「針路」
ゆらり指先で優しくなぞって
形を確かめた小さなかかと
いまその足は一歩外に踏み出し
室内に残ったのは半身の私と黒い猫
どこへいくのだ
誰かが発した言葉が脳内に再生される
反響、残響、反響、残響
どこというどこが大量生産される
右足に続かない軸足がバランスを保つ
黒猫は招き猫のように目のそばで腕をこねる
いくのか、それとも戻るのか
空は放っておいても翳り、そして白む
私の向かう先など誰の関心も惹かない
赤い夕陽の沈没を風見鶏が嘲笑したとき
百万、千万の民がその過ちを糺すだろう
反響、残響、反響、残響
無責任極まれり、ここに
そして微動だにせず汗を垂らすばかりの中途半端
いつまでも描かれぬ道が脳内ですっと消えた
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