【ポストコロナを考える】 イベントレポート:第1回3BOOKSオンラインイベント
4/26に3BOOKSとして開催した初のオンラインイベントのレポートを、
3BOOKSらしく音声と文章でお届けします。
ポストコロナ時代、
価値あるビジネスパーソンになるために、
どうアップデートすべきか
10分で聴ける/読める
動画/文章を作りましたので、ぜひみてみてください
イベント内容
現在、早稲田大学教授であり、元マッキンゼー日本支社長の平野正雄先生と三菱商事シリコンバレー支店にお勤めの吉成さんの対談を、3BOOKSアドバイザーでありハーバードビジネスレビュー元編集長の岩佐さんがファシリテーションしてくださった豪華イベントです。テーマは「ポストコロナ」と「アップデート」です。
先に少しだけ感想を述べておくと、ものすごく勉強になりました。
コロナという感染病そのものの話ではなく、コロナが経済の与えた影響や、それに伴うリーダーシップのあり方、ポストコロナの時代におけるキャリアなど、「なるほど、こう考えるんだ!」と思える話がたくさん聞けました。
BBB(Build Back Better)やSocial Distance Native、Japan Paradoxなど6つのキーワードもあります。詳しくは音声、文章で!
ちなみに3BOOKSとは
・ビジネスパーソンのアップデートをさせる
・厳選されたビジネス書のエッセンスが10分で聴ける/読めるサービスです。
現在、厳選されたビジネス書30冊を1冊につき10分でまとめた音声、文章を無料公開中です。よろしければどうぞ!(こちらです)
イベント趣旨
イベントの詳細はイベント告知ページに書いてありますので、今回は省略します。
音声(今回は動画)でまとめレポート (10分)
文章でまとめレポート (約4000字)
2020年4月26日 第1回3BOOKSオンラインイベント「#家で学ぼう」 ポストコロナ時代を考える
・本日のテーマ:ポストコロナ時代、ビジネスパーソンが変わらなければいけないこととは?
・メインスピーカー:
平野正雄先生
1987年から20年間、マッキンゼー&カンパニーにて経営コンサルティングに従事。主に日本の製造、消費財、通信分野の企業各社に対して企業成長戦略、海外展開、M&A、および組織改革などのアドバイスを提供。この間、1998年から2006年までマッキンゼー日本支社長として、日本における業容拡大を推進。
2007年にプライベート・エクイティー大手のカーライル日本の共同代表に就任。産業材、製薬、外食、ソフトウェア開発などの多分野の日本企業のMBOを支援。各社の企業価値向上を実現すると共に、投資の出口戦略として成功裡に株式上場あるいは大手上場企業への株式譲渡などを実行。
2012年より早稲田大学ビジネススクール教授。並行して、複数の企業の社外役員や顧問を務めると共に、政府の各種委員会の座長および委員を歴任。東京都出身
東京大学工学系反応化学修士了、スタンフォード大学工学系経営工学修了、工学博士(東京大学)
吉成雄一郎さん
1996年三菱商事入社、宇宙航空機部に配属。人工衛星ビジネスを経て、日本オラクルと提携し三菱商事100%出資位置情報サービス会社「ジクー・データシステムズ(株)」を2002年に創業。同社を7年間経営の後、金属資源部門に異動。主力事業である原料炭(製鉄用石炭)事業に従事。オーストラリア・ブリスベンにVice Presidentとして4年間駐在。その後、2年間の東京勤務を経て、2016年よりシリコンバレーに駐在。AI, IoT, BlockchainのPOCプロジェクトやスタートアップ投資(CVC)を主導。加えて、デザイン思考のコーチとして、社内外延べ30クラス以上1,000名以上にデザイン思考のトレーニングを行っている。
・ファシリテーター:
岩佐文夫さん
1964年大阪府出身。1986年自由学園最高学部卒業後、財団法人日本生産性本部入職(出版部勤務)。2000年ダイヤモンド社入社。2012年4月から2017年3月までDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集長を務めた。
現在はフリーランスの立場で、人を幸せにする経済社会、地方活性化、働き方の未来などの分野に取り組んでいる。
・対談の流れ:
