見出し画像

②⑦『白獅子夢物語』

♰27 お願い。


「もっと自覚を持つんだ」

 初めて会った部屋で、長すぎるテーブルの向こうから、アルリック陛下は上っ面の笑みもなく鋭い眼差しと声で告げる。
 無断でそれも一人で城に出たあたしに非があることは、理解しているから反論はせずに自分の手を握り俯く。
 例え反論があっても、国王である彼には言い返せない。

「君も子ども達も無事で住んだが、一つ間違えれば君は殺されていた。自分がどんなに重要な存在か、まだ理解していないのかい?」

 あたしは国を救う唯一の方法。
 一つ間違えればあたしは、暗殺兵に殺されていたかもしれない。
 子ども達も巻き込まれていたかもしれない。そう思うと、責任に押し潰されてしまいそうだった。
 アルリック陛下は深く息を吐いて、溜め息を誤魔化す。

「……ここから三つ離れた街に、森の主が現れた」
「!」

 離れるように顔を上げた。
 森の主が、人間の街に出没?

ここから先は

7,470字

¥ 100

期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?