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⑩『白獅子夢物語』

♰10 帰るぞ。


「あら、お坊っちゃま……聖少女様と仲良くなられたのですか? 同い年ですものね」

 暫くして、バスケットにメロンパンを一杯に詰め込んだメイドさんが戻ってきた。
 甘い香りに意識が持っていかれかけたけど、お坊っちゃま呼びに首を傾げる。

「お坊っちゃま……?」
「あれ、知らなかったの? この家はお父様のものなんだよ。俺はクロード、クロード・ソルトジョンズ。大地主の一人息子」
「なぬっ!?」

 キョトンとしたクロードくんが、さらりと名乗った。
 このお屋敷のご子息様!?
 だからこの子、堂々と居座ってるのか!

「え、でも、同い年なの!?」
「十三」
「なんでちっちゃいの!?」
「むっ……確かに俺は成長が遅いけど、そのうちグンッと伸びてキオリを越えるぞ! お父様を見たろ!」
「そ、そうか……」

 てっきり十歳くらいの男の子とばかり思ってたから、気軽に話し掛けたのに。
 ご子息様は同い年!
 むすっと唇を尖らせたクロードくんは宣言した。
 正直、当主の身長を覚えてない。終始頭を下げてたもん。

「大地主の息子ってだけでモテモテじゃん! おのれ、御曹司! プレイボーイめ!」
「だ、誰がプレイボーイだよ! だから興味ないってば!」

 顔よし金よし絵よし、名付けて笑顔は金で買える!
 恵まれたクロードくんが羨ましくてジェラシーが込み上がってきた。
 クロードくんは真っ赤になって、あくまでモテたいわけじゃないと否定する。

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