平野先生が経営学者、コンサルタントとしての立場で客観的にいまの状況をとらえ、解説をしてくださった。吉成さんがシリコンバレーにいる立場から主に海外の状況を伝えてくださった。岩佐さんは編集者の立場から、議論が深まる質問、聴衆がいま一番聞きたいことを引き出してくださった。対談は、岩佐さんから「経営学者としていまをどうとらえているか?」と平野先生に質問するところから始まった。
話の要点:
1.リーダーシップの不在と国民性
2.コロナで世界は変わる
3.能力をアップデートし、変革をリードする人材に
概要:
コロナウィルス感染拡大抑制において、各国がそれぞれの対応をしており、まさに壮大な社会実験を行っている様相である。その中でも日本は、政府の対策が不十分・不明確にもかかわらず感染者数や死亡者数が抑えられているために、世界からは「Japan Paradox」と称されて、不可解な現象とされているが、決して称賛されていない。どうやらここにも、リーダーシップ不足を現場の奮闘で乗り切るという日本的な戦い方が踏襲されており、現に8割削減や三密回避などの標語とともに国民運動で困難を乗り切ろうとしている。これはまさに戦時中の構造と同じであり、「欲しがりません、勝つまでは」の標語の下、相互監視の圧力の中で忍従していれば、その内状況は好転するという精神主義が濃厚である。この一体感や現場主義は日本の強みであると同時に、科学的合理性や説明性に欠くものであり、やはり経営技術の後進性を国家レベルで露呈している観がある。
とは言え、このコロナウィルスはこれまで動かなかった企業の経営改革や国レベルでの社会革新の契機となるものであり、いま世界では、BBB(Build Back Better)の議論が始まっており、Withコロナを前提に新しい社会への移行を進めていくべき時である。また、”Social Distance Native”と呼ばれるように、個人の価値基準も大きく変容する可能性があり、今まさに社会大変容の時代に我々は突入したのかもしれない。その中で、ビジネスパーソンは労働市場の「質的量的大転換」に直面することになる。大量雇用の崩壊や個々の能力重視、有能人材のギグワーカー化が進む一方、平均的人材の雇用機会は減少するかもしれない。また、リモートワークの浸透は体力の衰えをカバーするので、年齢に関わらず有能な人材が活躍する「Ageless Society」の到来につながる。今後の社会の変化を強くとらえ、自らの専門性やクリエイティビティを磨き、社会変革をリードする人材になることが、ポストコロナの時代にビジネスパーソンに求められることになる。
1.コロナで日本は改めてリーダーシップ・戦略の不在と特異な国民性を世界に示した。
現在のコロナのパンデミックでは、各国の戦略の違いが浮き彫りになった。コロナ抑制を経営学的にモデルに分解すると、「政府の能力」×「医療インフラ」×「国民行動」=「感染者数・死亡者数」ととらえられる。韓国や台湾など、政府の公権力を強く発動した国は、テクノロジーを活用して、データに基づいて合理的で適切な判断を行い、感染拡大抑制に成功した。
一方、日本では、「リーダーシップの不在」という弱い「政府の能力」を、特異な「国民性」がカバーしている状況である。「政府の能力」の弱さの要因は、調和を重んじ、強い個人が突出した意思決定を行わない、「誰かが明確に責任を負うことを良しとしない」という社会構造にある。太平洋戦争、東日本大震災においても同じであり、戦後日本の国家としての成り立ちの歴史的背景からきている。特異な「国民性」とは、勤勉さや従属意識、同調圧力など日本人のDNAに根強く織り込まれているもので、政府の緊急事態宣言で「外出自粛」に従順に従い、国民が相互監視するという行動に表れている。いまの日本は「医療インフラ」と「国民性」が生かされて、結果的に「感染者数・死亡者数」を抑えられている観があり、一方政府の政策やリーダーシップに説明性、一貫性、科学的合理性が欠如しているために、明快な政策やリーダーシップ不在でも結果を出す「Japan Paradox」と世界から見られている。かつてマイケル・ポーターが「日本企業に戦略はない」と評し、それでも「現場力」で勝ってきたとされる戦後の日本企業の成功モデルと、この「Japan Paradox」は同じ構造であり、この日本固有の組織特性は非常に根深いものがある。こと説明性やリーダーシップという観点では、例えばドイツのメルケル首相やニューヨーク州のクオモ知事の例は参考にすべきものがある。もう一つの論点でコミュニティの役割があるが、例えば米国ではこうした社会的困難に際しては多くのコミュニティが自発的行動を起こして助けあう気風があるが、日本ではそもそもコミュニティの存在が希薄であり、政府と大衆みたいな様相で社会の奥行きや多様性に欠けるところがある。こういう観点も日本社会の均質性や全体主義性を反映したものであり、多様性、開放性、流動性が求められるニューノーマル社会では、この日本の社会特性は深刻なハンディキャップにもなりえる。
