青柳晃洋とマイナー契約を結んだフィラデルフィア・フィリーズってどんなチーム?
日本時間1月18日
NPB阪神タイガースからポスティングシステムを利用しての海外挑戦を表明していた青柳晃洋投手がフィラデルフィア・フィリーズとスプリングトレーニングへの招待付きのマイナー契約を結んだとの報道がされました。
同じくポスティングシステムでの海外挑戦を表明していた佐々木朗希投手のドジャース契約報道の直後だったことや、獲得の予兆等も全くと言っていいほど無かったため、これには大変驚かされました。
遅ればせながら自己紹介させていただきます。
39と申します。微力ながらフィラデルフィア・フィリーズというチームを応援しています。
さて、このフィリーズというチーム
過去に在籍した日本人選手はわずかに2人。
(比較としてはドジャースが12人)
この2人の選手というのは、元オリックスなどで活躍した外野手の田口壮選手と、元ロッテなどで活躍した内野手の井口資仁選手なのですが、この2人はいずれも他のMLBチームを経由した上でフィリーズに来ています。
これに対し今回マイナー契約を結んだ青柳晃洋投手はどこのチームを経由することもなく直接フィラデルフィアに来るということになります。
自分がこれまでフィリーズを応援してきた中で、初めての日本人選手であることや、直接フィラデルフィアを選んでくれたということが非常に嬉しく思うとともに、この事実に大変興奮しております。
この興奮が冷めやらぬうちに、そしてこのチームの魅力をより多くの人に知ってもらいたいという思いからこのnoteを執筆するに至ったという次第であります。
とはいっても、球団の細かい歴史や全ての選手を解説するだけの時間と知識が私にはないので、今回はフィリーズの主な特徴と主要なメンバーをピックアップした上でまとめる、という形で紹介させていただければなと思います。
余談にはなりますが田口と井口の2人が在籍していた2008年にフィリーズはワールドシリーズで優勝しており、フィラデルフィアに来た日本人はもれなく全員優勝メンバーとなっております。
▼チームの特色
フィラデルフィア・フィリーズはナ・リーグ東地区に所属しており、ペンシルベニア州フィラデルフィアに本拠地を構えています。
現在の本拠地が開場して以来 観客動員数はMLBでも上位であり、人気球団の1つと言えるでしょう。
チーム名にもなっている「Philly」というのは、フランチャイズでもあるフィラデルフィア市民を意味する言葉で、この街に深い関わりがある人などを包括するような広義的な形でも使われることがあります。
球団の歴史は長く、19世紀から存在しており、今日に至るまで、ワールドシリーズ優勝は2回、リーグ優勝は8回、地区優勝は12回となっています。
そしてこのチームの最も大きな特徴はやはり
熱狂的なファンベース でしょう。
本拠地 Citizens Bank Park(CBP)は常にチケットの入手が困難で、真っ赤に染まった観客席は圧巻の一言。
ホームゲームでの勝率はMLBでも随一で、あえて表現するのであれば そこはまさに『魔境』
フィラデルフィアは米独立発祥の地であり、CBPには市街地中心部にある「Liberty bell」をモチーフにした鐘のオブジェクトがあります。
(現在のチームロゴになっているのもLiberty Bell)
フィリーズの選手がホームランを打つと、そのオブジェクトが光り輝くとともに、球場内では鐘の音が鳴り響き、その音と歓声とのハーモニーは独特の高揚感をもたらしてくれます。
また、Red October ことポストシーズンではその熱が一段と増し、強烈な大歓声の中でスター選手たちが躍動する姿への感動は、もはや言葉では表しきれません。
前述した通り熱狂的なファンの多いフィラデルフィアですが、その溢れる熱意は敵味方問わず様々な方向へと向けられます。
ダルビッシュ有投手が過去のライブ配信にて
「フィラデルフィアは小さな子供がとんでもないことを言ってくる」等の発言をするなど、大人はおろか子供でさえも敵チームには容赦なくブーイングやFワードを叩き込みます。
しかしその矛先が常に敵だけとは限りません。
現地ファンは時として不調の主力にもブーイングすることもあります。
後述するトレイ・ターナー選手やアレク・ボーム選手がその例でしょうか。
しかしこれはその選手の実力がそんなものでは無い、もっとやれるはずだ、と その選手のことを信じているからであり、なによりファンはチームの勝利を渇望しています。
彼らの根幹にはフィラデルフィアというフランチャイズへの、そしてフィリーズというチームへの愛があり、チームの勝ち負けに対しては全力で感情を顕にします。
愛という言葉を言い訳にしているように聞こえるかも知れませんが、彼らが心からフィリーズを愛しているのは紛れもない事実なのです。
▽Philly Phanatic
ここでフィリーズのマスコットを紹介します。
彼(?)の名はフィリー・ファナティック
NPBを見る人は既視感があると思いますが、広島カープのマスコットであるスラィリーとは別物です。
なんならこっちが先。
(正確にはcounterpart →生き写しのような存在 ということになってるらしい?)
