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②⑧『白獅子夢物語』
♰28 ベルベス。
聖少女が抜け出した途端に暗殺兵に襲われ、翌日には毒殺されかけた。
幸いノヴァが先に口にしたため、彼女が毒を飲むことは免れた。
ノヴァは、間一髪ノーマンが治療して救った。彼女だったら手の施しようがなかった。
魔法が効かない聖少女。
治癒の魔法も彼女には効果をもたらさない。
彼女を殺して無敵の短剣を手に入れたい隣の国の暗殺兵が、内部に潜伏していることは明らかになった。
確実に殺せる機会を伺っている。
陛下の身も安全ではない。信用のできる部下全員を陛下のそばにつかせた。
私一人がキオリ様の護衛をする。誰一人、近付けさせない。
「本当に貴女が口にせずによかったです。魔法が使えなければ、治療できなかったですから……。ノヴァ君も、貴女が無事だと知りほっとして眠っていますよ」
暗殺未遂の翌朝に、また薬を持ってきたノーマンが笑いかける。しかし昨日から寝込んだきりのキオリ様の反応は薄い。
力なく苦笑しながらも、ノーマンは薬を差し出す。
昨日と同じく調合作業を見張っていたが怪しい素振りはなかった。
ノーマンは五年前から騎士専属の医師になり、城にいる。彼はシロだろう。
朝食を運んだベルメールは、アルリック陛下の母親の侍女。聴取はしているが、アルリック陛下も彼女を容疑者には入れていないはずだ。
料理人、あるいは料理に近付けた者が毒殺の実行犯。暗殺兵に間違いない。
暗殺兵を見付け拷問し他に仲間がいないか、吐かせる。
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