見出し画像

③③『白獅子夢物語』

♰33 選択する運命。


「――――…レオ」

 確認するように、あたしは呼んでみる。

「漸く、現実と認めたのか」

 彼は自分をレオだと認めて、微笑む。
 あたしも笑い返す。

「うん……もう、現実から逃げないよ」

 現実逃避の夢だと思い込みたかった。
 家族の問題から遠く離れられたけれど、現実だと受け入れるには時間がかかりすぎた。
 でも、もう現実だと認めている。
 この世界は、現実だ。夢じゃない。
 ここは異世界。白い彼は、白いライオン。
 あたしは運命に選ばれた聖少女。

「……レオは、森の神なんだよね?」
「人間達はそう呼ぶ」

 白いライオンで、白い彼は、森の神。
 聖少女が無敵の短剣で倒すと伝説に記された獣の姿をした神様。
 額を重ねた胸の中から、ドクドクと脈打つ音が伝わる。
 彼の背中に回した腕でギュッと締め付けた。

ここから先は

6,746字

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?