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永久保存版!クリップの方法と注意点(無料記事)
クリップが必要なシーン
最初に体験したクライミングが「トップロープクライミング」という方は多いと思います。特にクライミングジムでの体験だとトップロープクライミングは最もポピュラーな方法です。そんな最初の一歩から次のステップに進むとき必要になるのが、ロープを自分でカラビナにかけながら登る「リードクライミング」という方法です。
トップロープでは自分より上にロープがかかっていたのに対し、リードクライミングは自分より下にロープがあります。簡単に言えば「トップロープでは滑落はしないがリードクライミングでは滑落する」ということを意味します。これはとても重要な違いです。リードクライミングでは滑落をコントロールすることが必要になります。
ここではクライミングジムのように予めクイックドロー(カラビナとカラビナがスリングで連結されたクライミング用具)がボルトにかかっている状態でのリードクライミングを前提としてクリップの方法を紹介します。
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滑落における危険
例えば、最後にクリップをした場所から3m登って滑落した場合の滑落距離は6mです。
しかし実際には滑落距離は更に伸びます。ロープは伸縮することによりクライミングにおける墜落衝撃を緩和しているので、そのロープの伸びがここに加わります。
更に、ビレイヤーはクライマーの動きを妨げないように少し余分にロープを出しています。それから実際に滑落した際にはビレイヤーの体は衝撃によって動くので、ここでも滑落距離は加算されます。
つまり、リードクライミングで滑落した場合は単純計算通りの滑落距離にはならないことをしっかり覚えておく必要があります。
また、もしクリップをし損った場合の滑落距離は、クライマーが自分自身でロープを出すので、カラビナの場所がクライマーから離れれば離れるほど滑落距離は長くなります。これを手繰り落ちと言います。環境にもよりますが10m以上の滑落をすることも充分あり得ますので絶対に失敗してはいけません。クリップを失敗しそうなルートは、登るのを避けることが最も賢明な判断です。
それからクリップをする際に、一度口で咥えてから更にロープを出すクライマーをよく見かけます。その状態で運悪く滑落して歯にロープが絡んでしまい、前歯が全て無くなってしまったクライマーも過去にいます。そういったリスクを孕んだ手法だということも忘れないでください。
それから滑落時にロープが足に絡んでしまい、上半身が下になった状態で頭や背中を岩肌に強く打ちつけて大怪我をしてしまうクライマーも後を絶ちません。こちらの方が起こり得る事故としては多いので、登っている最中は常にロープの位置に注意を払う必要があります。
クリップの場所とタイミング
基本的なクリップの場所はスタンスが安定した箇所です。ハンドホールドもしっかり持てるものであればより良いです。
クリップのタイミングは目線から腰の位置が最適で、特に腰の位置でのクリップは理論的には最も安全な場所です。腰クリップは仮にクリップに失敗した場合でも手繰り落ちの墜落距離を最小限に抑えることができるからです。しかしここで思い出して欲しいのは、手繰り落ち前提でルートに挑戦することはとても危険であることです。
そして、最適なクリップ場所を素早く見つけ出し、ミスのないクリップをする為には、こうした文面だけでの理解ではなく充分な練習が必要です。
この記事を読んだだけで実際の山に行ったり、いきなりビレイを他人に頼むことはしないでください。また安全にクリップをする為にはクライミング能力も重要になります。クリップ技術、クライミング能力、どちらも同じく重要なスキルなので絶対に練習を怠らないでください。
バッククリップ
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クライマーから伸びるロープが壁とカラビナの間に入ることをバッククリップ(逆クリップ)と言います。
この状態になると、クライマーが墜落した場合、カラビナからロープが外れてしまうことがあります。
ロープがカラビナから外れてしまう確率のデータはありません。今のところ「外れてしまう可能性がある」ということですが、あえてリスクを高く取る理由も無いので、正しいクリップをしましょう。
正しい方法はクライマー側のロープが壁から1番外側に出ている状態です。
もしバッククリップをしてしまった場合、余裕があれば正しいクリップに直します。余裕がない場合は一度ロープに体重を預けて(テンション)体力を回復させてから正しいクリップに直すか、安全が見込めない場合はそのままロワーダウンするのも選択肢の一つに入れておきます。
Zクリップ
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通常クリップは登るに従って上へ上へとかけていきますが、その位置関係が逆になってしまうことがあります。これをZクリップと呼びます。
これは各クリップ場所が近いことが原因ですが、ロープを出す際に自分より遠くのロープを持ってしまうことも大きな原因です。図のようにZの状態になってしまうとクライマーはそれ以上登っていくことはできません。ロープの摩擦が強すぎるためです。
解決方法はまず下のカラビナにかかったロープを外してからメインロープにかけ直します。テンションをして行っても良いし、余裕がある場合は素早く正しい状態に戻しましょう。
予防方法は1つです。ロープを出す時、ハーネスとロープが連結された場所(タイインポイント)からロープを手繰ること。これでZクリップは防げます。
フォアハンドクリップ
握手をする手の形をした際、カラビナのゲートが手の平側に来るクリップをフォアハンドクリップと言います。
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1、タイインポイントから手のひらでロープを手繰ります。
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2、カラビナの場所までロープを手繰り寄せたら親指でカラビナの背を持ち、中指でゲートの下の部分を持ちます。
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3、人差し指の付け根あたりでロープをゲートの上に乗せてカラビナにロープをかけます。
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慣れないうちは人差し指がカラビナに挟まれてしまうことがあります。この場合はカラビナを少し持ち上げるようにすると、ロープに重力がかかって自然とカラビナのゲートを開いてくれます。
バックハンドクリップ
握手をする手の形をした際、カラビナのゲートが手の甲側に来るクリップをバックハンドクリップと言います。
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1、タイインポイントから手のひらでロープを手繰ります。
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2、ロープを人差し指と中指で持って手の甲を上に向けます。
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3、中指でカラビナの底部分を押さえて親指でロープをゲートに押し込みます。
この時も、少しだけカラビナを持ち上げるようにすると、クリップしやすくなります。
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まとめ
クリップは素早く的確に行うことが最も安全な方法です。
タイインポイントに手をかけるまでが1秒、そこからロープを手繰ってカラビナの位置まで持ってくるまでを1秒、カラビナにロープを通すまでを1秒、として、クリップ動作の全てを3秒で行えるように目指してください。状況によってはそれが無理な時もあります。しかし、常日頃から「3秒1クリップ」と頭の中で繰り返しながらクリップをしていると、実際に素早いクリップが身に付きます。
練習には意識が大切です。練習方法は以下の記事にまとめておきましたので、興味がある方は読んでみてください。記事は無料です。
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