ファナティックの名前の由来は「狂信的なファン」を意味する"fanatic"の発音をフィラデルフィアの略である"phi"の綴りでもじった"Phanatic"から来ています。
まさにこのチームにピッタリな名前と言えるでしょう。
そんなファナティックですが実は意外と昔からいます。
時は遡って1900年代後半
サンディエゴ・チキン(パドレスのマスコット)のような存在の必要性を感じた当時の球団幹部のデニス・リーマンは、ニューヨークのハリソン・エリクソン社にキャラクターデザインを依頼。権利の買取云々もありましたがここは省略。
(ちなみにこの時同社はセサミストリートなどの実績のあるジム・ヘンソンとタイアップしており、ファナティックのデザインを手がけたのも彼と言われている。)
そして1978年のカブス戦の中継にて突如 紹介もなく現れます。これがファナティックの世界初登場です。
ここからファナティックはフィリーズのマスコットとして人気を博していくこととなるのです。
さて、このフィリー・ファナティックというマスコットなのですが、まぁ見ての通りバケモンです。
明らかに正常ではない目、常軌を逸した体型、何もかもが尋常ではありません。
フィリー・ファナティックのプロフィール
・身長 : 6フィート6インチ→約2m
・体重 : 300ポンド→約136kg
・腰周り : 90インチ→約220cm
・出身 : ガラパゴス諸島
・趣味 : 食べる、寝る、本を読む、フィリーズの応援
・好きな食べ物 : cheesesteak、soft pretzel、hoagies、scrapple、Tastykakes
好きな食べ物にあるチーズステーキなどはフィラデルフィアのソウルフードなのですが、これらはかなり高カロリーです。
食べることと寝ることが大好きなファナティックがあの体型になるのも無理はありません。
前述した通りイタズラ好きな性格のファナティック。
時としてそのイタズラは度を越したモノになり、ファナティックに勢いよく抱きつかれた男性が背中を痛めてしまい、球団に賠償命令が下ったこともあります。
そりゃ2m近くあって体重も130kgを超えるバケモンが飛びついてきたら背中も痛めますよね。
そんなファナティックはフィリーズの選手だけでなく、相手チームの選手や審判団ともよくコミュニケーションを取っており、その絡みや思わず笑ってしまうようなパフォーマンスが度々SNSにアップされています。
時にそのイタズラ好きな性格が大事になってしまうこともあれど、今日においてもフィリーズファンはもちろん、多くの人から愛される存在なのは間違いないでしょう。
▼フロントオフィス
さて、ここからは球団組織の紹介となります。
フロントオフィス→投手→野手 の順に紹介しますが、小見出し以外では基本カタカナ表記とさせていただきます。表記揺れ等には目を瞑ってください。
▽John Middleton(オーナー)
"I want my f**king trophy back"
(俺らのトロフィーを取り戻そうぜ)
昨年の地区優勝を決定づけた試合後のシャンパンファイトにて彼はこう言いました。
ジョン・ミドルトンは現在のフィリーズオーナーグループを形成する人物のひとりで、球団運営の最高責任者でもあります。
「リングの為なら呆れるほどの大金を投じることも辞さない」という趣旨の強気な発言をするほどに金遣いの荒い人物で、実際 彼が筆頭オーナーになって以降に、ハーパーを当時の史上最高額の契約で獲得したりと、その言葉通りの出資をしてくれています。
また彼と彼の妻のリー氏は慈善活動にも熱心な人物で、フィラデルフィア地域において教育支援や労働開発プロジェクト、医学や自然科学に至るまで、彼が出資した分野は非常に多岐に渡ります。
彼の出資に応えるためにもワールドチャンピオンになりたいですね。
▽David Donbrowski(編成担当)
デイビッド・ドンブロウスキーは現在のフィリーズの編成の最高責任者で、かつてのモントリオール・エクスポーズやフロリダ・マーリンズ、デトロイト・タイガースなどではGMを、ボストン・レッドソックスでは編成最高責任者を務めたこともあるベテランの編成担当者です。
MLBのオーナーでただ一人、4球団をワールドシリーズに導いた実績のある人物で、大物選手との契約をまとめることに長けているとされていますが、時には予想外のところから巧みなトレードをまとめてくることもあります。
彼が2020年に就任して以降、チームは2022年から3年連続でポストシーズンに出場しており、またMLB最底辺であったマイナーシステムも徐々に潤沢になってきています。
これらの実績から球団は彼との契約を延長するとし、2027年まで彼が編成の最高責任者となります。
▼監督・コーチ陣
▽Rob Thomson #59
続いて紹介するのはTOPPER(トッパー)ことロブ・トムソン監督です。
彼は過去にヤンキースでも監督などを務め、2018年にフィリーズのベンチコーチとして加入。
2022年に前任のジラルディ監督の解任に伴いフィリーズの代行監督に就任。それ以降はフィリーズの監督を務めています。
(球団は昨年に2026年までの契約延長を発表)
彼の国籍はカナダで、三塁手・捕手としてもプレーした元プレイヤーではありますが、現役時代には目立った成績を残すことは出来ませんでした。
しかし、指導者としての実績とその手腕が評価され、2019年にカナダ野球殿堂に選出されています。
(指導者としての殿堂入りは極めて異例)
実際にその監督としての手腕は本物で、トムソンは昨年の6月にフィリーズの監督として史上最速での200勝を達成しています。
これは1910年代のパット・モラル氏以来の記録であり、近代野球としても非常に早い記録達成となっております。
采配の傾向としましては
・基本的には打順・メンバーを固定
・流動的なポジションの選手は左右の相性を考慮する
・完全休養制
