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バトン

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今村くんと出会ったのは蝉がうるさいくらいに鳴いていた高2の夏。 近所の神社で毎年やってる夏祭り。神事の日に事件が起きた。 僕は何に巻き込まれていくんだろう。 青春小説第一弾。 …
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#眠れない夜に

【短編】バトン⑩

【短編】バトン⑩

第九話はこちらから

今村くんとご飯を食べる時は、すき家だった。
時々流れるすき家独自の音楽とかラジオとかに今村くんはいきなり機嫌が悪くなる。

「なんですぐにLINE返さねーの?」
僕は、今村くんの彼女じゃない。
「すぐ返せや」
脛をコツンと蹴られる。僕は今村くんの彼女じゃないし彼氏じゃない。
「聞いてんのか?おーい?」
手を伸ばされて頭をコツコツ叩かれる。機嫌が悪いからこんなことをする。
「も

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【短編】バトン⑤

【短編】バトン⑤

第四話はこちらから
#お食事中は読まないでください
※とてもショッキングな描写がありますので、苦手な方は読まないことをお勧めします。

水の流れる音はよく聞いた。川がそばにあったから。僕の暮らす街には大きな川とそばを流れる小さな川があって、高校1年の時、台風で増水した川の水が遊水池に流れ込んであと少しで僕の家は飲み込まれるところだった。

ここも一緒。
水の流れる音が大きく聞こえる。
まさか、僕

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【短編】バトン①

【短編】バトン①

僕が、今村くんと出会ったのは、3年前の高2の夏で蝉がジリジリ鳴いてる時だった。

今村くんは自転車で僕の目の前を横切って、2メートル先で転んだ。

半ズボンを履いていて、膝がパカって割れて血が湧いて出るようだった。

「おい!ボサっと突っ立ってないでなんとかしろ!!」

自業自得な怪我なのに目が合っただけの僕にえらい上から目線で助けを求めてきた。

僕はその姿があまりにもおかしくて目の前で起きてい

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