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博学審問 ペレット弾の相性と精度を考える

私は趣味でエアスラッグ弾を探求しておりますが、たまにペレット弾も撃ちます。正直、エアスラッグ弾に比べるとペレット弾のセッティングは寛容でイージーな印象ですが、それ故に微細な違いを気にし出すと、それはそれで奥深いものです。
※本稿におけるペレット弾とは、ディアボロ(鼓)弾、つまり胴にくびれを持ち、ドーム状のノーズ形状をした弾を指しています。

相性の良い弾、って何?

さて、空気銃の話をするときに、この銃は○○のペレットの方が相性が良い、といった話をよく聞きます。またおすすめのペレット弾はなんですか?と言う質問もよくいただきます。そもそもこれは一体どういうことでしょうか。

5.5mm口径を例に解説してみましょう。
例えば一般的な5.5mmPCPエアライフルの場合、メーカー問わずほとんどの銃がJSB社の18gr(グレイン)ペレット、ジャンボヘビーディアボロを標準弾として使用するのが主流で、銃もそれに合わせた精度、出力設定となっています。

一方、FX社製のエアライフルの場合は、自社ブランドの16grペレット、FXプレミアムを基準にセッティングが取られていますが、実際にはJSB18grペレットを使用する人も多いでしょう。
この2つの弾の形状はほとんど同じで重量差も2grであるため、撃ち分けても明確な精度の差や着弾位置のズレは発生しないことがほとんどです。5.5mm標準出力の空気銃であればこの2つがオススメです、これを選んでおけば間違い無いでしょう。

これを少し詳しく説明します。
たとえば5.5mmの一般的な出力=30ft/lbs程度のエアライフルで標準弾を使用した場合の弾速は、概ね270m/s(886fps)程度です。
※そもそも狩猟用エアライフルの弾速は、270m/s(±15m/s程度)が精度が出やすい、また風の影響が少ない弾速域です。

この銃を使い、ペレットの重さだけを変えた場合、5.5mm口径では大体1grあたり3~4m/sほど弾速が変化します。つまり上記JSB18grで270m/sの標準出力であるならば、FX16grに変更すると275~280m/s程度の弾速になります。

ただし、この場合の50mにおけるドロップ差は大きく見積もっても5mmほどで、ベンチレストでしっかり固定して撃ったとしても、明確に違いがわかることはそうないでしょう。

にも関わらず、この2つで撃ち比べた時でも、着弾のズレやグルーピングに大きく差が出る、そうしたケースが稀にあります。
ではこれは一体何が起きているのでしょうか。

セッティングには最適な弾がある

その原因は、同じセッティングで2つを撃ち比べていることにあります。
空気銃のセッティングについて詳しくはこちらの記事をご参考ください。

本来エアライフルは、使用する弾ごとにベストなセッティングが存在し、それに向けて調整をするものですが、調整機能を持たないエアライフルの場合、メーカーが設定した機械的/精度的セッティングの範囲に収まるペレットが、ベストなペレットとなるわけです。

例えば18grペレットで270m/s程度の初速設定のエアライフルであれば、16gr にしたところで最大280m/s程度に弾速が上がるだけで、まず精度に影響はないでしょう。

しかし最近のハイパワーなエアライフルでは、18grペレットを310m/sで飛ばす標準設定、といったモデルもあります。これに16grペレットを使ってしまうと、さらに弾速が上がり音速域に近づいたことでグルーピングが悪化する可能性があります。この場合はたった2grでも全く異なるグルーピング結果が出てもおかしくはありません。

逆に、JSBのヘビーペレットであるジャンボモンスターは同じ5.5mmでも25.4gと重いため、この設定のエアライフルで撃つと恐らく280m/s程度の弾速になります。
これは精度的セッティングの観点では、逆に精度の出る弾速の可能性があります。ただし逆に、重量が極端に異なる場合、機械的セッティングの適正範囲値から外れてしまう可能性もゼロではありません。

つまり、弾の特性そのものより、まずは重量と弾速の関係がその銃で精度の出る範囲のものなのか、ということが重要です。

その上で、メーカーなどによる弾の形状や外径の違い、工作精度などで精度的セッティングの追求余地が生まれます。これらの微細な影響により、重量はそう変わらないのにグルーピングが異なる、ということはあり得る話です。これは相性というより、比べたどちらかの弾がそもそもあまり性能の良くない弾、という可能性の方が高いですが。

ヘビーペレットはまた別のセッティングが必要

重くなるほど内側の空洞は減り、重心が後方に移動する


ペレットの標準弾は、当然ですが口径によって重さが違います。
5.5mmは18gr、6.35mmは25.4gr、7.62mmは44.75grが基準となります。
しかしJSBのラインナップにはヘビーペレットと呼ばれる、1クラス重い弾があります。
これは5.5mm:25.4gr、6.35mm:33gr、7.62mm:50grというように、重さが大きく変化します。