これらが主な特徴となります。
「完全休養制」というのは、主力を休ませる際に、試合後半に代打で起用するようなことをせず、まるまる一試合はどんな試合展開であってもベンチで休ませるといったものになります。
主に捕手の起用面でこれが見られますが、個人的には良い方針だと思っています。
また基本的に温厚な性格のトムソンですが、愛妻家としても知られており、フィリーズの公式YouTubeチャンネルにて、『健全な家庭を築くことについて』というテーマで妻のミッシェル氏とともにこれについて語った動画が公開されています。
(ちなみにトムソン夫妻には娘が2人います。)
▽Kevin Long #53
続いてはケビン・ロング打撃コーチです。
彼もトムソン同様元プレイヤーですが、故障もあり一度もメジャーに上がることなく引退しています。
しかし指導者としての手腕は折り紙付き。
ヤンキースの打撃コーチとしてはあのA-Rodやホルヘ・ポサダなどを不調から復活させるなど、素晴らしい結果を残します。
その後ナショナルズでも打撃コーチを務め、2019年の世界一に貢献。2021年の10月にフィリーズと契約を結び、2022年に打撃コーチに就任。球団は彼との契約延長を発表します。
現在フィリーズにはブライス・ハーパーやトレイ・ターナーといった元ナショナルズの選手が多くいます。
彼らの多くはロングがナショナルズの打撃コーチ時代に指導していた選手であり、特にターナーにおいては2022年オフの大型契約の締結に、ロングの存在も大きく寄与したと言われています。
コーチとしてだけでなく、いわばバーターとしてもチームに大きな存在感をもたらしているというわけです。
▼投手陣
さて、ここからは投手陣の紹介に移ります。
現在フィリーズはMLBでもトップクラスの強力な投手陣を抱えており、特に先発ローテーションは、昨年のサイ・ヤング賞投票に3人がランクインするほどの圧倒的な強さを誇ります。
そんな投手陣から選りすぐりの4人を選出したつもりですので、是非名前だけでも覚えてください。
また以後 各選手の登録写真と共にbaseball savantより引用したMLB Percentile Rankings(2024版)を貼っていきます。
これは選手の主な能力を平均が50、最大値が100で数値化し、その能力において上位何%にランクインしたかを示すものになります。
ここに例として昨年の大谷翔平選手を挙げます。
ざっくり説明すると
数字が大きく線が赤い方がMLB上位、逆に数字が小さく線が青い方がMLB下位となります。
またこれは投手も同様です。
指標の説明は省きますが、今回の紹介では
「赤い方が良いんだな〜、青いと良くないんだな〜」
といった具合の認識でも問題ありません。
▽Zack Wheeler #45
まず紹介するのはザック・ウィーラーです。
ウィーラーは2009年ドラフトで全体6位指名を受けた選手で、メッツにてMLBデビューを果たします。
当時は球界トップクラスの投手という程ではなく、フィリーズが彼を獲得した際にはこれを懐疑的に思う声も多くありました。
しかしフィリーズに来た彼は一気にMLBでも有数の投手になります。
平均95マイルに迫るフォーシームとスプリッターのコンビネーション。近年はそこにスイーパーを織り交ぜるようになり、30代中盤に差し掛かりながらも、彼は衰えるどころかその進化は留まることを知らず。
そしてなにより怪我をせずフルシーズンを投げ切る頑丈さ。
とにかく投げる。とにかく抑える。
先発投手に求められる全てを高いクオリティで発揮しつつ、それを通年で続ける安定感。
昨年は自身2度目のオールスターに選出(出場は辞退)
2021年と2024年はサイ・ヤング投票でも2位。
(2021年は未だに彼が1位だと思ってます)
クオリティスタート率はMLBでもダントツ。
短縮シーズンの2020年を除けば毎年平均して200奪三振超え。200イニング超えも2度。
彼がフィラデルフィアに来てから積み重ねたrWARは25.4と、まさに圧巻の成績。
レギュラーシーズンでも他を寄せつけない素晴らしいパフォーマンスを見せるウィーラーですが、彼の強さはポストシーズンでも変わりません。
ウィーラーはこれまでポストシーズンでは12試合に登板しており、防御率は2.18、奪三振は77にものぼります。
レギュラーシーズンでは良い結果を残すのにポストシーズンでは不本意な結果に終わってしまう、という選手も多い中、彼はパフォーマンスを落とすどころか、1段階ギアを上げ、レギュラーシーズンをも上回る圧倒的な活躍を見せるのです。
贔屓目ぬきにMLBで現役最強の投手だと思います。
また彼は昔から髪がありません。
端的に言ってハゲです。
これもあって現地ファンはもちろん、日本のフィリーズファンの一部でも『ハゲ』の相性で親しまれています。
相手打線を封じ込める制圧力。
帽子を脱げば露になるその光り輝く頭。
少し垂れ目の親しみやすい顔。
ベンチでチームメイトと談笑する姿。
降板後に見せる物憂げな表情。
普段はあまりに感情を見せないものの、時には審判にも声を荒らげるギャップ。
彼が見せる様々な姿に私は惹かれてやみません。
プライベートでは新たな命を授かったことを公表し、あと彼が手にしていないのはサイ・ヤング賞とリングだけ。
昨年に投手史上最高額での契約延長を結んだ 我らがエースに、今年こそはサイ・ヤング賞を取ってほしいと心から願います。
▽Aaron Nola #27
続いてはアーロン・ノラです。
フィリーズの強力な先発陣を形成するもう1人のエースで、ドラフトから今日までフィリーズ一筋のフランチャイズプレイヤー。
少々変則的なモーションから、横に大きく動くフォーシームにシンカーを織り交ぜ、非常に大きく変化するナックルカーブをフィニッシャーに三振の山を築き上げる右腕。
また彼もウィーラー同様とにかくイニングを投げます。
とにかくイニングを投げ、三振も多く奪うノラ
