見出し画像

②①『白獅子夢物語』

♰21 思い出。


 ――――金色の丸い天井に白い蝶と花が描かれている。
 ぼんやり見ていれば、横に誰かが立っていることに気付いた。
 騎士のノヴァさん。
 ふわりとしたクリーム色の癖っ毛の隙間から、静かにスカイブルーの瞳で見下ろしてきた。

「あっ、ごめ、んなさいっノヴァさん」

 自分がまた寝惚けたまま部屋から飛び降りて、教会に来てしまったことを知る。
 また迷惑をかけてしまい、慌てて起き上がり謝った。
 そっと上着をノヴァさんにかけられる。

「違う、ノヴァだ」
「あ、はい、じゃなくて……うん」

 ノヴァさんって呼んじゃだめだ。敬語もだめ。
 あたしを主(あるじ)にして騎士になると誓ったけれど、そこは譲ってはくれなかった。
 穏やかなのに、とても頑固なところがあってびっくり。

「ここなら、レオの夢を見るのか?」
「えっ!? またレオって呼んだ!?」

 彼の口からまたレオの名前が出て震え上がる。またレオを寝惚けて呼んじゃったの!?

「いや……君はここの方が眠れるようだから、愛する人の夢を見ているかと」
「う、ううっ」

 ノヴァはレオがあたしの愛する人だと思い込んでいる。
 愛する人。聞くだけでくすぐったい。
 そういうのは……あたしにはわからないよ。
 でも否定はできなくて、あたしはなにも言わずに俯く。
 約束のキスを思い出して、左耳を押さえた。
 この世界では、約束する時は耳たぶにするらしい。
 白い彼は、必ず迎えに来ると言って耳たぶにキスをした。
 必ず、迎えに来ると、約束のキスをしてくれた。
 そのあとに抱き締められた記憶が鮮明に読みがってしまい、胸が熱くなって苦しくなってしまう。

ここから先は

7,215字

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?