋をしていることの比喩である
つまりこの街では都合の悪い事実に対して
無視をする。富裕層は自分たちの生活の贅沢さを追求し、他人(貧困層)には目もくれないのである。だからこそ富裕層の死亡
に対し、貧困層にまみれたゴッサムは喝采を浴びせるのである。

【そして英雄へ】
この社会において、仮面を被りながらも
自己の存在を認めてくれる事実に対し、旨みを覚えていくアーサー。人を笑わせたいという彼の願望の裏には、じつは人に馬鹿にされたくない、認められたいという願望が隠れている。人を笑顔にしたいが、自分は決して馬鹿にされたくない。自己矛盾を抱えた男である。だから彼は犯罪に走り続ける。犯罪を犯せば、自分の存在が認められるから。自らの暴力性を現実に波及させ
喝采を浴びる。そしてTV局での非行の後、
暴動の中心で崇められた彼は、本当の笑顔を自らの血で描くのだ。

【まとめ】
最近悲惨な殺人事件が増えているように思う。京アニの事件が記憶に新しい。

SNSの発達により幸福が可視化された。幸福が電子上で拡散され、反発する力が発生する。今、不幸な状況の人が他人の幸福を観たらどう感じるか? 格差が広がった社会ではこの現象に拍車がかかるだろう。そうなった時、ジョーカーを歓迎する社会なのか避難する社会かは分からない。せめて臭いものにフタをしない世の中へ。そんな警笛を鳴らす作品であった。

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