メジャーデビューイヤーである2015年からの10年間で食ったイニング約1620に対して奪った奪三振は1779。
飛翔癖があるのはたまにキズですが、それでも怪我をせずフルシーズンを投げてくれる彼には頭が上がりません。
通算での奪三振率は歴代のレジェンド達とともに名を連ねるほどのとんでもない数値を叩き出しています。
2023年は本人比で不本意なシーズンとなりそのままFAとなるも、同年オフに7年間の超大型契約での契約延長を締結し残留。
その期待に応えるかのように、昨年は見事にバウンスバック。200イニングまであと0.2と迫り、サイ・ヤング投票でも票を獲得。
過去にオールスター選出の経験もあり、サイ・ヤング投票には4度のランクインを果たしている右腕は昨年に通算での100勝も達成。
ウィーラーとの二枚看板を再度印象づけました。
少し話は逸れますが、イニングイートについての話をしたいと思います。
昨年のドジャースに代表されるように、近年 先発投手がイニングを消費することの価値が下がってきているように思われます。
投手の怪我の増加に伴い、トミージョン手術やインターナルブレース手術等が野球界で一般化しつつあるこの状況。
そんな中でも約200イニングを投げた上でこれだけの結果を残してくれたウィーラーとノラの存在は本当に誇りに思います。
また、ここに書ききれなかった投手にクリストファー・サンチェスという投手がいます。
彼は昨年MLB16位の181.2イニングを投げました。
彼も前述した2人と同様にフィリーズ先発陣の強力な柱で、第3のエースともいえる存在だと個人的には思います。
また彼は昨年大ブレークを果たし、フィリーズからサイ・ヤング投票にランクインした3人目の投手です。
彼らのような存在は、今やMLBではマジョリティではなくなっており、怪我をしてない時に高いパフォーマンスを発揮できればいい、といった意見もちらほら見受けられます。
しかし私は正直この状況をあまりに快く思っていません。「最悪怪我してもいい」というような考え方は不健全だと考えます。
もちろん怪我をしないことが1番ですが、プロの世界はそんなに甘くはありません。
だからこそ彼らのようなイニングを消費できる投手を高く評価し、怪我なくフルシーズン投げ切ることの価値を高めることが必要なのではないかと思いますね。
繰り返しにはなりますが、サンチェスらのようにイニングを多く消費した上で素晴らしい成績を残してくれたフィリーズ先発陣には改めて賛辞を送りたいと思います。
▽Matt Strahm #25
話を戻しまして、続いてはリリーフ投手のマット・ストラーム(マシュー・ストラーム)です。
ストラームはその髪の如く長い手足と、それらを活かした独特のフォームで打者を薙ぎ倒す左腕リリーバーです。
2023年にチームに加わり、直後に契約延長。
オプションも含めると最大で2026年までの契約となります。
昨年は前半戦が特に好調で、今オフFAとなりチームを去った右腕リリーバーのジェフ・ホフマンと共に防御率0点台コンビを形成。
(ホフマンはブルージェイズと契約)
自身初のオールスターにも選出され、飛躍の1年となりました。
欠点を挙げるとするならば、かなりのフライボールピッチャーであるという点で、基本的には安定した投球で打者を抑えるのに、突然ホームランを打たれる、なんてことがしばしばあります。
また大のカードコレクターでもあるストラーム。
よくToppsのパックを開封する動画をInstagramなどに投稿しています。
そして彼は「ホームランを打たれた打者のカードを収集する」という、ある意味 彼にしか出来ないことをやっています。
これは「自分からホームランを打った選手なら、それだけいい選手なのだ」という理論に基づいてやっているそうで、一発病を抱えた彼らしいといえばらしいのですが、ファンからすればコレクションが増えないことを願うばかりです。
▽Taijuan Walker #99
さぁ、遂に彼の番が来てしまいました。
最凶の投手 タイワン・ウォーカーです。
元球界トッププロスペクト。
オールスター出場1回。
WBC2023メキシコ代表。
31歳にしてメジャーでのキャリアは10年以上。
通算での奪三振は1000超。
そんな輝かしい実績を持つ右の先発投手、タイワン・ウォーカー。
これだけ聞くと前述したウィーラーらに並ぶ、いやもしかするとそれ以上の投手かと思うかもしれません。
しかしsavantからも分かる通りそれほど優秀ではありません。いやむしろ昨年はMLBでも最低の投手だったと言って差し支えないでしょう。
彼がフィリーズに加わったのは2023年
当時先発投手を求めていたフィリーズは彼に4年間の契約を提示。かなりオーバーペイ気味ではありましたが、無事に彼を獲得します。
フィリーズに来る前はメッツに在籍していたウォーカー
2021年はオールスターにも選ばれる活躍。2022年もrWAR2.7と素晴らしい活躍を見せ、無事に就活成功となります。
2023年はWBCにメキシコ代表として出場。
国を背負った舞台でしっかりと結果を残します。
そしてそのままレギュラーシーズンを戦い切り、ウォーカーもrWAR2.5の活躍を見せゴールドグラブ賞にウィーラーと共にノミネート。フィリーズも2年連続でのポストシーズンへの出場を果たします。
(ちなみにGGはウィーラーが受賞)
しかし当のポストシーズンでウォーカーは登板の機会を与えられず、チームもDバックスに敗れ、悔しくもポストシーズン敗退となります。
そしてウォーカーはこれに対する不満をXにて投稿。
そして悲劇はここから始まります。
2024年シーズン、スプリングトレーニングでは怪我で満足に調整ができず開幕を故障者リスト(以下IL)にて迎えたウォーカー。
4月末に復帰するも一向に調子が上向かず、再度怪我によりIL入り。8月の中頃に復帰するもパフォーマンスは相変わらずで、先発投手としてまともにゲームメイクをすることさえままならない状況。
