人物感想文「ラブレター」_morgen_
11/9にmorgenさんのイベントに行ってきました。
読書感想文が好きと語る彼女に原稿用紙5枚分の
感想文を書いたので、加筆修正前のものを記録と
してここに残します。
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ねえ、morgen。どうやって生きてるの?文学的で自由で煙草を好む女の子。彼女を簡単に紹介するとこうなる。初めて彼女を見たとき、不思議で掴み所がない人、そう思った。彼女がどうやって生きているのか知りたくて動画を見るようになった。すべての動画を複数回見終えた今、私はいまだ彼女のことが分からない。ただ、分かったこともある。私は彼女のことが好きだ。
高校の頃から演劇をやっている。大した経験も技量もあるわけではないが、間違いなく青春を捧げた。大好きでずっとこの世界に浸っていたい、そう思える。しかし、やる気だけではどうにもならないことがある。私は自分の人生を自らの手で変えることが怖い。普通に学校に通って、普通に就職して、普通の人生を歩む。世間が敷いたレールを歩いていたい、変わらない日常に安心していたい。それなのに、私が好きなものは不安定で目まぐるしく変化する演劇という世界。これを職業として捉えることの難しさは嫌でも見てきた。もしも夢が叶ったら、今の生活が変わってしまう。やりたいことを優先したら普通の人生ではなくなってしまう。なら今のままでいい。そんな私を見たら彼女はなんて言うだろう。彼女は私と違って、自分の人生を自分で生きていた。赤の他人である私から見た彼女の人生は、紛れもなく彼女自身のものだ。私はそれを見て羨ましいと思った。なぜだろうか。私は自分の人生を変えることが怖いのに。その日の生き方をその日に決める自由な彼女になぜ憧れるのだろうか。
人間は自分と正反対の人に惹かれる、というのを聞いたことがある。それは自分と異なるものへの興味、だけではないのだろう。心のどこかにある小さな憧れが反応するのだ。私の毎日と彼女の日々は正反対の座標に位置している。遠くにいる彼女を見つけて、私の心の中に確かに存在していた感情が必死に反応した。こうなりたいんだ、こう生きたいんだよ、と自らに訴えるように。私が蓋をして隠していた小さな芽は彼女によって成長し、気づかないふりなんてできないほど大きくなっていた。人と違う生き方を、レールから逸れた道を素敵だと思う。この感性を自分に向けることだってできるはずだ。やりたいことをやりたいようにやろう、こんな簡単な答えをやっと自分のものにできた。もし挑戦した結果貯金が底をつき家賃が払えなくなったら、私もYoutubeを始めればいい。そんな賭け事を考えられるくらいには自分の人生への期待は膨らんでいた。
自分でも気がつかないうちに、彼女に魅了されていった。彼女の真似をして映画を見に行ったりオレンジジュースを飲んだり、ツインテールをしたり。毎日動画を見ていろんなものを少しずつ吸収している。
彼女が好きな本、「凍りのくじら」ももちろんすぐに読んだ。この物語は、藤子・F・不二雄先生とドラえもんのひみつ道具が多く登場する。この読書体験を機に身の回りにドラえもんのグッズが増え、映画の視聴履歴もドラえもんが占めるようになった。藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れる予定も決まっている。
本を読み返すことも多く、不安になったときや逃げ出したくなるときにはひみつ道具、テキオー灯を思い浮かべるようになった。もし、このスポットライトがテキオー灯だったら。舞台に立つ私はずっとこの物語の住人で、昨日も明日もここにいるの。そうやって作品に溶け込める。いつの間にか私も日常の中で光を意識するようになっていた。
もう一つよく思い出すことがある。それは主人公が身の回りの人の個性にS.F.の名前をつける遊び。S.F.。サイエンス・フィクションではなくスコシ・ナントカ。スコシ・不完全、スコシ・フラット、スコシ・不足。主人公の生きる世界が息苦しく感じてしまう場面も多い中、このスコシ・ナントカな登場人物とともに様々な出来事を乗り越えていく。
読後、一つの疑問が浮かんだ。この本を好きと語る彼女の個性はなんだろう。考えてからはっとした。答えはもう浮かんでいた。私から見える彼女は言うまでもない。スコシ・不透明。何が好きで、どんな人で、何を考えているのか。彼女の本質を覗こうと目を凝らしても動画の先には煙がかかっている。彼女自身から発信される情報でしか彼女を知らない。でも、それでいいと思える。どんなに見つめても煙に包まれて不透明な彼女。どうやって生きてるか分からないmorgenに私は惹かれたのだ。
もうすぐ画面の向こう側の彼女と会える日が来る。きっと実際にあっても彼女は煙の中にいてどうやって生きているかなんて分からないだろう。今更探ろうとは思わないが一つだけ伝えたいことがある。私の声は、言葉は届くだろうか。煙をかき分けてこの言葉が届きますように。コエカタマリンを使わずとも私の発声で届きますように。morgenさん、あなたのことが好きです。
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