今さら聞けない登る前の安全確認2つの法則
登る前の安全確認とは?
ロープを使った全てのクライミングで登る直前に必ずやることはお互いの安全確認です。確認の方法はいくつかありますが目的は一つ、事故を起こさないためです。そして事故に結びつくリスクは大まかに2つに分かれます。主観的危険と客観的危険です。主観的とは判断ミスや人的ミスで、客観的とは落石や天候など自分では制御できないものを指します。登る前に行う安全確認は主観的危険を回避する方法となります。
BARKの法則
安全確認の方法はバークの法則を使います。バークとはBARKのことで、それぞれのアルファベットは単語の頭文字です。
Bは「Buckle」ハーネスのバックルが正しい位置で正しく機能しているかを確認する。ハーネスの装着を確認します。
Aは「Anchor」支点の状態を確認します。ゲレンデでのクライミングの際にはクライマーは1ピッチでロワーダウンするので必要ありません。ただしビレイポイントが崖の上にあるなど、クライマー墜落の影響でビレイヤーにも滑落の危険がある場合はアンカーを作ります。
Rは「Rappel」懸垂下降のセット状態をチェックします。懸垂下降は自分自身をビレイしている状態ですので懸垂下降のセットが安全であればビレイ時の安全性も同様と考えてRappel(懸垂下降)の頭文字Rとなっています。懸垂下降に必要なロッキングカラビナ、ディバイス、ロープのセットをそれぞれ確認します。
Kは「Knot」結びを指します。クライミングであればフィギュアエイトノットやブーリン、それらの結びが正しく結ばれているかを確認します。
このバークの法則の優れた点は、どのようなクライミングにおいても安全確認として機能していることです。スポートクライミング、トラッド、アルパインまで全てのロープワークの最初に確認する時に役立ちます。
ハーネスの正しい装着は登る時も下降する時も大事ですし、登る時にはビレイステーションのアンカーが大切で、下降するときは残置支点の確認が重要です。ビレイも下降もロープとディバイスのセットを確認します。そしてどんな時もロープは正しく結びます。懸垂下降はダブルロープで行うことが多いので、ロープ同士の連結が正しくなされているか、すっぽ抜け防止は出来ているかを確認します。
目視確認と動作確認の法則
安全確認は人数によって方法を変えるというものです。1人でやらなければいけない安全確認は、目視ではなく動作を確認します。
危険とは主観的危険と客観的危険に二分されると先に書きました。1人で目視確認をしても主観的危険を排除できません。なぜなら人間は勘違いや判断ミスをするからです。そういった意味から、2名以上でお互いにチェックし合う行為は主観的危険を排除できるので目視でもOKとなります。つまり逆に考えると、1人での目視確認は主観的危険要素は排除し切れていないのです。
そこで動作確認の出番です。方法は簡単です。
懸垂下降であればセルフビレイのスリングを外す前に一瞬だけディバイスに体重をかけて数センチだけ懸垂下降をしてみます。その時に安全に動作するのか確認できます。
支点構築も同様です。トップはビレイステーションに着いたら1人で支点をセットします。支点が完成したら、自分自身の体重をかけてみる、フォローが登ってくる方向にメインロープを引いてみる、などビレイ中に起こりうる危険を動作によって確認します。
まとめ
たくさんの技術を得ることも大切ですが、それら技術の合理的な組み合わせが最終的には生死を分けます。技術を学んだら、環境に最適な解を常に見つけられるようにトレーニングしておくのが効果的です。
たくさんの技術を知っていても自然の中で最適な選択を出来なければ意味がありません。