虚人
Q1:おい!!
Q2:・・・・・・。
Q1:何やってんだよおい!!
Q2:?
Q1:危ないだろそんな無防備で歩いてちゃ!!
Q2:何してんですか?
Q1:見りゃ分かるだろ。死んだフリだよ!!
Q2:死んだ・・・フリ?
Q1:そうだよ!!こう仰向けになって
ジーっと目閉じてなきゃやられちゃうだろ!?
Q2:えっ そうなんですか?
Q1:そうだよ!!
Q2:そうなんですか・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・それじゃ!!
Q1:何でそうなるんだよ。危ないじゃんかだから!!
Q2:いや僕そういうのだいしょぶなんで。
Q1:何なの?
どっから湧いてくんだよその自信は。死にたいのかよお前!?
Q2:そもそも生まれてないんで。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・それじゃ!!
Q1:いやいやいやいやいやいや
Q2:何ですか?
Q1:何言ってんの?
Q2:何がですか?
Q1:何がですかも何も・・・ピンピンしてるじゃん。
Q2:え・・・そう見えます?そう見えちゃってます!?
Q1:何でそんな嬉しそうなんだよ気持ちわりぃな!!
Q2:何かそう言ってもらえると
何ていうか生き生きして来るっていうか・・・
生き生きしがいが出て来るんですよね。
Q1:当たり前だろ生きてんだから。何?お前はそんな
しょうもない嘘ついてまでそっち行きたいってのか!?
Q2:・・・嘘じゃないですよ!!あ、まぁ
嘘ついてるっちゃそうなんですけど。あぁまあでも・・・
裏を返せば嘘つけてるって事だし・・・良いのか。
そういった意味では胸を張っても良いのかもしれない・・・
そうだ!!きっとそうだ!!
Q1:・・・・・・。
Q2:そうだ!!これからも・・・
胸張って生き生きと生きたフリをして行こう!!
Q1:・・・・・・。
Q2:そう!!生き生きと!生めかしく!生々しすぎるほどに!!
Q1:待て待て待て待て
Q2:例え生乾きであれど!!
Q1:いやだからどこ行こうとしてんだよ!!ていうかもう・・・
これ以上仰向けの人に追いかけさせないでぇ!?
Q2:!?
Q1:もう岩とかモロだから!背中に!
ダイレクトに来るから!いろんなアレが!!
Q2:・・・ぁあ何かすいません。
Q1:動きたくないのだから。
なぜならもう死んでいるのだから。
死んでいる者として生きているのだから。
Q2:さっきからアレなんですけど・・・
ホントに死んだフリしてるんですか?
Q1:見りゃ分かんじゃん。
Q2:・・・・・・ぜんっぜん死んでるように見えないですよ?
Q1:良いんだよ別に。その場さえ凌げりゃOKなんだから。
Q2:死体っていうより・・・素材っぽいです。
Q1:は?
Q2:美味しいいただかれちゃいそうな感じっていうか・・・。
誰かにくわえられたまま引きずって行かれそうなオーラが
半端ないんですよね。
Q1:願ったり叶ったりじゃんかよ。
完璧に死んだフリ出来てるって事だろ。
Q2:死んじゃいますよ多分。本末転倒じゃないですか。
Q1:何なんだよ!!お前こそさぁ何だよさっきの!!
生めかしく生まれてませんみたいな訳分かんねえ言い訳して
人様の忠告はスルーしやがって!!
Q2:・・・いやいやいやあなたのフリなんかに比べたら
断然僕の方が上手くやってますって!!
Q1:だから死んだフリしなきゃ危ないって何回も言ってんじゃんか!!
Q2:だからやってるんですよ!!
Q1:何をだよ!!
Q2:生きているフリですよ!!
Q1:何なんだよだからそれは!!
Q2:アレですよ?僕と自然に会話しちゃってる時点で
もうあなた騙されてるんですよ!?
Q1:どういう事だよ!
Q2:こうやって僕と自然に会話しちゃってる時点でもう
あなた騙されてるんですよ?
Q1:何で2回も・・・何だよ急に怖い怖い怖い
Q2:僕は生まれてないんです。
Q1:生まれて・・・ない?
Q2:フリなんですよ全部。全然そう見えないでしょ?
なぜなら僕の擬態が上手いから。
Q1:嘘だろ・・・。
Q2:もういいですかね?
Q1:嘘なんだろ?
Q2:嘘じゃないんです。
Q1:嘘だ!!
Q2:嘘じゃない!!
Q1:嘘だって!!
Q2:待てよ?
Q1:?
Q2:ということは・・・同時に嘘を貫き通してる事になる。
つまり・・・そういう意味では嘘を付いている・・・!?
