![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/42210515/rectangle_large_type_2_8c927130b66222993adbcdd6827aad49.jpeg?width=1200)
デシマルグレードには130年の歴史あり!!
1890年
普段、私達がクライミングで使っているデシマルグレードはアメリカで使われているモデル、ということはよく知られています。
「5、8」「5、9」「5、10」という数字の上昇に合わせて難易度が上がって行きます。
前半の数字は登山のレベル(クラス)を表します。
後半の数字で難易度を表しています。
1890年、アメリカンアルパインクラブで提唱されたデシマルグレードはさらに細分化されていて、大きく3つのシステムで構成されていました。
1、クラスレイテイングシステム
普段私たちがよく目にする「5、○」という数字の並びを指します。
2、グレードレイティングシステム
行動時間を指します。
3、プロテクションレイティングシステム
プロテクションの危険度やセットの難易度を表します。
ヨセミテデシマルシステム
そしてこれらの3つのシステムを総称してヨセミテデシマルシステム
(YDS)として長らく使われます。1900年あたりまではクライマーに登れるレベルは最高でも5.9程度でした。5.10台が受け入れられるようになったのは60年代になってからです。
その後YDSは徐々にシステムそのものを見直され、現在私たちが使っている5.9、5.10a、といったシンプルなグレードシステムに落ち着きます。
ちなみに、10a、10b、と、数字の後にアルファベットを追記してグレードの細分化を最初に提言したのは、ヨセミテの開拓などで名高い、伝説のクライマー、ジム・ブリッドウェルさんです。生前の彼とジョシュアツリーで焚き火を囲んで、仲間達とウィスキーを飲んだのは、私にとって素晴らしい記憶です。
私にとっては面白いおじいちゃんといった印象でしたが、数々の伝説を生み出してきた素晴らしいレジェンドクライマーです。
話を戻します。
「ヨセミテ」はクライミングで有名なヨセミテ国立公園の事です。アメリカのクライミング文化はこのヨセミテから発祥したといっても過言ではありません。「デシマル」は十進法のことです。数字の並び方を示しています。「システム」は体系のことです。
それではヨセミテデシマルシステムを、順を追って解説していきます。
クラスレイティングシステム
前半の数字の解説です。
クラス1、歩くだけのハイキング。手を使うことはありません。明確なトレイルで迷う可能性はほぼありません。怪我の心配も無く登山靴も必要としません。
クラス2、簡単なクライミングが出てきますが難しくありません。時々手を使ったクライミング動作が出てきます。トレイルは時々分かりにくい箇所があり、怪我のリスクも上がります。登山靴は履いたほうが良いでしょう。
クラス3、クライミングの要素が強くなり、両手を使いますが難しい箇所はありません。落ちる可能性が上がり怪我をするリスクも増えます。滑落は致命的な怪我となります。初心者はロープを使ったほうが良いでしょう。
クラス4、垂直のクライミングなど技術的な要素が強くなります。落ちる可能性が上がり怪我をするリスクも増えます。滑落は致命的な怪我となります。全ての登山者はロープを使ったほうが良いでしょう。
クラス5、技術的なクライミングです。落ちる可能性が上がり怪我をするリスクも増えます。滑落は致命的な怪我となります。全ての登山者はロープを使ったほうが良いでしょう。クラス5になると一層細分化されたサブクラスが必要になります。クライミングの難しさは5.0 から 5.14の間で定義されます。
このグレーディングシステムは登山でも応用されていて、クライミング要素の強い登山にはとても便利です。
グレードレイティングシステム
I、1〜2時間の行程です。
Ⅱ、半日以下の行程です。
Ⅲ、半日から1日の行程です。
Ⅳ、1日の行程です。
Ⅴ、2〜3日の行程です。
Ⅵ、4〜6日の行程です。
Ⅶ、1週間以上の行程です。
プロテクションレイティングシステム
G(good)、満足できるプロテクション。
PG(Pretty good)、ほぼ満足できるプロテクションだが、時々不確かな箇所がある。
PG13(13 feet)、4.5メートル以上のプロテクション間隔。満足できるプロテクション。滑落のリスクがあるが、重篤な怪我を引き起こすことはあまり考えられない。
R(runout)、少ないプロテクション。滑落すると重篤な怪我をするリスクが高い。
X(extremely dangerous)、プロテクションが無い。滑落した場合は重篤な怪我、或いは死亡のリスクが高い。
まとめ
例えば、5.12aの15mほどのルートを登ることと、5.9、R(Ⅴ)を登ること、どちらが難しいでしょうか?難しさの要素は、肉体面だけでは測りきれません。精神的な要素が強い場合、その影響は肉体に及びます。また行程が長くなることによって天候不良に見舞われる可能性も高くなるでしょう。
長い行程の中では、小雨や霧の中、難しいルートファインディングとクライミングの可能性が出てきます。この部分はゲレンデのスポーツクライミングと大きく違う部分です。
私たちが普段使っているデシマルグレードは、1890年から使われていたヨセミテデシマルシステムのクラスレイティングシステムを更に進化させたものです。
しかし、行程が長くなればなるほど、ボルトなどの人工物が少なければ少ないほど、クラスレイティングシステムだけでは、リスクの輪郭がはっきりとは浮かび上がってきません。
日本でも、RやXがつくルートはありますが、より正確にYDSの3つのレイティングシステムを表記することによって、更にリスクを明確化できます。
既に古くなってしまい、使われることのなくなったYDSですが、日本でも、ルートによってはYDSを採用しても良いかもしれません。
いいなと思ったら応援しよう!
![ASAI Nature Climbing](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162846306/profile_bf9b0b4ba047cd379d145ea652ab1428.png?width=600&crop=1:1,smart)