返さない夜
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
「元気?」
それは当たり前のようにきたメッセージでした。
その前のメッセージを見ると「もうあなたを追うのは諦めようかな」でした。彼と会わなくなって1年近く経っていました。
その、後ろ髪を惹かれるメッセージはいつも人を少しだけ悲しくさせるのです。
「もう会うのはやめよう。君は僕とじゃ合わないんだよ」
それを言われた時、私は泣きじゃくりました。そんな温度感など持っていなかったくせに。それほど、彼を欲しいと思っていなかったくせに。なぜかその時は、ラブロマンスのヒロインのように、彼に縋ったのです。
「あなたのいうことを何でも聞くわ」
そんな言葉が口から流れる私を私は知りませんでした。だって、それは嘘なのです。私は、彼との関係がそのままでも、彼の言う事なんて聞きません。だってそれが私なのだから。と思っています。誰かの言いなりにはなれないのです。
私たちは夜にひっそり別れ、彼はメッセージだけをポツリポツリと送ってくるのです。いつも会っている誰かなら、通知にでたメッセージを確認して、そのままブロックしてしまうのに、彼のメッセージはなぜか開けてしまうのです。
「既読」とついたメッセージ欄を何度も見ますが、何を返していいのか分からず、ずっとその「既読」だけが浮いています。すぐにブロックしてもいいのです。でも、きっとどこかで彼の台詞めいたメッセージを待っているのかもしれません。
夜の闇の中で、「Hello」と打っては消し続けます。もうそこにそのメッセージはないのに。消し続けます。戻る道を早く見失わなければと。私は心の中を走り抜けます。今夜も走り抜けて、疲れ果てて眠りにつくのです。おやすみなさい。
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