🔰初心者向け🔰鳥猟に最適なナイフの選び方

2024年11月23日 17:37

※本稿では、刃物の扱いに慣れていない初心者に向けて解説しています。

趣味のハンティングでは、基本的に獲った獲物は自分で捌いて精肉することになります。
そんな時、元々アウトドアの趣味に長けている、料理人の仕事をしている、今まで人間社会と隔絶した山中で暮らしてきた、そういった方以外は、獲物を解体する刃物（ナイフ）選びに迷うことでしょう。

刃物にはそれぞれ目的と用途があります。（ナイフショーなどで見るロマン枠以外）その意識が曖昧だと、最適なナイフも決まりません。
今回は鳥の解体に目的を絞った場合、どんなナイフを使うのが最適なのか、ということを考えてみたいと思います。

ナイフの目的と用途を考える

そもそもナイフにはどんな使い方があるでしょうか。
ナイフに求められる機能とは、切る、削る、割る、穿つ　の4つです。
このうち鳥の解体に必要なのは、切る　が８割、そして残り2割が割る/穿つ、といったところでしょう。

切る、という目的だけを考えた場合、刃厚が薄いほど切れ味が上がります。
包丁やカッターナイフを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
切れ味が良ければ、柔らかい肉を潰さずに綺麗に切り分けることができます。

もうひとつの割る/穿つは、獲物を解体する際、関節を外す、骨の隙間に刺して切り離す、といった用途で活躍します。
この場合、刃厚が薄い分には隙間に刃を差し込みやすくなりますが、強度がないとこじるような使い方ができず、また切れ味が良すぎると骨の間を滑らせたいのに刃が骨に食い込んでしまう、といった使いづらさがあったり刃先へのダメージも心配になります。

さらに言うと鳥の解体には、骨に刃を滑らせて肉を剥がす、といった用途も重要です。これは割るに近い用途ですが、刃の切れ味が良すぎるとコントロールがとても難しくなります。

ナイフの評価や価値として、切れ味を過剰に賛美する傾向がありますが、私は刃物の本質はそうでないと思ってます。
切れ味だけなら包丁、メス、カッターナイフなどで良いでしょう。
切りたい時に切れて、切りたく無い時は切らない、そうしたコントロール性の高いナイフが本当に良いナイフだと私は考えています。
つまりナイフは手指の延長の道具なのです。

というところで、ここから一気に端折ります（笑）
刃物を選ぶ際に必要な知識は、私がライターを務めるカシオ計算機の野遊びHOW TOサイト、WILD MIND GO!GO!に記事を寄稿しております。
まずはこちらをしっかりお読みください。↓↓

鳥の解体にはどんなナイフが理想か？

さて、鳥の解体にはあまり大きな力は要しません。そのため四つ足の解体のような強度は必要なく、家庭包丁でも処理は可能です。ただし、より簡単により綺麗に処理をしようと思ったら、専用の刃物を使う方が良いでしょう。

ブレードサイズは大きいほど一度のストロークで肉を切れる範囲が広がりますが、その分細かいコントロールが効かなくなります。また初心者では怪我のリスクも増すでしょう。
鳥用に考えるならば刃長は10cm以下を目安にしましょう。

刃厚は基本的に薄い方が切れ味が上がります。肉を断つ、という目的では薄い方が有利です。一方、薄いほど剛性が下がり、こじるような使い方には不向きになります。

刃高は広いほど剛性が上がります。また、例えば同じ刃厚で、刃高が広いものと狭いものを比べると、広いものの方がグラインドが鋭角になり、切れ味も増します。（同じストレートグラインドで比較した場合）
一方、刃高があると、手首を返して骨を滑らせるような使い方をしたときに、ブレードバックが骨に当たって、うまく追従できないことがあります。
刃高があるものは、大きな獲物を解体する用途だと考えて良いでしょう。

ブレード形状はカーブの大きいものほど大きく滑らせて切ることができます。スキナーナイフなどが良い例です。鳥の解体ではそこまでカーブの大きいものは必要ありません。

これらを理解した上で、どんな刃物が良いのか、これは正直、使用する人間の技術によっても変わります。また処理自体をどこでやるのか、時間をかけられるのかといったことも影響するでしょう。

いずれにせよ、まず1番の用途である肉を切る、という行為は切れ味が重要視されます。
逆に刃を骨に滑らせて身を剥がす用途では、刃厚があって、あまり鋭利でないグラインドのナイフがコントロールに寛容で楽です。関節を外すといった用途も同様です。