またこれと同時期に大谷選手の飼い犬であるデコピン(デコイ)が始球式を行った際、MLB公式より投稿された動画のコメントには「この犬はタイワン・ウォーカーよりも良い球を投げる」などといったコメントが付く始末。
ひどすぎる。
これらの状況を重く受け止めたチームは彼を配置転換。
プルペンに回しロングリリーフとしての起用に切り替えます。
しかしこれらの対応も虚しく彼の低調ぶりは苛烈を極め、そのままほとんど活躍することなくレギュラーシーズンが終了。
成績にして、防御率7.10 失点66 奪三振58
rWARは脅威の-1.6 と目も当てられません。
改めて彼のsavantを見てみましょう。
もはや芸術的とさえ思います。
最初これを見た時バグかと思いましたよ。
もはやギャグかと思えてくる程の【1】の羅列。
Breaking Run Valueを除き全ての指標で平均以下。
いや平均以下どころかMLB最低レベル。
こんな成績では昨年不満を漏らしたポストシーズンでの登板はもちろん、ロスター入りさえ果たせませんでした。
彼のパフォーマンスの低下にはいくつかの原因が予想されます。
まず最大の要因として球速の低下が挙げられます。
これは2023年時点でも懸念されており、昨年に更に悪化を見せたことでこれが表面化。
速球系の球種で空振りが奪えなくなり、カッターに至っては被打率.435とズタボロ。
速球が使えないなら変化球を多投するのが自然ですが、彼の昨年の不振のもうひとつの原因はその変化球の不調です。
4月末に復帰したウォーカーが不振に喘いでいた際、インタビューで指の違和感を漏らしていました。
これにより変化球を中心にコマンドが悪化。
特にスプリッターが上手く投げられない状態になっていたそうで、過去のウォーカーの投球割合などを見てもスプリッターが使えないのは大きな痛手になります。
シーズンで総括してみるとBreaking Run Valueが2023年よりも良化しているため、途中から指の不調は改善したものと思われますが、それでもスプリッターの被打率は悲惨です。
逆に今季から大幅に等級割合を増やしたスイーパーでは空振り率などでも優秀な数字を残しており、これが復活のカギになるかもしれません。
単純な衰え(?)による球速低下と調整不足に次ぐ調整不足。そしてそれに伴うコマンド不良。
運悪くこれらが重なったことにより驚異的なマイナスを叩きだしたというわけです。
また、それなら彼をDFAすればいいと考えるかもしれません。しかし、序盤に少し触れましたが彼は4年間の大型契約を結んでいます。
年俸総額は72M。AAVにして18M。
4年間の契約があと2年残っており、かつ年俸も高額となると、切るに切れません。
彼を投げさせればマイナスが生じ、かといってクビにしようにも年俸や契約の関係で非常にやりずらい。
まさにジレンマです。
これらが彼が『最凶の投手』と言われる所以です
そして今オフのフィリーズは彼を微塵も戦力として見ていない動きを取っています。
マーリンズからトレードで先発投手のへスス・ルザルドを獲得。ブルワーズをFAとなっていたジョー・ロスをスイングマンとして獲得。
デプスとしても青柳晃洋をマイナー契約で獲得。
昨年ウォーカーが入った部分が完全に存在しません。
果たして来季以降ウォーカーは復活できるのか。
スプリングトレーニングの様子を見てから判断していくことになると思いますが、要注目です。
▼野手陣
さて、ここからは野手になります。
おそらくこちらは知っている名前も多いかと思いますので、楽しんでいただければ幸いです。
▽Bryce Harper #3
まずは言わずと知れた"スーパースター"
ブライス・ハーパーです。
2012年にナショナルズでMLBデビュー。
同年オールスターに選出され新人王も獲得。
それ以降MLBレベルで活躍し続け、2015年にはナ・リーグMVPを獲得。
フィラデルフィアに来て3年目の2021年は自身2度目のナ・リーグMVPに。
ハンク・アーロン賞は2度。
オールスター選出は通算で8回。
シルバースラッガー賞はこれまでに4度受賞。
将来的な殿堂入りは確実の まさに"スーパースター"
2019年に当時の史上最高額の契約でフィリーズに加入。その規模なんと13年3億3000万ドル。
またハーパーは「この街の熱狂的なファンが好きだ。願わくばここでキャリアをスタートさせたかった」と語り、ナショナルズファンのヘイトを買いつつもフィラデルフィアのファンをすぐに魅了します。
MLBの顔の1人とも言える彼のカリスマ性は圧倒的で、一昔前は気性の荒い選手ではと聞くと真っ先に名が上がる程でしたが、今やターナーやシュワーバーといったスター選手が多数いるフィリーズを見事にまとめあげるリーダーに成長。
怒らせると止まらない面は今も健在で、味方がデッドボールなどを受けた際には先陣を切って突っ込みます。良くも悪くも彼のこういった面がリーダーたらしめているのかもしれません。
またその性格はプレーの面にも表れることがあり、2023年のポストシーズンにてブレーブスのオーランド・アルシアがハーパーの走塁ミスを嘲笑い「Atta boy Harper !」(よくやったぞハーパー!)とロッカールームで叫んでいたことが発覚。
そしてその次の日の試合、怒りに燃えるハーパーは2本のホームランを放ちます。
ダイヤモンドを回るハーパーは「お前の言っていたことは覚えているぞ」と言わんばかりにショートのアルシアを睨みつけ、ホームベースを踏む際には首の前で親指を立て、横にスライドさせるスロート・スラッシュのジェスチャーも挟みます。
プレーで魅せるとかあまりにもかっこよすぎる。
そんなハーパー、ポストシーズンにめっぽう強く、これまでのポストシーズン通算では193打席で打率.280 OPS 1.016と、もはや手が付けられないレベル。
2022年NLCS第5戦の8回に元阪神で現パドレスのロベルト・スアレスから放った逆転ツーランホームラン
