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AI革命の真っ只中に日程調整サービスを作ってみた

2018年の10月に「Walica(ワリカ)」という割り勘計算サービスをリリースしておよそ6年が経ちました。
2020年からの数年間はコロナウイルスの影響もあり、瀕死状態になったものの、2022年あたりから徐々にユーザー数が回復基調になり、2024年には月間60万ユーザーを記録する月もありました。

「Walica」は僕が新卒入社した会社「IBM」の同期である @kyogom と作り続けており、今年はいい加減、別のサービスも作りたいねと話していたのですが、なかなか現実的なアイディアが思いつかず・・・

Walicaのメンテナンスをしつつも、数ヶ月ほど新サービスをアイディアを練った結果、日程調整サービスを作ろうということで今回リリースしたのが「Calinto(カリント)」というサービスです。

AI進化のニュースを目にしない日はないほど、世間はAIブームですが、そんな時代にコッテコテの、しかも特に目新しい技術を使っているわけでもないWebサービスを開発した経緯をお話しできればと思います。

アイディア出しの軸

まずは新しいサービスのアイディアを出すための前提条件を決めてみました。その時に挙がった項目は以下です。

  • 課題への解像度が高い領域(未知のドメインを避ける)

  • Walicaとの親和性が高い(旅行、グループコミュニケーションなど)

  • 人が集まらないと価値を発揮しないサービス(SNSとか情報サイト)は避ける

  • 必ずしも技術的チャレンジがなくてもいい

特に「Walicaとの親和性が高い」という条件を満たせれば、またゼロからユーザーを集めるのではなく、Walicaから送客ができるので、この周辺でアイディアを出そうと試みました。

イベント企画ステップのどこにめんどくささがあるか

グループイベントの始まりから終わりまでのステップをChatGPTに整理してもらって各ステップで主に幹事が「めんどくさい」と感じていることを考えてみました。

  1. 着想・企画立案

  2. 日程調整

  3. 詳細企画(スケジュール案作成、予算、役割分担、持ち物リスト)

  4. 予約・手配(宿泊施設予約、チケット購入)

  5. 直前準備(集合場所確認、天気確認)

  6. 当日(体調・安全確認、お金の貸し借り記録)

  7. 事後処理(貸し借り清算、写真共有、フィードバック収集)

Walicaの提供価値を抽象化すると「イベント幹事の負担を軽減する」ということになるので、この流れの中で単発でWebサービスを作っていって、相互送客できる状態を作っていけるとよさそうです。

取り組みたかった課題

上記の流れの中でも、まずは日程調整という比較的上流のステップでユーザー数を獲得したいと思いました。ただしtoCの日程調整という領域には、みなさんご存知「調整さん」という既存サービスがすでに存在します。2006年にサービスを開始し、2025年2月現在では800万MAUを抱える超巨大サービスです。
また、こちらも老舗ですが「伝助」というサービスも最新情報は分かりませんが、2022年時点で100万ほどの月間ユーザーがいるようです。

これらのサービスで使いづらいところを考えた結果、「会社の飲み会日程調整ユースケース」だと思いました。

具体的には日程が調整できたメンバーに、カレンダー招待を送るという場面。例えば調整さんを例に挙げると、メンバーは回答時に自分の名前を自由記述で入力するので、幹事は、自由入力の名前からメールアドレスに変換してカレンダー招待を送らなければいけません。

4~5人ならまだしも20~30人となると結構な手間です。

「Calinto」ではグループ作成時に、メンバーにメールアドレス入力をお願いするかどうかを選べる機能を追加し、幹事は入力してもらったメールアドレスと回答状況をもとにGoogleカレンダーの予定作成をワンクリックでできるようにしました。

候補日へのメンバーごとの回答状況画面

「Googleカレンダーで招待」の「⭕️ のみ」をクリックすると、Googleカレンダーの予定作成画面が開き、グループ名がタイトル、候補日が予定日時、ゲストに回答者のメールアドレスがプリセットされた状態になっています。

まずはこの課題に共感してくれた調整さん + 伝助ユーザーの1%が我々のサービスに乗り換えてくれただけでも、MAU10万人ほどが見込めます。

個人開発アプリでMAU10万あればそれだけでかなり成功の部類に入るんじゃないでしょうか。

AI革命の真っ只中になぜベタなWebサービス?

もちろん、サービスのアイディアを出す段階で、生成AI使って何か作れないかという話はあったのですが、やはり半年後、1年後には、また新しいAIが登場して淘汰されるんじゃないかみたいな不安がよぎってくるわけです。

AI関連で何か作ってみるにしても、短期で稼いで短期で撤退するというアプローチになってしまい、スピード感が求められます。

個人開発者としては、常にサービスに張り付いて開発をしているわけではないので、この方法は難しそうだと思いました。実際、僕は週2~4時間ほどしか個人開発に時間を割いていないです。

AIに代替されにくい領域はどこか?

そんな中で長期的にみてもAIに代替されにくい領域ってどこだろうと考えるとに、データの集計系や計算系の使い方は、まだまだ人間に受け入れられづらいだろうと思っています。

例えば、5935 × 3645 = ? という計算をするとき、電卓という今まで使ってきて確実に正しい答えをくれるツールがあるのに、それをわざわざ処理内容がブラックボックスになっているAIに計算させる人は少ないと思います。(まぁ実際は中身でPython実行して計算してるからほとんどのケースであってるんですが)

それと同じで、AIがある程度進化しようとも、こういったWebサービスに勝算があるかも?という期待を持っています。

一方で、AI Agentとか普及してくれば、自分のコンシェルジュ的なAIに対して「チームメンバーに飲み会日程の都合聞いといて。日程決まったらお店も予約してGoogleカレンダーで全員に招待しといて。」とか依頼できるような未来になるのかも・・・

さらに一方で、総務省の調査によると日本人の生成AI個人利用率は2024年7月時点のデータですが、9%にとどまっており、Webアプリを開発する僕らのような業界にいる人間にとっては当たり前のように日常にAIがありますが、多くの人たちにとってAIとの共生はまだまだ先の話になりそうです。


Calintoを開発するまでの経緯について雑多に書いてみました。
Calintoはまだβ版として出していて、まずは初期ユーザーのフィードバックを集めたいと思っているので、試しに使ってアンケートに回答してもらえると助かります。



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