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選択の仕方

「あー、やっぱりダメだ」彼女はその日、何気ない日常の中で重要な変化に直面していた。10年間連れ添ったお気に入りの洗濯機が完全に壊れてしまったのだ。

「まさか昨日の占いが本当になるなんて…」彼女は、ストレスを感じると占いに頼る癖があった。昨日も、最近の予想外の出費が気になっていたため、気分転換になじみの占い師のところを訪れていた。
そこで「長年連れ添ったものと別れるかもしれない」と告げられ、少し落ち込んでいた。

「これでまた出費が…」と小さくため息をつきながら、これも運命と仕方なくインターネットで新しい洗濯機を探し始めた。
出費がかさんでいた彼女にとって、価格は重要な選択基準だった。

「あれ?これはなんだろう…」彼女の目を引いたのは、あまり知られていないメーカーからの、驚くほど安い洗濯機だった。その洗濯機には「シワ伸ばし」という珍しい機能が付いており、洗濯して乾かしても衣類がシワにならないと謳われていた。あまり聞きなれない機能に心を動かされた彼女は、期待に胸を膨らませながら購入ボタンをクリックした。

数日後、新しい洗濯機が届き、彼女は早速「シワ伸ばし機能」を試してみた。洗濯物は見事にシワひとつなく仕上がり、彼女は大満足だった。
「これで毎日のアイロンがけから解放されるわ!」と喜びをかみしめた。
その時、ふと彼女の目に映ったのは、自分の手の深いシワだった。彼女は年齢の割に手にシワが多く悩みの種だった。
長年のコンプレックスを眺めながら、ふと冒険心が芽生えた。「もしや…」

彼女は洗濯機に手を入れ、「シワ伸ばし機能」で自分の手を洗うという奇想天外な行動に出た。数分後、手を引き抜くと、その手は若々しく、まるで化粧品広告のモデルのように美しかった。
「うわぁ、本当にきれい…!」彼女は自分でも信じられない光景に心を躍らせた。

彼女はうれしさのあまり、その美しい手を写真に収めようとスマートフォンに手を伸ばしたが、驚くべきことに、スマートフォンが指紋認証で彼女を認識しなかった。「え?どうして?」何度試しても認証されない。

彼女は突然理解した。手のシワがなくなったことで、指紋も同様に失われてしまったのだ。彼女は慌ててパソコンを開き、セキュリティ設定を変更しようとしたが、そこでも同じ問題が起きた。

どうしようもない焦りを感じた彼女は再び占いに頼ろうと占い師のもとに走ったが、占ってもらう手相も消えてしまっていることにはまだ気づいていなかった。

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