これらのヘビーペレットは重い上に標準ペレットとは大きくプロファイルが異なるため、標準ペレットのセッティングのまま撃っても精度が出ないことがほとんどです。
また最近のハイパワーなエアライフルの中にはこちらのヘビーペレットを標準弾として設定されているものもあります。エアスラッグの使用を念頭に入れたハイエンドモデルにはこうしたものが多くなってきた印象です。

これらのヘビーペレットは標準ペレットとは好む弾速、セッティングが異なることがほとんどです。なぜかというとペレットは複雑な形状をしており、重量を極端に重くしようとすると、形状そのものが標準ペレットとは変わってしまい、また重心バランスも大きく変化するためです。

ペレット弾は胴のくびれで空気抵抗を生み出し、その対価として安定性を得ています。しかし同じ口径で弾を重くしようとすると、くびれを減らして重量を稼ぐ必要が出てきます。
前後の重量バランスも重要です。ペレットはスカート内部が中空で前方に重心があります。この前方重心も安定性に寄与しています。
しかしこれも重量を増やそうとすると、ペレットの内側を埋める必要があり、結果として重心が後方に移動してしまいます。

これらにより、ヘビーペレットは理想的な標準ペレットの形状とは大きく形状が変わり、その特性もまた別のものとなります。

ではヘビーペレットはどういったセッティングが良いのか、というのは私もこれだという結果は出せていませんが、現在までの私の経験値では、標準ペレットより少し高めの弾速で撃つ方が精度が出るように感じています。またバレルのツイストレートもペレット専用の緩いものではなく1:18以下の方が向いていると推察しています。
17.7ツイストで280~300m/sといったイメージです。

特殊形状ペレットはどう?

エアライフルのペレット弾にはこの他にももいろんな形状のものがあります。例えばJSBのペレットで、ハデスと名前のついたノーズに切り欠きを作ることで着弾時に弾が変形しやすく設計した弾があります。
これはあくまで標準ペレットの全体形状のままノーズの部分を加工しているだけなので、基本的にプロファイルは標準ペレットと一緒ですが、重量が少し軽くなります。また前面抵抗が少し大きくなるので、弾道係数が少し低く、〜中距離向けの弾になります。

他にはノーズに銅などのチップをつけて貫通力を増したペレットもあります。これは円錐状に尖ったノーズを持ち、プロファイルそのものが標準ペレットとは大きく異なるため、精度が出るセッティングも大きく異なる可能性があります。そもそもこれらは亜音速帯においては弾道特性的に優れた形状とは言えないため、長距離では精度が出ないと考えた方が良いでしょう。
見た目は尖っていて空気抵抗が少なく良さそうですが、エアライフルのペレットは低い弾速で安定性を得るために、空気抵抗を積極的に利用しています。あまりに空気抵抗の低いデザインは安定性をスポイルする可能性が高くなります。

他にもJSB以外のメーカーからは様々なペレットが出ています。
H&NではバラクーダマッチというJSB標準ペレット同様の形状でわずかに重量を重くした弾があります。
またJSBのペレットも、国内正規輸入されていない弾がいくつかあります。
最近は21gr、23gr、28grなど隙間を埋める重量ラインナップを出してきました。
特に20~23grの重量帯は、5.5mmの新しい可能性として現在じわじわ人気が出てきています。

25.4grの形状は、銃側でどう調整しても乱数的に発生するフライヤーが抑えられない、というのが現在の結論となっているようです。

まとめ

ただつらつら書いたのでまとめるも何もないのですが、エアライフルの相性が良い弾、というのは散弾銃/ライフル銃と既成装弾、という関係性より少し複雑です。

なぜならここまで書いたように空気銃弾全体で見た場合の形状の自由度が高く、その特性も様々であるためです。

また、エアライフルはそもそもパワーが小さく、確実に仕留めるためにパワーを、というのは、初心者であれば誰もが一度は考えることでしょうが、そもそもエアライフルにパワーを求めてもたかが知れています。
それより精度を求めて正確に獲物のバイタルに当たる方が、確実に猟果は上がると私は考えています。

パワーの話はこちらもご参考ください。

いずれにせよ出力の調整が可能なエアライフルであれば、一般的に知られた弾であれば、個別のセッティングを施すことで、近しい精度が出るでしょう。この先の沼に入りたければ、どうぞこちらにおいでください(笑)

というわけで、今回の授業はここまで。

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ではでは。

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