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③④『白獅子夢物語』
♰34 鳴く蛙。
金色を基調にした丸い天井には、白い蝶と花が描かれていて、こんな時でも美しいと思った。
反応が遅れていたら、心臓に矢が突き刺さっていたけれど、それだけは避けられたみたい。心臓は動いている。
「ぁ……ぅっ……」
息を吸うだけで痛みが走った。左の胸に突き刺さった矢のせいだ。
肺が傷付いているみたいに息ができなくって、痛みが酷すぎて、意識が遠ざかりそうになった。
「キオリ様っ!!」
あたしの意識を引き留めたのは、ノヴァの声だ。
「っ近付くな!!」
レオの咆哮のあと、ドンッと音がしてノヴァが呻く声がした。
「よくもっ!! 貴様らっ……!!」
「!? 違う! 我々ではない!!」
唸るレオ。アルリック陛下が否定をした。
違う。違うよ、レオ。
アルリック陛下達があたしを傷付けるわけがない。皆いい人達だ。
矢を放ったのは、暗殺兵だ。
でも、レオは知るはずもない。あたしの命を狙う暗殺兵のことは知らない。
暗殺兵は、匂いも気配も消している。レオには、区別がつかない。
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