クライミング講習の選び方「ガイド」「インストラクター」の違い
はじめに
今回はクライミング講習を受けようとしている方々に向けて、失敗しない講習会の選び方を紹介します。これからクライミングを始めようとしている方、始めたものの、行き詰まりを感じている方の参考になれば幸いです。
インストラクターとガイドの違い
インストラクターはクライミングの技術を伝える人です。ガイドは目的の場所まで案内する人です。これは大きな違いなのでしっかり抑えておきましょう。
それでは詳しく解説していきます。
インストラクターといっても様々な得意分野を持ったインストラクターが世の中にはいます。この部分は大きく3つのジャンルに分けて考えられます。
1、ボルダリングなどの高度なクライミング技術に長けている。
2、ロープワークなど山岳地域でのリスクマネジメントに長けている。
3、コンペなど大会に向けたトレーニング指導に長けている。
ちなみに私の場合は2に該当します。
一方で、ガイドは主にマルチピッチクライミングやアルパインクライミングルートの案内が主となります。ボルダリングのような誰でも手軽に始められるジャンルのクライミングにはガイドは殆どいません。リスクが高くなるジャンルにガイドサービスの価値が発生するからです。
次にどんな講師を選んだら良いのか?という事ですが、この部分ははっきりとした指標のようなものがありません。もちろん資格を持っているインストラクターやガイドの方もたくさんいて、資格を持っているということを一つの指標にしても良いでしょう。ただし、資格を持っているからといって、経験値が高いとは言い切れず、むしろ「資格さえあれば良い」と考えている講師が居るのも事実です。
個人的には、取得までの道のりが長く経験値も反映されるような資格以外はあってもなくてもどちらでも良いと考えていて、必要なことは圧倒的経験値とホスピタリティの2点だけだと思っています。何故かというと、自然の中での活動はクライミングに限らず全て、適応能力の高さが求められるからです。
体育館の中で行うスポーツに自然環境は関係ありません。一方で自然活動は自然環境の影響をダイレクトに受けます。資格だけ持っていても経験値の少ない講師の場合、教科書通りの技術の伝達が主となるので、受講生にとっては、どの山に行っても通用する技術を手に入れるのは難しくなります。
個人的に危惧するのは「これが正解で他の選択肢はない」といった講師の経験値の少なさゆえの盲目的な正論が展開されることによって、いざ受講生が山に行った場合の本能的な応用力を奪ってしまうことです。この部分は表に出にくいのであまり注目されませんが、資格という規格を作ったことによって必ず発生する一種のバグのようなものなので無くなることはありません。
講師を選ぶ際の目安は、SNSなどで活動の様子を見て判断するしかありませんが、実は最も難しいのが講師の選定です。この部分はトライアンドエラーを繰り返しながら良い出会いを見つけるしかありません。その際、知識の量ではなく、経験値とホスピタリティに注目してみてください。修羅場をくぐり抜けて来た数の多いクライマーほど、高い適応能力を持っていて、物事を決めつけるような指導はしません。これは長年この業界に携わってきて自信を持って皆さんに伝えられることの一つです。
大人数での講習会
大人数での講習会の目的は平均的な技術の伝達にあります。ハーネスとロープは必ず8の字結びで連結しましょう。支点は固定分散で作りましょう。ビレイデバイスはATCを使います。などが該当します。環境によっては上記した技術だけでは対応しきれませんが、ここではそういった内容は省かれます。
講習会の目的と書きましたが、正確に書くと、大人数での講習会で個人個人の特性に合わせた講習はできないのです。その理由は、講習の時間が膨大になってしまい、時間と情報量の増加によって認識の不一致が起きやすくなってしまうのです。一歩間違えれば死んでしまうクライミングにおいて認識の不一致は致命的です。ゆえに平均的な技術の伝達が主となります。
大人数の講習会に参加する利点は3つです。
1、最初の一歩としての技術を学べる。
2、同じレベルの仲間が出来やすい。
3、比較的安価
少人数のプライベート講習
少人数で講習を開催する目的は、受講生にとっての最適解を導くためです。最初からプライベート講習を受講しても良いですが、おすすめは大人数での講習会で初歩的な技術を習得した上で参加するとより理解が深まるでしょう。
基本的にマンツーマン、多くても3名程度で開催されるので、個人個人が目的とするルートを登る為に必要な技術を手に入れることが出来ます。講師は受講生の体力や筋力、特性なども考慮しながら用具の選定から必要な技術の指導、今後のトレーニング方法までの指導を行うので、情報と技術の価値は大人数での講習会の比ではありません。ただ、基本的に講習料は高くなりますのでそれなりのモチベーションを持って参加する必要があるかもしれません。
少人数の講習会に参加する利点は3つです。
1、目的に合った技術と情報を入手できる。
2、受講生のペースで学ぶことが出来る。
3、質問の機会が多い。
体験会の参加
こうした講習会への参加を検討してはいるが、なかなか敷居が高いと感じている方は、まず体験会などハードルの低いステージから始めるのもおすすめです。
クライミングジムなどで行なっている体験会が主となりますが、最近は市や行政などとタイアップしているクライミング体験会や、アウトドアブランドが行なっている場合もあるので、探してみることをおすすめします。
まとめ
クライミングのレベルアップや、リスクマネジメントを高める為に有意義な講習会ですが、クライミング業界にも様々な資格があり、SNSでは大量の情報が溢れているので、初心者にはなかなか難しい選択になることも事実です。
まずはハードルの低い体験会に参加してみて、習熟度やモチベーションに合わせて、大人数での講習会か、プライベート講習かを選ぶと良いでしょう。