カルチャーショッカー
Q1:もう何回注意されりゃ気ぃ済むんだよ!!
Q2:すいません・・・。
Q1:お前はもうウチの会社の社員なんだぞ!?
それなりの自覚を持って行動してもらわねえと困るんだよ!!
Q2:はい・・・。
Q1:お前なあ、
まだこうやって口に出してもらえるだけありがたいんだからな!?
こんな注意されてばっかなまんまズルズル行ってたらなあ、
世の中通用しねえぞ!!
Q2:・・・・・・。
Q1:世の中なあ、そんなに甘かねえんだよ!!
Q2:そんなこと言われましても。
Q1:あ!?
おま、お前こういう状況でよくそんな減らず口叩けんなこの野郎!?
Q2:僕ここ来たばっかなんです。
Q1:今度は言い訳かぁこの野郎!?お前みたいななあ、
会社に来てまだ間もないヤツらなんて世の中大勢いんだよ。
だからなあ、世の中じゃそんな言い訳なんか通用しねえんだよ!!
Q2:僕、世の中に来てまだ一ヶ月ちょっとしかたってないんで。
Q1:だから世の中に来たばっかだろうがなんだろうが・・・って、え!?
Q2:僕、世の外から来た者でして・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・・・・あ、そうだったの?
Q2:はい・・・。
Q1:・・・じゃ、じゃあそればっかりはしゃあねえなぁ!!
え、お前世のなに、外?世の・・・外から来たって?
Q2:はい、そうなんですよ。
Q1:へ、へえ~。
Q2:はい。
Q1:ふーん・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・俺さぁ、
Q2:?
Q1:俺、あのーあんま世の中以外のことってあんーま知らないんだよね。
Q2:そうなんですか?
Q1:世の外っていうとその・・・世の中の外側ってこと?
Q2:そうですね。
Q1:あーそう。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・あとそんでさっき、
世の中来てまだ一ヶ月とか言ってたけど・・・。
Q2:そうなんですよ。
実はホントつい最近に世の中に引っ越して参りまして。
Q1:あーそうかあ。
前の会社飛ばされたりなんかしたんかな??
Q2:まーそうっすねえ。人事異動ってヤツですよ。
まぁでもいろんなところ転々としてきましたから
慣れてるっちゃあ慣れてるんですけども。
Q1:そうかぁ~転勤族ってヤツかあ。
Q2:生まれどころが世の中じゃなくって右だったもんでしてね・・・。
Q1:・・・え??
Q2:・・・はい?
Q1:・・・あ、いやいやなんでも。
Q2:・・・世の右で生まれてすぐ、父親の転勤で世の右から世の下に
Q1:え~なになになに世の・・・右?下?
Q2:はい。世の右、下。
Q1:あ、世の外だけじゃなくって・・・
世の右、世の下とか・・・あったんだ。
Q2:はい。
Q1:あーそう、
ちなみにその世の右ってのは、どこにあんの?
Q2:右側ですね。世の中の。
Q1:あーそう・・・。
右ってことはえーと東西南北でいう、東?
Q2:いや、右です。世の。
Q1:あ、そう。じゃあ・・・世の下は
Q2:下です、下。世の。
Q1:あーそう。
Q2:・・・・・・。
Q1:・・・・・・。
Q2:・・・・・・。
Q1:そんで?
Q2:え?
Q1:そんでそんで?
Q2:何がですか?
Q1:何がですか??じゃなくて
父親の転勤がどうのこうのって話だよ!!さっきしてたろ!!
Q2:あーはい、
えーと世の右から世の下にすぐ世を移り変わりまして。
Q1:お、おう。
Q2:その世の下で小学卒業する手前らへんまで過ごしまして。
Q1:ふ~ん。
Q2:僕いまだに覚えてるんすけどね、
あそこで出された給食がうまかったんすよ。
Q1:給食かあ、俺が小学生だったころの時代はさぁ、
まだそんなのなかった時代だったからなあ~。
おふくろの弁当毎日持ってってたよ。
Q2:あ、そうだったんですか?
Q1:まぁ昔の話だけどな。
Q2:給食盛りつけるときに着る給食着とか、
僕うまく着れなかったんですよねー。
千角巾とかとくに。
Q1:ん?
Q2:え?
Q1:なになに?
Q2:あ、すいません転勤の話でしたよね。
Q1:そうだけど今そこじゃねぇよ最後言ってたやつだよ!!
千角巾!?三角ありゃ十分だろ!?
Q2:え、こっちのって三角しかないんですか!?
Q1:千角にすんだったらせめて帽子にしろよ!!
もはや楕円にかぎりなくちけえようなもんなんだから。
Q2:この世の巾はシンプルなんですね・・・
というかこっちきて知ったんですけど、
こっちのリモコンって四角いんですね。
Q1:お前んとこのリモコン何角あんだよ!?
