②『白獅子夢物語』
♰02 謎の男
いつの間にか、眠っていたらしい。あたしは草原の上に横たわっていた。
夢の中で、眠ってしまうなんて。
森はすっかり夜に呑まれて薄暗かった。
大きな白い月が浮かんでいる。とても、とても、大きな満月だ。
黒い夜空に、大きな穴を開けてしまったかのように、そこで淡い光で地上を照らす。
合唱する虫の音が静かに響く。
「レオ……?」
レオはもう消えてしまったのだろうか。
泣き疲れて、瞼は重かった。捜す元気は、ないみたい。
「――――…人生は苦痛に満ちている」
聴こえてきたのは、とても低い男の人の声だった。
顔を上げてみれば、男の人が一人、どっしりとした太い太い幹の木に凭れるようにあたしのそばに座っている。
「一握りの幸福を味わいながら、苦痛に耐え続けて生きる。他の生き物は厳しい自然の中で生きることがやっとだと言うのに、お前達人間は酔狂だな」
月明かりのせいか、彼の髪は純白に輝いて見えた。まるで真珠みたい。
肌も色白。服は昔の西洋人が着ていたみたいな、袖が広く、胸元を広げた白いブラウスだ。まるで王子様、みたい。
月明かりに照らされる肌は、白かった。
彫りの深い顔は、レオに似ていると感じた。
それはきっと、あたしを見下ろす瞳が、同じ海の底みたいな青さだからだと思う。
あたしは瞼を閉じて、深く息を吐いて眠りに落ちた。
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