遭難
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・くそッ!!
Q2:・・・・・・。
Q1:このまんまじゃ・・・マジでやべえぞ。
Q2:・・・・・・。
Q1:目の前は吹雪。
Q2:・・・・・・。
Q1:全然変わりそうにない先の一切見えないこの天候。
Q2:・・・・・・。
Q1:そして今俺らはなんとか強風をしのぎながら、
洞穴から外をただただ見続けている。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・間違いなくこの状況は・・・遭難じゃねえかよ!!
Q2:・・・・・・。
Q1:誰かーッ!!
Q2:・・・・・・。
Q1:遭難じゃねえか・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:遭難じゃねえか遭難じゃねえか遭難じゃねえかよぉぉぉ
Q2:遭難なんかじゃないッ!!
Q1:ッ!!
Q2:遭難なんかじゃないッ!!
Q1:・・・・・・。
Q2:遭難なんかじゃないッ!!
Q1:遭難に決まってんだろこんな状況!!遭難だろ!!
Q2:遭難してるかなんて分からないだろうが!!
Q1:・・・どういうことだよ?
Q2:遭難してるって思うから遭難してるって思うんだろ!!
Q1:・・・・・・。
Q2:遭難したって認めた時点でもう
俺らは遭難したことを認めたことになるんだぞ!!
Q1:・・・・・・。
Q2:いいか?つまりこの
極限の状況を認めてしまったらもう終わりなんだよ!!
Q1:・・・た、たしかに・・・。
Q2:そう・・・だから、
もっと目の前の状況をもっと疑え!!疑うんだ!!
Q1:そうだな・・・決め付けちまったら
もうそのことがホントそうなっちまうもんな。
Q2:そうだよ。
Q1:そうか・・・よし、俺らは遭難なんかしてない!!
Q2:そうだ!!
Q1:遭難なんかしてない!!
Q2:そうだ!!
Q1:遭難なんかしてない!!俺らは遭難なんかしてない!!
Q2:そうだそうだ!!
Q1:遭難なんかしてないんだーッ!!
Q2:そうなんです!!
Q1:遭難なんかしてないんだ俺たちは。
Q2:そうだその調子だ!
もっと目の前の物事に疑問を持っていこうぜ!!
Q1:よし・・・!!なんか気が楽になってきた気がしてきたぞ。
Q2:それは本当なのか?
Q1:え?
Q2:お前は本当に気が楽になってきた気がしてきたのか?
Q1:そ、それは・・・。
Q2:気が楽になってきた気がしてきたんじゃあなくって、
本当に気が楽になってきたんじゃあないのか?
Q1:それは・・・。
Q2:お前は気が楽になってきた気がしてきたんじゃない。
気が楽になったんだ!!
Q1:そうかその発想があったか!!
Q2:そうだ!!
Q1:そうか!!
Q2:そうだ!!
Q1:よーし、この発想を発展させてやる・・・!!
なんかいい物事はねえか・・・!!
Q2:お前、目が鋭くなってきたな。
Q1:鋭くなってきたんじゃないぜ。もう鋭くなったんだよ。
Q2:マジで!?
Q1:今の俺の目はもうホント
鋭すぎて、目の前の事柄を突き刺す勢いだ!!
Q2:マジでッ!?
Q1:マジさ!!
Q2:マジでッ!?
Q1:マジさ!!
Q2:今の俺の視線は鋭利に満ち溢れてるぜッ!!
Q1:本当に鋭利に満ち溢れてるのか?
Q2:・・・え?
Q1:お前が鋭利に満ち溢れていると思っているその物事は、
本当に鋭いという要素によって構成されてるのか?
Q2:そ、それは・・・。
Q1:もしかしたら、鋭いというものに対する概念を
履き違えている可能性があるとは思わないのか!?
Q2:そ、それは・・・。
Q1:もしかしたら物事を間逆に履き違えている可能性は
Q2:そうだ俺の目は鈍利だった!!
鋭利なんかじゃなくて鈍利だったぜ!!
Q1:本当にそうなのか?
Q2:え?
Q1:そもそも視線というものに対し鋭いも鈍いもあるのか?
Q2:そ、それは・・・。
Q1:あるさ!!鋭い視線も鈍い視線も!!
Q2:そうだな!!
Q1:そうだよ!!
Q2:そうだぁッ!!
俺の視線は・・・どっちなんだああぁぁぁぁ!!