その名実況から取って"The swing of his life"と呼ばれるあの一打はもはや伝説です。
昨年は肘の怪我から本格的に復帰し、一塁にコンバート。そんな中でもいきなりゴールドグラブ賞にノミネートされるなど、守備でも素晴らしい活躍を見せたハーパー。
彼が手にしていないのはリングだけ。
彼以上に世界一に相応しい男はいません。
来季も素晴らしい活躍を見せてくれるであろうハーパーに今一度 愛を示します。
▽Kyle Schwarber #12
名前は知ってる人も多いでしょう。
みんな大好きカイル・シュワーバーです。
昨年のポストシーズンではメッツの千賀滉大投手から、2023年WBC決勝ではダルビッシュ有投手からホームランを打ったことは記憶に新しいでしょう。
また2023年に打率1割台ながら47本塁打を記録したことで彼を知っている人も多いと思います。
オールスター2度、シルバースラッガー賞も1度経験した好打者で、元々は捕手や外野手としてもプレーしていましたが、いまやその守備は絶望的。
フィリーズではほとんどが指名打者での出場となっています。
打率1割台のインパクトが非常に強いせいで、『1番に置いてるロマン砲』ということにされがちなシュワーバーですが、彼を1番に置くことは、実は非常に理にかなっています。
というのも彼は三振が非常に多いのですが、それ以上に四球が非常に多いのです。
細かい指標の話はここでは避けますが、彼はとにかく打てる球を見極める能力に優れており、際どい球を多く見逃すことが四球や三振の増加を助長させているというです。
そして、より多くの四球を選びつつも、打てる球はきちんと仕留められるだけのパワーを兼ね備えているため、高い出塁率と本塁打を量産することを両立しているのです。
まさに彼だからこそ為せる技ですね。
出塁能力に優れた選手を先頭に置くことは、その後に続く選手の長打力をより有効に活かせるようになります。
フィリーズは2番に瞬足でアベレージ優れながらも一定の長打力のあるのターナーを、3番に長打力と決定力に優れたハーパーを置いています。
鈍足の選手を先頭に置くことに抵抗を覚える人も多いかもしれません。ですが、極端な話、どれほど鈍足な選手が塁にいたとして、それ以降の選手がホームランを打てばいいわけで、少なくともターナーやハーパーにはそれが出来るだけの能力があります。
出塁に優れたシュワーバーを先頭に置くことは、2番以降の選手の特性をより有効に活かす上で、非常に理知的な戦略と言えるわけです。
↓ 全力疾走するシュワーバー
また彼はベンチワークにおいても優れた選手で、広い視野を持って、常に冷静にチーム全体を見渡しています。
DHとしてベンチにいる時間が長い彼は、チームを盛り上げるような動きを積極的にしており、ルーキー投手の初勝利ではチームの整列の先頭にその選手を持って行ったりする姿も見られたりしました。
これらの行動もあってチームメイトからの信頼も非常に厚く、プレー以外でも高い評価を得ている選手というわけです。
昨年は打率も.248と2023年より大幅に上昇。
WARでも自己最高の値を記録し、苦手としていた左投手に対しての成績も劇的に改善。
キャリアイヤーを過ごしたシュワーバーの来季の活躍にも期待です。
▽Alec Bohm #28
続いては、2019年のWBSCプレミア12でも来日したことがある三塁手 アレク・ボームです。
かつては大学史上最高クラスの野手とも言われたボーム。2018年ドラフトの1巡目(全体3位)でフィリーズに指名され、順調にマイナーを駆け上がります。
2019年のWBSCプレミア12で米代表に選出され、大会を通して8試合30打席7安打、1本塁打の活躍。
日本戦でも5打数2安打の活躍で勝利に貢献。
翌年の短縮シーズンでもあった2020年にメジャー昇格となります。
2020年シーズンでは8月にコールアップされ、そこから打率.338 4本塁打 28打点の活躍で新人王投票でも2位に選ばれる活躍。そこからは毎年OPSで700中盤をコンスタントに残す安定した活躍で三塁手に定着します。
さて、打撃では基本的に安定しているボームですが、デビューからの数年は守備難に悩まされました。
守備系の指標では常に大きなマイナスを稼ぎ、2021年はその守備が足を引っ張ったことでrWARでもマイナスを記録。
また、感情のコントロールを少し苦手としているボームは、自身の守備に対してもフラストレーションを溜め込んでしまいます。
2022年4月11日のメッツ戦にて3回までに3度の送球エラーを犯します。ファンも彼の守備に苛立っていたのか、CBPではブーイングが巻き起こります。
そのうちの2回目のエラーの後、ボームは通常のサードゴロを捌き、フィラデルフィアのファンはこれに大歓声。しかしボームはこれを皮肉と捉えたのか同僚のディディ・グレゴリウスに対し「I f**king hate this place.」(この場所が大嫌いだ)と発言します。
試合後にボームはこれについて釈明。
「あの時は自分の守備に苛立っていた。この場所が嫌いかって?そんな訳ないさ。本当に申し訳なかったと思っている。」(筆者意訳)
翌日の試合でボームはスタメンを外れるものの、試合途中から代打で出場。ファンはこれに対しスタンディングオベーションで大歓声。
改めてボームを応援する意を示しました。
そんなかんなで今やフィラデルフィアではお馴染みの顔となったボーム。
昨年は前半戦が特に絶好調で自身初となるオールスターにも選出。普段は全然ホームランバッターでもないのに謎にホームランダービーに出場。下馬評を覆し準決勝まで進むなど、見事な結果を残します。
(レギュラーシーズンで打てよ)
またこれまで苦手としていた守備は突如見違えるほど改善し、いつの間にか昨年はMLB上位にまで成長。
ルームメイトであり、エンゼルスにいたことでもおなじみのブランドン・マーシュや、彼らとともに「daycare boys」を形成するブライソン・ストットとの掛け合いもとても面白いです。
