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軽度者への給付縮小は本当に必要なのか?現場から見る政策の課題
最近、財務省が要介護1・2の高齢者に対する訪問介護や通所介護の給付を縮小し、市町村が運営する「地域支援事業」に移行することを提言しているニュースが話題になっています。この背景には、急速な高齢化に伴う介護費用の増大があり、財源を重度の高齢者に重点化したいという意図があるようです。
しかし、現場で働くケアマネジャーの視点から見ると、この政策には多くの課題があり、軽度者への給付縮小が果たして適切な選択なのか、大きな疑問を感じます。
軽度者への支援が持つ重要な意味
要介護1・2の方々の生活を支える訪問介護や通所介護は、単なる「軽度者向けサービス」ではありません。これらのサービスは、高齢者が自立した生活を続けられるよう支援し、重度化を予防する重要な役割を担っています。
現場では、軽度者への支援を継続することで、以下のような成果を見てきました:
• 重度化の予防:適切な介入により、要介護度の進行を遅らせることが可能。
• 家族の負担軽減:軽度者への支援が家族の介護負担を軽減し、介護離職やストレスの増加を防ぐ。
• 社会的孤立の防止:通所介護などを通じて、地域でのつながりが維持され、孤立による精神的負担が軽減される。
政策提言の課題:現場から見た疑問
1. 地域格差の拡大
市町村が運営する地域支援事業への移行が提案されていますが、自治体ごとのサービス提供能力には大きな差があります。
例えば、財政力が豊かな都市部では手厚い支援が期待できる一方、地方の過疎地ではサービスが十分に整備されないリスクがあります。
2. 長期的なコスト増加
軽度者への支援を削減することで、症状が進行し、医療費や介護費用が増大する恐れがあります。短期的な財政削減にこだわるあまり、長期的なコストが見過ごされているのではないでしょうか。
3. 家族への負担増大
現場では、軽度者への支援が家族の介護負担を大きく軽減していると実感しています。
給付縮小により、家族がすべてを担わなければならなくなれば、介護離職や精神的負担の増加が避けられません。
解決策は「削減」ではなく「効率化」にある
財務省の提案が目指す「持続可能な介護制度」は必要です。しかし、それを「給付縮小」に頼るだけでは、問題の根本的な解決にはなりません。
現場の視点から考えると、以下のような取り組みが求められます:
• 効率的なサービス提供:ICT技術やデータ活用により、現場の業務負担を軽減し、限られた人材を効果的に活用する。
• 地域支援事業の充実:市町村ごとの財政力の差を補填し、どの地域でも均質なサービスが受けられるようにする。
• 予防ケアの強化:軽度者への支援を重視し、重度化を防ぐことで、医療費や介護費用の増大を抑える。
• 業務の簡素化:ペーパーレスの推進、担当者会議の開催などの業務を簡素化して、限られた人員を最大限に活かす取り組み。
現場の声を政策に反映させるべき
私たちケアマネジャーは、利用者とその家族の生活に最も近い場所で働いています。だからこそ、現場で見ている課題や可能性を、もっと政策に反映させる仕組みが必要です。高齢化が進む中、「財政削減」だけでなく、利用者の尊厳と生活の質を守るための「現場に優しい改革」を進めるべきではないでしょうか。
軽度者への給付縮小という提案に対して、現場の視点から課題を考えることで、多くの人にこの問題について考えるきっかけになれば幸いです。