Q2:まあそんな感じでしばらく小6くらいまで
世の下でひっそりと暮らしてましたね。
Q1:ふーん。
Q2:僕こうやって転勤族経験してきて気付いたんすけど、
やっぱその世によってそれぞれ人柄ってのが違うんですよね。
Q1:あーやっぱ世ごとでも違うもんなんかあ。
Q2:僕その世の下での学校のクラスになじめなくって
ひきこもってましたもん。
Q1:まあ勝手なイメージだけどけっこうそういう人多そうだけどさあ。
世の下だし。
Q2:そんな状態だったんで、
遊び相手はいっつも兄弟ばっかでしたねえ・・・。
Q1:なんだお前兄弟いんのか。
Q2:はい、上に149人。
Q1:・・・・・・。
Q2:まあでも兄弟っていうかその
Q1:・・・ってお前150番目なのかよ!!
Q2:はい。あと下にも149人。
Q1:・・・・・・ど真ん中かよ!?
Q2:はい。まぁでも兄弟っていうかそのみんな一卵性なんでまぁ、
しょっちゅうよく間違われるんすけどね。
Q1:・・・なっ!?
Q2:なんでか分かんなかったんすけど3番目とよく間違われましたねえ。
Q1:あ、そう・・・。
Q2:まあでも母が全員生み終わるのにかれこれ3年弱かかりましたから。
Q1:母さん強ええなおい!!てか3年は長くね!?
Q2:母曰く最初は順調だったんですけど途中でストップしちゃって、
しばらく出産止まってた時期があったらしいんですよね。
Q1:ストップ!?
Q2:それがちょうど僕らへんだったらしくて。
僕思うんですけど、多分ですけどね、
腹ん中で若干余分に育ってたと思うんですよね。
Q1:なんかもうお前の話聞いてるとそういうのもありえそうなんだよな。
Q2:ホントですよ。そんな感じにひきこもってましたけど、
そんな退屈はしなかったんすよね。んでそっからまた転勤ですよ。
世の下から3メートル後ろへ。
Q1:範囲せまいな!!それ引っ越しに入んの!?
Q2:近かったんで光速道路使わないで済みましたからねえ。
Q1:何それものすごく早そ!!
Q2:こっち来たばっかのとき間違いましたもん。光速と高速。
Q1:まあ読み仮名おんなじだしなあ。
なんかすげえなあー世の下の3メートル後ろって。行ってみたいわ。
Q2:んで、僕が今から一ヶ月前に引っ越してきたこの場所が、
“ちょっとななめ下”の“世”の“中”ですよ。
Q1:あ、なるほどね・・・っておい!!おい!!
Q2:何ですかもう。
Q1:え、何俺らが住んでる世はちょっとななめ下の世だったの!?
Q2:はい。
Q1:ってことはさあ、
ちょっとななめ下の世だけじゃなくってさあ、
他の世とかもあるの!?
Q2:ありますよ。僕が高校のときに住んでたとこが
“ちょっとななめ下”の世から右に3つ数えたとこなんですけど、
そこは“おばあちゃん家の仏壇の臭いがする世”でして、
ちょっと有名ですかね。
Q1:何そのどこ歩いてても息すんのイヤそうなとこ!!
Q2:でも蚊とかぜんっぜん見かけないんで
それがまた快適だったんですよ。
Q1:ああーなるほど。そういう解釈もアリか。
って、そういうもんなのか?
Q2:はい。でもですね、
そのせいで僕は虫を見る機会がもうぜんっぜんなかったんですよね。
Q1:そうだよなあ。
むしろ虫に対する概念がないって言っちゃってもいいくらいだしな。
Q2:だからいっつも夏休みになると、なんかちょっと
おばあちゃん家の仏壇の臭いがする世の中の中に行って
よく虫取りに行ってましたね。
Q1:へえー。・・・って、え!?
Q2:え?
Q1:中の中!?
Q2:そうですそうです。
Q1:なんかさっきまでなんとか話に
ついてってたつもりでいたけど、また突き放された!!
Q2:ただ単に“中”の“中”ってだけですよ。
Q1:ま、まあそうだけども!!
Q2:極端に言っちゃえば、
箱あけたらそん中にまたちっちゃい箱入ってたみたいな。
Q1:ま、まあそうだけども!!
Q2:あ、これ知ってました??
これ地元の人でもあんま知らないんですけど、
ちょっとおばあちゃん家の仏壇の臭いがする世の中の中の
“はじっこ”がねえ、虫取りの穴場なんですよ!!
Q1:ま・・・。
Q2:んで、その世の中の中のはじっこのさらにその
“つけ根”の部分にね、秘密基地を作ったんですよ!!
Q1:へ、へえーー~~。さぞ楽しかったんだろうなぁ。じゃあさぁ
今度休みの日にでもそのつけ根の部分案内してくれよ!!
Q2:いや、その世はついこないだ終わりを告げたんですけどね。
Q1:・・・・・・。
Q2:いやー話してるうちについ思い出しちゃったけど、懐かしいなあ。
・・・あ、もうこんなに時間が過ぎてるじゃないっすか。
仕事に戻りましょう。
Q1:・・・なあなあ。
Q2:何ですか?
Q1:・・・世の外ってどうやったら行けんの!?
やっぱ光速道路!?
でも光速って言ってもどんな車で走んの!?
もしかして車じゃないの!?
光速だとこっから何分でつくの!?
なあ!?
なあ!!?
Q2:先輩、そんなんじゃ世の外どころか世の中でさえ通用しませんよ。