普段はニコニコしており、デッドボールを受けても笑顔を崩さないボーム。たまにFワードを叫んでいる様子が確認され、感情のコントロールはまだまだ未熟な面があると思われますが、昨年MLB 4位の二塁打数を記録したパワーヒッターの更なる飛躍に期待です。
余談にはなりますが、『"f**king hate this place"事件』には後日談があります。
2022年、フィリーズは11年振りにポストシーズンに出場を果たしますが、これを決定づけた10月8日のカージナルス戦の後に、ボームはMLBネットワークの記者にインタビューを受けます。
ここでボームは「I love this place」(この場所が大好きだよ)と語り、またワールドシリーズ出場を決定づけた後のシャンパンファイトでも同様の事を語っています。
ちなみにボームはこの2022年のワールドシリーズにてワールドシリーズ史上1000本目の本塁打を放った選手でもあります。
▽Nick Castellanos #8
次に紹介するのは外野手の ニック・カスティヤノス(ニコラス・カスティヤノス)です。
ArtistやCastyの愛称で呼ばれているカスティヤノス(以下カスティとします)は、2022年にチームに加入。
ただでさえ守備力の低いフィリーズ野手陣ですが、彼もその例に漏れず、守備範囲を示す指標のOAAでは昨季も-8を記録。
しかし球際に非常に強く、普通の選手なら平凡なフライになる打球も、彼の守備範囲の狭さと球際への強さのコンビネーションにかかれば、超ファインプレーに。
そんなカスティですが、非常に家族思いな性格であり、彼がプロとして野球をプレーすることの根底には家族の存在が第一に来るそうで、「家族が試合に来ると、よりいっそう集中できる」とも発言しています。
ちなみに息子のリアム君も野球が大好きだそうで、父のような野球選手を目指しているそうです。
(リアム君はたまにCBPで観測されます)
また彼は近年ポストシーズンで素晴らしい活躍を見せた選手でもあります。
昨年のポストシーズンでは打率4割越え。
OPSも1.059とまさに獅子奮迅の活躍。
2023年のポストシーズンでも素晴らしい活躍を見せ、MLB史上初の2試合連続マルチ本塁打を記録。
チームのNLCS進出に貢献しました。
2023年のカスティのポストシーズンでの活躍についてやその背景などはMNsports様のこちらの動画にて大変わかりやすくまとめられています。
かなり独特の人間性を持つカスティですが、レギュラーシーズンでもその変わった性格からか、それまであまり目立った活躍をしていなかったのに、チーム全体が不調の時に絶好調となるなど、良くも悪くも「空気を読まない」パフォーマンスを見せチームに貢献。
ポストシーズンでの「リング欲しいぜ」という意味の薬指を立てるパフォーマンスは、今なお多方面でいじられており、インタビューなどでも平気でFボムを落とす彼の傍若無人っぷりは留まることを知りません。(本人は至って真面目)
また彼がホームランを打つ日は大体何か重大なことが起こっていることでも有名です。
例えば昨年、ドナルド・トランプ氏が狙撃された日も彼はホームランを放ちました。
他にも彼は過去に
・エリザベス女王が逝去された日
・ビン・ラディンの死んだ日
など様々な日にホームランを放っており、彼がホームランを打った日には決まって何かが起こっています。
そんなカスティとの契約もあと2年。
過去にはオールスターも2度、シルバースラッガー賞を1度経験。昨年は怪我なく試合に出続け、フル出場も果たしあとはリングを取るだけとなりました。
今オフは家族と共に来日し、東京や箱根、京都や奈良を訪れていたようで、日本人も親しみが持てる選手だと思います。
▽Trea Turner #7
いよいよ終わりが近づいて来ました。
最後に紹介するは内野手のトレイ・ターナーです。
オールスターは3度経験。シルバースラッガー賞も1度受賞。MVP投票にも常連の打撃型遊撃手であるターナー。
2019年にナショナルズで世界一を経験、2022年オフにドジャースからFAとなったターナーは2023年にフィリーズと11年3億ドルの超大型契約を結びます。
ハイアベレージを残せるバッティングスタイルと、MLBでも指折りのスプリントスピード。
そして「世界一美しい」とも評されるスライディングでフィールドを縦横無尽に駆け回ります。
また、ターナーは好不調の波が大きい選手で、好調時はとにかく固め打ち。スライディング同様に非常に美しいスイングフォームから、その体躯に似合わぬ凄まじい飛距離のホームランをも量産します。
逆に不調時には外スラくるくるのゲッツーマシーンと化し、月間打率は1割代を記録することも。
ターナーがチームに加わったのは2022年末。
ESPNのジェフ・パッサン記者が、ターナーがフィリーズと契約合意した旨を報道。
その後のWBC 2023でも6試合で5本塁打を放ち、日本戦でも今永昇太投手から本塁打を放つなど、凄まじい活躍を見せたターナーはフィラデルフィアのファンからも大きな期待を背負います。
しかし開幕から数ヶ月が経っても、一向にターナーの調子は上がりません。元々守備が上手くはないターナーは、その打撃不振も相まって、エラー時にはCBPでブーイングを受けることも。
11年3億ドルというその契約の大きさもあり、彼の今後を不安視する声も現れ始めます。
8月中盤の試合でマーリンズにサヨナラで敗れた際のインタビューでは、苦しげな表情で「自分自身にとても失望している。とにかくどうにかするしかない。」と憔悴した様子。
そしてこのマーリンズとのシリーズの次に控えるのはホームゲーム3連戦。
XにてフィリーズのファンアカウントであるPhillies Nationが「今度の試合、ターナーをスタンディングオベーションで迎えよう。」といった趣旨の投稿をします。
