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焼酎の楽園への招待ショートショートストーリー

焼酎の楽園への招待


玲子は、三軒茶屋の小さな居酒屋で一杯の本格焼酎を楽しんでいた。

目の前の「時空の涙」という銘柄が彼女を誘うように輝いていた。


ひとくち含むと、深い香りと共に、周囲の空間が不思議な揺らぎを見せた。

「ん?何かが…変わった?」

気がつくと、玲子は見知らぬ場所に立っていた。

そこは、彼女が何度も通い慣れた三軒茶屋のはずなのに、どこか現実離れした美しい街並みが広がっている。


周囲には色とりどりの提灯が灯り、人々は静かに笑顔を交わしながら、焼酎を楽しんでいる。

「ここは…どこ?」

戸惑いながらも、玲子は街を歩き始めた。

通りの両脇には居酒屋が並び、その一軒一軒がまるで時間を超えたかのような空間を提供している。

ある店では、古い木造の柱に囲まれた中庭が広がり、そこでの焼酎はまるで時代を越えた風味を持っていた。

玲子は思わず息を呑んだ。その場にいる全員が、何かしらの共通の体験を分かち合っているようだった。

「ここは…幻の街、焼酎の楽園?」

ふと、店主らしき男性が近づいてきて、「ようこそ、酔いの先へ」と微笑んだ。

その声にはどこか懐かしさがあり、玲子は安心感を覚えた。

「この街では、あなたの心が求める焼酎が必ず見つかる。

ここでの体験は、一生忘れられないものになるだろう」

玲子はその言葉に導かれるように、次々と異なる店舗を巡った。

それぞれの店は異なるテーマを持っており、時間と空間を超えた感覚をもたらした。

ある店では、昭和初期の三軒茶屋が蘇り、そこでの焼酎は当時の人々が愛した味わいを忠実に再現していた。

別の店では、未来の三軒茶屋が描かれ、そこで提供される焼酎はまだ存在しないであろう未来の風味を持っていた。

「こんな体験が、現実に存在するなんて…」

玲子は酔いが深まるにつれ、この街が持つ魔力に完全に引き込まれていった。

周囲の人々とも自然に打ち解け、彼らと共に焼酎の味わいについて語り合ううちに、玲子は自分がこの街の一部であるかのように感じ始めた。

しかし、ふとした瞬間に風が吹き、街が再び揺らぎ始めた。

玲子が驚いて目を開けると、彼女は再び元の居酒屋に戻っていた。

テーブルの上には、空になったグラスが一つ、そしてほんのりと残る焼酎の香り。

「幻だったのかしら…でも、あれは確かに現実だった」

玲子はその晩、三軒茶屋の街を歩きながら、再びあの楽園に戻れる日を夢見た。

彼女にとって、その街はただの幻想ではなく、心の中に深く刻まれた現実だったのだ。

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