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介護人材不足の根本原因はシステムにあり?業務効率化と現場改善の提案


介護業界では人材不足が深刻化しています。厚生労働省の予測では、2025年には約37.7万人の介護人材が不足するとされています。しかし、その根本原因は単なる人手不足ではなく、介護職員が抱える業務過多と非効率なシステムにあります。

今回は、介護職員の業務実態と、業務効率化・現場改善の具体策を提案します。

1. 介護職員が抱える業務の実態


介護職員の業務は「利用者のケア」を中心としつつ、非常に多岐にわたります。

主な業務一覧

• 配薬:服薬確認・管理
• 記録:日誌作成、報告業務(手書き・PC入力)
• 排泄介助:トイレ誘導・おむつ交換
• 食事介助:提供、見守り、支援
• 入浴介助・清潔保持
• 体位変換:床ずれ(褥瘡)予防のための体位調整
• 口腔ケア:歯磨きや口腔内の清潔保持
• 移乗介助:車いすやベッドへの移動支援
• 見守り業務:転倒防止や体調確認
• 救急対応:急変時の応急処置や救急搬送の手配
• 家族への対応:問い合わせ対応や日々の報告

さらに、ケア業務以外にも以下の業務が日常的に行われています。
• 委員会活動(感染症対策、事故防止、安全管理など)
• 行事・レクリエーションの準備と運営
• 送迎や通院の付き添い
• 清掃や備品管理

現場の声:「家族対応や雑務を含め、これだけ多岐にわたる業務を毎日こなしていると、本当にケアに集中する時間が足りません…。」

2. 業務の多重化とシステム的な問題


介護職員が業務過多に陥る背景には、以下のシステム的課題があります。
1. 役割分担の不明確さ:介護職員が事務作業や雑務、家族対応まで広範囲に担当
2. 非効率な業務フロー:記録や報告業務が煩雑で、ケアの時間が削られている
3. 人手不足による過密シフト:限られた職員で多くの業務をカバー

3. 現場の声を反映する仕組みと民間企業の成功事例


① ボトムアップ型の意見収集システム

民間企業の事例:トヨタ自動車の「カイゼン活動」
• 内容:現場作業員が業務改善の提案を出し合い、小さな改善を積み重ねることで効率化を実現。

介護現場への応用
• 記録作業の簡素化や、家族対応の時間管理策など、現場の気づきを形にする仕組みを導入。

② 改善提案制度(報奨付き)

民間企業の事例:セブン-イレブンの改善提案制度
• 内容:業務効率化や顧客満足向上のアイデアを提案し、採用されると報奨が受けられる。

介護現場への応用
• 「家族対応の効率化」「行事準備の簡略化」など、具体的な提案が採用されれば報奨を設け、職員のモチベーションを高める。

③ 現場主導の「改善チーム」設立

民間企業の事例:ヤマト運輸の「クロネコ改善活動」
• 内容:小チーム単位で課題解決を進め、成果を全体で共有する仕組み。

介護現場への応用
• 「救急対応フロー見直しチーム」や「口腔ケア効率化チーム」を設立し、現場主導で効率化に取り組む。

4. 業務効率化と現場改善の提案


上記の成功事例をもとに、介護現場における具体的な改善策をまとめます。
1. 役割分担の明確化(タスクシフト)
• 事務作業や家族対応の一部を専任スタッフが担当し、介護職がケア業務に集中する体制を整える。
2. ICT・AIの導入
• 記録作業をタブレットで効率化し、家族対応の履歴管理もシステム化する。
3. 現場の声を反映する仕組み
• ボトムアップ型の意見収集制度や、改善提案に報奨を設ける仕組みを導入する。

5. まとめ:システム改革が介護の未来を支える


介護職員の業務過多とシステムの非効率さは、人材不足を加速させています。
現場の声を反映し、業務の効率化と役割の明確化を進めることで、職員が働きやすい環境が生まれます。

「現場が変われば、介護の未来が変わる」。
その第一歩は、職員1人ひとりの声をすくい上げ、システムを根本から見直すことです。

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