2.コロナで世界が変わる中、新しい日本をどう作るかを考えていくときである。
今回、日本がテクノロジー後進国であり、ITの活用がまったく進んでいない社会であることが改めて明らかになった。いまは否応なく組織や個人が変化を迫られている状況であり、これをポジティブにチャンスととらえて、一人ひとりが仕事のやり方、社会の生産性を上げていき、新しい日本をどう作っていくかを考えていかなくてはならない。
ポストコロナの時代には、経済停滞など大きな変化に直面することになり、いま世界では、コロナ前の社会に戻ろうとするのではなく、「Build Back Better」という、コロナの影響を踏まえてより良い社会を作っていこうという動きが始まっている。コロナと共生すること、Withコロナを前提とした、人と人が接しない“Social Distance Native”社会が到来すると予測され、これを機に温室効果ガスや気候変動リスクを低減するサステイナブルな世界をめざしていこうということも議論され始めている。
こうした流れは、企業がデジタル、ロボット、AIを駆使して固定費を削減し、より低コストで運営する組織に変わる動きを後押しすることにつながっていく。
3.ポストコロナ時代を生き抜くために、能力をアップデートし、自ら社会変革をリードすることが必要である。
企業がより低コストで運営する組織に変わることは、大量雇用が崩れてホワイトカラーが淘汰され、人材の流動化が進む、労働市場の「量的質的大転換」を意味している。一つの組織に所属せず、テクノロジーを駆使して、時間を切り売りして働く「ギグワーク」の導入が進み、人の移動が必要なくなることで、高齢者が肉体行動を伴わずに社会参画できる「Ageless Society」へと社会が変化すると考えられる。人材はより能力ベースで評価され、必要でない人材が淘汰される時代になる。
この状況においてビジネスパーソンが考えるべきことは、自分のバリューを明確化していくことである。他者との差別化を図り、AIや機械に置き換えられない能力、具体的には専門性やマネジメント能力、そして日本人の強みであるクリエイティビティを磨いていくことが必要である。
コロナを機にした社会構造の大転換点にあって、明確なリーダーシップやビジョンを持って社会の変革をけん引する行動を起こし、その中でどうやって自分の価値を高めていくかということを考え続けることが、ビジネスパーソンとしてこれからを生き抜いていく鍵となる。
補足メモ:
今回の「ポストコロナ時代、ビジネスパーソンが変わらなければいけないこととは?」におけるキーワードは以下の通り。
「ポストコロナ時代/Withコロナ時代」 コロナとの共生を前提とした新しい社会のあり方を模索するとき
「Japan Paradox」 日本において弱い政治の能力を特異な国民性でカバーしてコロナの感染を抑制しているという逆説
「Build Back Better」 単にコロナ前に戻るのではなく、より良い社会をめざしていこうとする議論
「Social Distance Native」 人と人とが接しないことを前提とした社会の到来
「労働市場の量的質的大転換」 大量雇用が崩れてホワイトカラーが淘汰され、人材の流動化が進行
「Ageless Society」 肉体的移動が伴わないことで高齢者の就労機会が増し、年齢が関係ない社会へ移行
いかがでしたでしょうか。
今はまだ大変な時期が続きますが、必ず来るポストコロナの時代に向け、私たちもアップデートして行かなければいけないことを強く感じたイベントでした。
3BOOKSではこれからも皆さまの「アップデート」にお役に立てる取り組みを続けていきます!次は「オンラインファシリテーション」の記事を公開する予定です。
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