映画感想文『ナポレオン・ダイナマイト』 〜クセになりすぎるユルさ〜
“ナポレオン・ダイナマイト”
一見歴史モノのアクション・コメディかと思うこのタイトル、実は主人公の名前なのです。
いかにも強そう。
日本語だったら「剛田武」くらいのパンチがあるような(笑)。
しかし、この作品で描かれる主人公は、名前とは裏腹、根暗でナヨナヨしたさえない高校生。
いわゆる「ナード」と言われるやつでしょうか。
とにかく、 まったく「ナポレオン・ダイナマイト」感はまったく感じられない人物なのです。
この映画は、そんなナポレオン・ダイナマイトのさえない高校生活が、派手な演出もなく淡々と描かれています。
本当に「淡々と」描かれているのです(笑)。
しかし、それが見ているうちにだんだんとクセになってくるという。
“Glee” や“VICTORIOUS”といったドラマにより、私の脳内には完全に
「アメリカの高校 = とにかく楽しくてみんなはっちゃけてる場所」
というイメージが刷り込まれていました。
一方、 この映画で描かれるのは、クソど田舎でのさえない高校生活。
主人公は特にさえないのですが、 何となく高校が全体的にさえてないのです。
「学校で1番人気の女子」みたいな子も、映画内では輝いている風ですが、客観的にみて何となく垢抜けない。
こういった高校生活もまたアメリカのリアルなのかもと思ったら、何だか安心しました(笑)。
さて、そんなさえないナポレオン・ダイナマイトですが、クライマックスでは一瞬さえます。
生徒会長に立候補したさえない仲間のペドロを応援するため、
ダンスのパフォーマンスを披露するのです。
このシーン、普通の映画なら見せ場として派手な演出をするところだろうと思います。
しかし、この映画は違います。
割と遠目の定点カメラで、ナポレオンの「まぁ、下手ではないか」くらいのダンスを映すだけなのです(笑)。
しかも、最後音楽が中途半端なところで切れるという。
こんなに地味なクライマックスってあるのでしょうか(笑)。
ただ、その分すごく「リアルな感動」がジワジワ伝わってくるのです。
こんな感じで、この映画は「笑える」というより「クセになる」の方がしっくりくる作品だと思います。
「さえない奴らのテンポの悪さ」の演技が絶妙で、ラーメンズのコントのような「ずっとみてられる感」がグッときます。
まさに今、お盆休みだけど何も予定がなくてダラダラしているような日にピッタリな映画だと思いました。