キッズ・スポーツ体験キャンプ2022in富山
親の心、子知らず
ある日、キッズ・スポーツ体験キャンプ2022in富山のお知らせをバレーボール元日本代表の大山加奈さんのインスタで知った。行ける距離だし、これは参加させてみたい。そう思い、すぐに長男に話してみた。
こんな楽しそうなキャンプがあるんだって!どうかな?行ってみない?と努めて明るく。長男の返事はもちろんNO。「行かない。家でボール触ってたい」言うと思った。こういう男である。バレーボールもできるよ!あと車いすバスケやラグビー、最終日は走り方も教えてくれるって!「うーん、迷う。僕、足遅いから走り方知りたいかも」ここまできたらトドメを刺すだけである。「バレーボールのコーチは…大山加奈さんです!!」と伝えると「じゃあ行く」と即決。
何を隠そう長男は『ライオンのグータッチ』という番組で小学生男子バレーボールチームの回があり、それを何度も何度も何度も見返していた。その回でコーチされていたのが大山加奈さん。長男にとってはテレビの中のすごい人なのだ。「大山加奈さんにバレーボール教えてもらえるなら行きたい!」と言ってくれた長男。
これにより私の「この夏、超陰キャでステルス機能搭載かつひとりボッチでいてもなんら困らないからずっと1人でバレーボールと遊び続ける長男に、他者と触れ合い、会話し、共に活動することで協力し認め合うこと知り、バレーボール以外のスポーツの楽しさも知ってほしい」という長めの願いが達成への第一歩を踏み出した。
準備をしよう!
行くと決まればまずは申し込み。このキャンプは旅行会社WILLERさんとの提携のため、申し込みの際まずはWILLERさんの無料会員になる必要がある。ほらあの高速バスとかの。簡単にウェブで申し込みできたのとても楽チン。当日のスケジュールも細かく決まっていて安心、支払いもそのままクレカ決済可能で、録画した『キンプる』を見ながらサクッと予約。さよなら4万5000円。
開催が近づき、メールにより最終確認書のPDFがきた。集合場所の詳細地図や、駐車場への入場許可証、またコロナ禍なのもあり健康状態を毎日入力するためのQRコード、3日間の食事メニュー、そして持ち物一覧表などが配布された。
持ち物一覧表に従い少しずつ用意しておいたものを前日に長男と2人でパッキング。小学2年生、初めてのお泊まり、さらに彼はきちんとしていたいというこだわりが強め。パッキングはスケジュールを見ながら"その時に使うものをひとつのジッパーバッグに入れる" "使うとき取り出しやすい入れ方をする"という2点を気をつけて取り組んだ。こうすることにより、スケジュール確認によって3日間の過ごし方に見通しがつき、(うっかり者のママではなく)自分で準備することで「忘れものをしたくない、完璧でいたい」という(ちょっと面倒くさい性質の)長男が持つ不安も軽減されるかもしれない。
キャンプ中の様子は?
親元から離れての2泊3日なんて初めてで、正直かなりソワソワしていた。私が。しかし、キッズ・スポーツ体験キャンプ様のインスタストーリーに多くの動画や写真がアップされていって離れて過ごす親たちは手軽にキャンプの様子を見ることができた!ありがとうスタッフの皆さん!ありがとう文明!
画面に見切れる長男の姿がボールを追いかけ楽しそうだったり、いつも通りボッチだったり、優しそうな高学年ぽいお兄さんに話しかけてもらっているようだったり、部屋の隅で膝を抱えていたり、スタッフお兄さんに話しかけてもらっていたり、カメラに気づき背を向けたり…といつも通り過ごしつつも家にいるだけではできない経験をさせていただいているとわかりとても嬉しい気持ちでストーリーを眺めていた。
自宅では、にいにのストーカーを生業とする次男が時々思い出したかのように家中のドアを開け放しながら「にいにー!にいにー!」と走りまわり、いないとわかるとしょんぼりと俯き、その寂しさを埋めるようにお菓子やアイスをもりもり食べていた。2日目には姿無きにいにを追うことを諦め、有り余る体力を元手に海辺に集まる鴎を走り寄ることで逃していくという騒がしくも簡単なお仕事にジョブチェンジしていた。
おかえり長男!!
最終日は富山大学までお迎えに。麗しの大山加奈さんを一目見れるかも!?との期待から保護者も見学OKな閉会式に間に合うように、次男と共に車で出発。車社会の田舎育ちなんですが、子供が生まれてから車移動の快適さをひしひしと感じている。兄弟どちらも車でグズらないタイプだから言えることなのかもしれないが。
途中休憩しながらも富山大学に到着。蒸し蒸しする体育館で閉会式が始まる。しかし、ここで次男のテンションがMAXに。久しぶりに見たにいに、なんだか背の高い綺麗な人、なんとなく自分をかまってくるれる他所のお父さんお母さん、にこにこしてくれる若いお兄さんお姉さん…なんて楽しい空間なんだ!と誰よりも楽しそうかつ煩い次男を許容していただきつつ、子供たちやスタッフの皆さんの言葉を聞いていた。長男も(めっちゃ小さい声だったけど)ちゃんと話すことができていた。
最後に大山加奈さん(新幹線の時間が迫っていたにも関わらず、長蛇の列にスーパー神対応)に長男と写真を撮っていただき、私は舞い上がってオタク特有の早口で後退りしながらなんとか言葉を紡いでいたのだが、帰路に着く車の中で伝えたかったこと何ひとつ言えんかったなと夕焼けに染まりゆく空を見つめた。推しの前では語彙力は消え、手が震える。オタクの哀しい性である。
スポーツ体験キャンプを終えた長男は帰りの車で「まだ帰りたくない。たくさん話した子もいたんだ。楽しかった」と交流することの楽しさを学んでくれていたようだった。サポートの学生さんのお話や他スタッフの方々がお話ししてくれた様子だと始めはなかなか自分を出せずにいたようだが、少しずつ話せるようになったみたい。人との交流があまり得意でない長男に少しでも刺激があればと参加させていただいたが、ほんの3日で想像以上に人と関わることができたようだった。自分から人に関わりにいくことに苦手意識があり、バレー以外では学校でも決して目立ちたくないという長男が「また会いたいって思うよ」と口にし、同じチームだった子とハイタッチして体育館を後にした姿が3日前より少し逞しく見えた。
この瞬間のしんみりとした気持ちを抱えた私は、帰宅して20時からライブ配信されたバレーボールU20日本代表の試合を見ながら「甲斐ィィィェ!!!」と叫び、タイムアウト中にはスパイクを打ち始める長男とにいにのハイテンションについていかねば!と言わんばかりに「ピィィィィェ!ピィィィヤ!!」と走り回る次男を目の当たりにし、天を仰ぐことをまだ知らないのだった。