これに対し地元放送局のコメンテーターを筆頭とした多くの人が反応。
「彼は夜中の12時までバッティングケージにこもっていた」
「彼は自分自身を見失っている。彼をサポートするべきだ」
「ボームにしたように、俺たちは彼にもサポートの意を示すんだ」 (いずれも筆者意訳)
とにかくターナーをサポートしよう、という声の他に2022年のボームを引き合いに出した声も上がります。
そしてこの流れを後押しするかのように、Instagramにて動画クリエイターであるJon McCann氏の投稿がされます。
「今 彼に必要なのはブーイングじゃない。彼がバッターボックスに入る度に彼をスタンディングオベーションで迎えようじゃないか!そうだ 毎回だ。今の彼に必要なのはラブなんだ。」
「"Come on Trea ! Let's go !"ってな!」 (筆者意訳)
そして迎えた8月5日。
ホーム CBPで迎えたロイヤルズとの3連戦シリーズ第一戦。
8番遊撃手として出場したターナーが打席に入る度にファンは大歓声。凡退してもブーイングはひとつもありません。
第3打席。2点ビハインドで2塁にランナーを置き、打席にはターナー。
ファンはここでもスタンディングオベーション。
そしてターナーはここでタイムリーヒット。
1 点を返します。
結果試合には敗れこそしましたが、試合後にターナーはインタビューでこう語っています。
「あれは最高にクールだったよ。
ファンは自分をサポートしてくれているのだと改めて実感したね。最高にクールだ。
もちろん勝てればよかったけれど、それでもあれは素晴らしいものだったよ。」 (筆者意訳)
そして翌日の第2戦。
この日もターナーに打席が回った際にはスタンディングオベーションが巻き起こります。
そして1点ビハインドで迎えた6回裏。
ランナーを2人置いて打席にはターナー。
その初球でした。
甘く入ったファストボールを捉え、打球はそのままスタンドイン。打った瞬間にそれと分かる特大のアーチ。
満員 42000人のファンが詰め寄ったCBPは歓喜に包まれます。そしてこれが決勝点となりチームも勝利。
ターナーは翌日もヒットを放つなど復活を印象づけました。
後日ターナーはファンのサポートに感謝の意を示すため、街中のビルボードに【THANK YOU,PHILLY】の文字を掲げます。
↓ MNsports様がこれも動画にまとめています。
また、ターナーの復活劇はここで終わりではありません。
このスタンディングオベーションまでは打率.235 OPSを.657としていたターナー。しかしこれ以降成績が急激に持ち直し、シーズンが終わってみれば例年と大差ないくらいにまで立て直します。
そして、WBCからも分かる通り、ターナーの強さは大事な舞台で発揮されます。
この年のポストシーズン
ターナーは打率.347 OPS1.033 本塁打3本の大活躍を見せるのです。
守備でも幾度となくファインプレーを見せ、彼の一挙手一投足にファンは大熱狂。
名実ともにフィラデルフィアのスーパースターとなったわけです。
昨年は怪我もあり少々不本意なシーズンとなったターナーですが、来季は1年間健康で活躍する姿に期待したいと思いますね。
ちなみにスタンディングオベーションなどの一連の流れを巻き起こしたJon McCann氏は短編映画の題材となり、「The Turnaround : ファンと共にあれ」というタイトルで実際に映画化。現在Netflixにて配信されています。
視聴した上で言うと、フィリーズに関する話というよりあのスタオベおじさんの話ではありますが、30分程度で見れるので、興味があれば是非。
▼あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます。
元々は10000字程度に収めるつもりが、書いているうちに筆が乗ってしまい、次々に書きたいことが浮かんだことも相まっていつの間にかこれだけの文章量になっていました、、
実はこれでもだいぶ削ったつもりで、まだまだ書きたい選手もエピソードもたくさんあるんです。
(ハーパーの怪我からの復帰とか幻のTikTokとかストットのAOKとか新加入のルザルドとか現在は他球団のリース・ホスキンスとか…………)
書ききれなかった選手は、写真をまとめて下に貼っておくので、気が向いたらでもいいので是非見てください。
今回は青柳晃洋選手の獲得をきっかけに書いたnoteであるため、主に阪神ファンの方に読んでいただければなと考えていますが、他ファンの方でも読んでいただければ、それは非常に嬉しいですし、フィリーズ、ひいてはMLBに興味を持つきっかけになるだけでも十分これを書いた価値はあったかなと思います。できればそのままフィリーズファンになってください
Xは基本ネタ多めですが、野球に関する投稿を中心に行っているつもりですので、もし良ければフォローしてください。
それではまた。
今回紹介しきれなかった選手たちを一部紹介
参考文献・サイト・写真 etc…
【MLB】
【ESPN】
【The athletic】
【fangraphs】
【baseball savant】
【baseball reference】
【Phillies】(公式X)
【Phillies Tailgate】(X)
【ドミニク・ウィーラー】(Instagram)
【マット・ストラーム】(Instagram)
【タイワン・ウォーカー】(Instagram)
https://www.instagram.com/tskywalk44?igsh=Z213MGJuYXEyeHR3
【Phillies】(公式YouTube)
【MNsports】(Youtube)
【Philly Phanatic wiki】
【Vintage Philadelphia】(Instagram)
【田口壮 wiki】
【井口資仁 wiki】
【Guide to philly】
【ダルビッシュの言いたい放題ライブ】