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①③『白獅子夢物語』
♰13 勝利。
鳥のさえずりで目が覚めれば、毛布にくるまっているあたしはレオに凭れていた。
雨は上がっていて、いつものスカイブルーが広がる空だ。
ぽけーとしていれば、レオに顔を舐められたから「おはよう、レオ」と笑いかけた。
今日はまず、朝ごはんに兎狩り。素早く済ませてから、ジャングルを少しだけ散策してみた。
まだ足を踏み入れたことのない方へ進んだ。
そしたらひんやりした風が、水が落ちる音を運んできた。
行ってみれば、少し高い崖に出てジャングルの中に、幅二メートルくらいの滝を見付ける。
三十メートルくらい下は小さな湖になっていた。
「あたし、飛び込んでみたいと思ってたんだ! あの深さなら飛び込んでも平気そうだよね!」
度胸試しで飛び込みたかったんだ。流石に高過ぎるから少し崖を降りて、ジャンプしたい。
レオに言ってから、ドレスを脱ごうとしたけれど、その前にレオに腰辺りに噛み付かれて止められる。
振り向けばレオはクイッと顎で下を指すから、下をよく見れば、湖でなにかが蠢いていた。
「うわぁお……ワニがいっぱい」
その正体はワニだとすぐに気付く。無数のワニが湖にたむろしていた。
飛び込んでいたら湖が真っ赤になってたね。ほえー、と下を眺めながら、あたしは思った。
「あの尻尾をベルトにしたいな……」
短剣を持ち歩くときにベルトがあったら便利だ。いつも手に持ってるから。それにワニ皮、かっこいい。
「それにワニのお肉って美味しいんだって。レオは食べたことないでしょ、あたしが狩ってあげるね! まずはサーベルタイガーだけど」
ワニはまだ食べたことないであろうレオに約束してから、飛び込みは諦めて、優先すべきサーベルタイガーの追跡を始めた。
昨日の雨のせいで血痕は洗い流されたから、記憶を頼りに血痕のあった場所を探れば、森に続く足跡を見付ける。湿った地面にくっきりあるから新しい。
レオに待てと掌を突き付けて指示する。
何様のつもりだと言わんばかりに睨まれたけれど、レオは大人しくその場でじっとしてくれた。
ふー、と息を吐いてから、警戒しながら進む。右手の短剣も準備は出来てる。
慎重に進みながら、周りを確認した。
そして見付ける。最適な場所。あたしが生き残るために、適した場所。
ここがいいとあたしは足を止めた。
短剣はどっしりと小太りな木の幹に投げて突き刺す。もう一度コースを確認しながら、深呼吸をして覚悟を決める。
「リベンジ! 打倒っ! サァアベェエルタイガァアアア!!!」
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