Q1:どっちかに決める必要なんてあるのか!?
Q2:そ、それは・・・。
Q1:どっちか一つに決める必要なんてない!!迷ったら間を取れ!!
Q2:俺の視線の鋭さは・・・中間だあああぁぁぁぁ!!!
Q1:そうだ、中間だ!!
Q2:そうだ、物事なんざ最終的に平凡が一番なんだあああぁぁぁ!!!
Q1:そうだそうだ!!
Q2:そうだそうだ!!
Q1:そうだそうだああぁぁぁーーー!!!
Q2:そうだそうだそうだあああぁぁぁーーーー!!!
Q1:ぁぁぁぁああああ
Q2:ぁぁぁぁぁぁあああああああ
2人:さみいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!
Q1:こんなにドンチャンさわいでんのにぃぃぃ!!
くそぉこんなに寒いもんなのかよ雪山ってのはよぉ!?
Q2:バカ野郎認めたらおしまいだってさっき言ったろ!!
Q1:そ、そうだった!!
Q2:疑え!!疑うんだ!!
Q1:そうだな!!
Q2:俺らは本当に寒いのか・・・!?
Q1:・・・・・・いや、んなことは誰も分からねえよ!!
Q2:そうだよ!!
Q1:でも、この体の尋常じゃない震えはどう解釈すりゃいいんだよ!?
Q2:お前、本当に自分が震えてると思ってるのか?
Q1:え?
Q2:気のせいだ!!
Q1:そうだな!!
Q2:あー暖けえええぇぇ!!
Q1:あ、あー暖けえなあ!!
Q2:そうだここは暖かいんだ!!
Q1:そうだこの洞穴ん中は暖かいんだ!!
Q2:ここは本当に洞穴なのか?
Q1:そ、それは・・・。
Q2:ここは洞穴なんかじゃない!!
Q1:そうだそうだッ!!
Q2:ただの穴・・・そう、空洞だ!!
Q1:そうだそうだッ!!
Q2:あ、なんか外すげえ吹雪いてね!?
Q1:お前、あれは本当に吹雪だと思うのか?
Q2:え?
Q1:雪が吹雪いてるだなんて思うのか?
Q2:・・・いや、あれは雪かなんて分からない。
Q1:じゃああれはなんだ?
Q2:・・・火山灰だ!!
Q1:いやただの灰色い粉だ!!
Q2:いやいやただの粉っぽいアレだ!!
Q1:いやいやいやただの何かだ!!
Q2:いやいやいやいやただの何かっぽいアレだ!!
Q1:いやいやいやいやいやただの物体だ!!
Q2:そうだ、つまり雪だって根拠は何処にもない!!
Q1:そうだ!!結局物事なんて結局ただの物にすぎないんだよ!!
Q2:そうだ!!ただの物体がただの物体の上に降り積もってるだけだ!!
Q1:物が降り積もってるんじゃなくてアレがただああなってるだけだ!!
Q2:アレがアレしてるだけだな!!
Q1:アレがアレしてるだけだよ!!
Q2:そうだな!!
Q1:そうだよッ!!
Q2:そうだ!!
Q1:そうだッ!!
Q2:そう・・・つまり今の俺たちみたいなもんさ。
Q1:・・・・・・。
Q2:アレがああなって、ソレがそうなって、こうなったから・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:ただソレだけで、ただソレだけに、
ソレだけを、ソレだけが、ただソレだけで・・・。
Q1:本当に・・・ソレだけだったのか?
Q2:・・・え?
Q1:俺たちは本当にそれだけだったのか?
Q2:・・・・・・。
Q1:俺たちはそれだけどころかあれだけ頑張って
ここまでやって来れたんじゃなかったのか?
Q2:・・・・・・。
Q1:あれだけ頑張って来たからこそ
俺らはこうやって一緒にいられるんじゃないか。
Q2:・・・・・・。
Q2:・・・そうだった・・・そうだったな。
Q1:だからそんなこと言うな。助けを待とう。ソレだけだ。
Q2:そうだな・・・!!
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・ッ!!
Q1:ッ!!どうした!?
Q2:救助隊だ・・・救助隊が来たんだあああぁぁぁ!!
Q1:・・・・・・。
Q2:やった・・・俺ら助かるんだ!!おおぉぉぉぃッ!!
Q1:・・・・・・。
Q2:おい、どうしたんだよなんで黙ってんだよ!?
Q1:あれ・・・ホントに救助隊なのか?