Q1:え、嘘なの!?
Q2:あぁいやいや嘘じゃないです。まぁ嘘っちゃ嘘なんですけども。
Q1:どっちなんだよ・・・どっちなんだよ!!
Q2:ダブルミーニング!!ダブルミーニング!!
Q1:何なんだよもう!!お前何なんだよもう・・・。
Q2:とにかくねぇあなたの死んだフリなんかと
僕の生きているフリを一緒にしないでもらいたい!!
Q1:なっ・・・お前人の死んだフリ馬鹿にすんなよな!!
Q2:だって目閉じて横たわってるだけでしょ!?オッサンかっ!!
Q1:うるせぇよ!!悪かったなオッサンで!!
Q2:オリジナリティの欠片も無いじゃないですか!!
Q1:要らないんだよそもそも!!相手を騙すのが目的なんだから!!
騙してるんならそっちだって同じ穴のムジナだろ。
Q2:こっちは今まさに騙してますけどね。いいですねぇ
そっちの人は・・・寝れて食えてヤれて死ねるワケですから。
Q1:みんなそうだろ。
Q2:こっちなんて毎日食ったつもりで
寝たフリこいて毎晩エアセックスですよ。
Q1:何だその暮らし!!虚無感の塊じゃねぇか!!
Q2:いつになったら本番を迎えられるんですか・・・
一体あと何回エア童貞のノルマを減らしゃ良いんですか!?
Q1:エア童貞って何だよ!!
つーかそもそも一度捨てたら無くなるもんだろ。
Q2:えっ そうなんですか?それはまだ習ってない・・・。
Q1:ふつう習わねえんだよ。
Q2:ただ、そんな貴重なものを捨てるなんて・・・
ものすごくとんでもないような気がする!!
Q1:・・・捨てたくても捨てられない人だって大勢いるんだけどな。
Q2:え?捨てるのが嫌なら転売すれば良いのに・・・。
Q1:そんな簡単に取り外しできるもんじゃねぇから!!
Q2:え!?いつかこの世のありとあらゆる童貞を
買い占めようと心に決めていたのに・・・
Q1:お前童貞のこと何だと思ってんの!?謝れよ全ての童貞に!!
何なんだよその大きいんだか小さいんだか良く分からない夢は!!
Q2:何でそんなムキになるんですか!?知らないですよ!!
Q1:いや察してよ・・・察してよそこは。
Q2:何なんすか意味分かんないですよ・・・。
Q1:・・・散々訳分かんないこと喋り倒して来てよく言えるな!?
Q2:・・・ぁあ何かすいません。
Q1:なんかもう埒あかないから説明しろ!!全部!!
Q2:えぇ!?
Q1:全部事情説明してもらわない限りどこにも行かせないからなッ!!
Q2:だからさっき話したじゃないですか・・・。
Q1:ほら早く!!
Q2:・・・・・・もうこれ以上は・・・限界かな。
Q1:よし。聞かしてもらおうか
Q2:嘘に嘘を重ね続けるのには正直
疲れてたんですよね・・・これでやっと解放される。
Q1:えっ何そんな重々しいのこれからの話って。
Q2:そう、あれは僕がまだマイナス十七歳だった頃でした・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:この世に生まれて来る日に胸膨らませ、
-2999年が来るのを待ちわびていたんです。
Q1:・・・・・・。
Q2:早く生まれたかったんですよね・・・若かったんです。
本来ならちゃんとマイナス十七年経てば、精子卵子さんと
提携を結んで晴れて母体入りが出来たんですけどね!!
Q1:・ ・ ・ ・ ・ ・。
Q2:背伸びしてたんです。背伸び背伸び繰り返し
見栄張って嘘ついてサバ読んで・・・不正入界。
Q1:・ ・ ・ ・ ・ ・
Q2:不正入界成功、ふらふら生きてるフリして
楽しんだフリしてたんですよ・・・・・・。
Q1:・・・聞かなきゃよかった。
Q2:でももう満足です。ニセ札作っていろんなとこ行きましたから。
Q1:聞き捨てならないな。
Q2:ありがとうございました・・・まさか僕なんかに
説教してくれる人がいるなんて思いませんでした。
Q1:・・・・・・。
Q2:そろそろ帰ります。また会えたらいいですね・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:それじゃ!!
Q1:あ、危ないッ!!
Q2:!?
( バ キ ュ ー ー ー ー ー ン ! ! ! ! )
Q1:ほら言わんこっちゃない!!おい大丈夫か!?・・・おい!!
Q2:あ、僕こういうのだいしょぶなんで。
Q1:何なの?