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スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん第二章~#20
こちらの続きです
『パーサーナックス』
波乱の会議がなんとか終わり、参加者たちは続々と部屋から出ていく中、私はというとすっかり疲弊しきって椅子から立ち上がれずにいました。
と、そこへデルフィンさんが声をかけてきました。
「おつかれね」
「ああ…はい…エズバーンさんには助けられました。これでやっとドラゴンの捕獲に動けます」
「もう一つあるわ。パーサーナックスのことよ」
え?パーサーナックス?…そうでした、ブレイズはドラゴンスレイヤー。この世界からドラゴンを全滅させてやる、と豪語していたデルフィンさんにとって、グレイビアードのトップがドラゴンだったことは無視できない事実なのでしょう。
「彼はドラゴンでしたが…手を貸してくれました。彼なしではここまでできませんでした」
「確かに、彼の助けが必要だった。でも終わったことよ。それに、そろそろ彼も自分の罪を償う番だわ」
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「それに、彼はただのドラゴンではない。アルドゥインの右腕だったのよ」
そうなの!?それは知りませんでした。
「彼の犯した残虐行為は、何百年経った今も人々の記憶に残るほど忌まわしいものよ。彼は死ななければならないわ。当然の報いよ。あなたが殺しなさい」
は!?
え~~~~~!?
百歩譲ってパーサーナックスを罰する必要があるとしても、それをなぜ私が!?
「彼が死ぬまで…あなたに手を貸すことはできないわ。ブレイズの誓いを辱めることになる。ドラゴンボーンとして選びなさい。私たちの味方となるのか、敵となるのか」
極端すぎない!?
「よく考えて。彼はアルドゥインに手を貸し、私たちの祖先を奴隷にしたのよ。最終的にアルドゥインを裏切ったとはいえ、許せないわ。パーサーナックスが私たちを再び裏切るようなことがあってはならないの」
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デルフィンさんはそう言い残して去って行きました。こちらの意見を聞く気は全くないようです。相変わらずですね…
パーサーナックスを殺さなければブレイズと協力関係は築けない…そう言われましても、パーサーナックスには恩義があります。それに彼が過去しでかしたことの罪の断罪を、この私が下さなくてはならない道理もよくわかりません。私は確かにドラゴンボーンと呼ばれる特異体質ではありますが、それとこれとは関係がないはず。デルフィンさんは自分ではできないことを、私に押し付けているだけのように思えます。
そもそも彼女にコントロールされるほど信頼関係は築けていないので、何も考えずに従うつもりはありませんが…
「あのドラゴンを殺すのか?」
ファルカスさんに尋ねられますが、即答はできません。
「悪い奴ではないと思うがな。あいつは俺達と共に命懸けでアルドゥインと戦っていた」
「そうですね…わたしもそう思います」
しばらくその場で考えんでしまいました。
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その足でファルカスさんに着いてきてもらい、世界のノドまでやってきました。パーサーナックスはいつもの場所で羽を休ませていました。
「きたか」
こちらに気づくと顔を向けてきます。
「おかげさまで準備は順調です。…ただ、ブレイズが、あなたも死ぬべきだと言うのです」
パーサーナックスは目を細めました。
「ブレイズが言うのももっともだ。オニカーン、ニ、オヴ。私も他のドヴァーを信じない」
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この反応は意外でした。
「ドラゴンは支配する存在として生まれた。力を求める心がこの血に流れている。お前の中にもあるだろう?」
それは、そうです。私にも力を求める欲求は存在します。そしてドラゴンは人を支配できるほどの力が潜在的にある。それが行使されることを恐れるブレイズの気持ちは最もです。
「しかしあなたはアルドゥインを倒すことを助けてくれたじゃないですか。ノルドにシャウトを教えたのだって…なぜ彼らはあなたを信じることができないのでしょう」
「私は信頼できる。それは確かだが、彼らは信じない。ドヴァーを疑うのは正しい。私はひたすら瞑想を重ね、長きに渡って声の道を学ぶことで、自らの本性を克服したのだ。生まれついた本性に立ち戻らんとする欲望に駆られぬ日は、一日たりともない。ジン、クリフ、セ、スレイク」
そうだったのか…パーサーナックスは本性を抑制するという過酷な葛藤を常に抱えながら生きていたんですね。
「多大なる努力によって自らの邪悪な本性を乗り越えるか、善の心を持って生まれてくるか、どちらが良いのだろうな?」
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重い言葉です。
その答えは私などにはとうてい出すことができないものです。
確かにパーサーナックスがいつか理性を失い本性に負け、我々の脅威として立ち塞がるような、そんな未来が来ない保証はありません。しかし目の前の彼は、必死で自分と戦い、勝ち続けているのです。
ただひとつ言える事は、私に今のパーサーナックスを殺すことはできないということだけです。
たとえブレイズとの関係が切れたとしても。
「行きましょう、ファルカスさん」
「…ああ」
我々はパーサーナックスを残し、山を下りました。
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