さて、刃物は扱う人の技術によって綺麗に切れたり、上手に切れなかったりします。それに対して刃物がどう補うか、これは日本と西洋で考え方に違いがあります。

それがフィレナイフと片出刃包丁の違いです。

フィレナイフと片出刃包丁

フィレナイフとは

フィレナイフというのはフィレ＝肉を切るための西洋料理包丁のカテゴリーです。
その特徴は先述の切れ味と骨を滑らせ身を剥がす、という2つの用途を両立させるため、刃高が低く刃厚の薄いブレードにすることでブレードそのものをしならせ、切れ味の鋭い刃先が骨に食い込まないように設計されていることです。これによりシビアなコントロールをせずとも、ブレードは勝手に骨に沿って動いてくれます。
一方、フィレナイフは肉を切ることに特化しているため、例えば魚の頭を落とすといった用途には不向きです。（下記トラウト＆バードでも無理はできませんが）
また、基本的にそこそこのサイズの肉、魚を一度に引き切ることを想定しているため、フィレナイフの刃長は15〜20cmほどのものが多く、狩猟鳥の解体には大きすぎるものがほとんどです。

トラウト＆バード

西洋では時として魚と鳥を捌くのは同じ用途として考えられ、トラウト＆バードというナイフカテゴリーが存在します。フィレナイフとの違いは、形状は似ていますが刃厚がより厚く剛性があるため、しなりがなく関節を断つといった用途にも使用できる、つまり解体から精肉まで1本で済ますためのバランス型のナイフです。
刃長も短いので、手数を増やしても丁寧に処理したい場合にも向いてるでしょう。
刃高が狭いと、手首を返して刃先で弧を描くような動作がやりやすくなります。バード、と名前がついているのはちゃんと理由があるのです。

片出刃包丁

さて日本においては、また違う考え方の鳥や魚用の刃物が存在します。
それが出刃包丁です。
出刃包丁は、厚みのある刃を片刃にすることで、切れ味と滑りを両立させています。（その代わりに切る方向、利き手の制限が生まれます）
またプロが使う鳥の解体用の包丁として骨すき包丁がありますがこれも片刃の包丁です。
いずれにせよ刃高があり剛性があるため、関節を断つような用途でも使用ができます。

この和式の包丁は、フィレナイフに比べると使用者の技術を必要とします。
例えば魚を三枚おろしにする場合、フィレナイフであれば刃を骨に当てて、ある程度力を変えて手前に引けば、しなりを利用して勝手に骨に沿って身が剥がれます。一方、片刃の包丁は、フィレにように横に引き切るのではなく、刃を押すようにして扱うため、切先の感覚に注意していないと、骨に身を残してしまいます。

そのほかの西洋ナイフ

このフィレと出刃の特性がわかると、他の西洋ナイフも大体どんな使い方なのかが見えてきます。バードナイフとして売られているものは刃高は低いですが、刃長が短く刃厚があります。先述のトラウト＆バードはフィレとバードの中間のイメージです。
その他、一般的なドロップポイントのナイフは、刃厚があり出刃包丁のように骨を滑らせて切るのに向いています。ただし両刃の場合は切れ味が少し劣ります。ストレートグラインドの薄いものはそれらの中間で、骨を滑らせて切るような用途では少し気を使うでしょう。
また刃高があるナイフは先述のように骨を滑らせる際に小さいカーブを追従できません。

初心者におすすめの鳥用ナイフ

これは昔からよくいただく質問なのですが、ここまで書いたように使用者の技術や目的により最適なものが変わるため、いまいち自信を持った答えにたどり着いていませんでした。
また、ナイフのジャンルとしても大きくないため、ちょうど良い西洋ナイフがなかなかないのも理由の一つです。
しかしある時このフィレナイフと出刃包丁のことを考えていたときに気付いたのです。あれ、これって釣り用のナイフ探した方が良くない？と。
そうとわかれば釣り大国日本ですから、話は簡単です（笑）

というわけで早速、解説付きでフィッシングナイフを中心とした商品を紹介していきます。

ラパラ　4インチフィレナイフ

世界のルアー（擬似餌）の金字塔、フィンランドのラパラが販売する小型のフィレナイフです。
まず、価格が3千円程度でシャープナー付きというコストパフォーマンス。
そして、フィレナイフというと大体刃長さが15cmくらいになってしまい鳥専用としては長すぎるという難点がありますが、これはなんと10cm。ありそうでない、良い長さです。私も実際、1シーズン40羽ほどに使用しましたが、とても楽に解体ができました。ブレードは薄いステンレスで鋼材は値段なりでしょうが、薄いため切れ味は全く問題ありません。
ただし、これはフィレナイフであるため、割る/穿つ、という用途には不向きの肉処理用です。

シマノ　シースナイフ　ロング

世界に誇る日本の釣具大手、シマノのフィッシングナイフです。
刃長９cmと初心者にも使いやすい長さです。このナイフは魚の首や頭に突き刺す（穿つ）用途を想定しているので剛性があり、鳥の解体でも全用途で使えます。
ブレードのカーブが小さいため、切先でチョコチョコと手数を増やして切る形になるでしょうが、その分失敗もしにくいと思います。
一方、ブレードが細くカーブが無いので、まな板の上で肉をトリミングするような使い方はやや不向きです。

フィッシングナイフなので丸洗いしやすい樹脂シースがついてくるのはありがたいですね。

気になる点は、グリップが大柄でフィンガーグルーブがはっきりしているため、握り方が限定される点ですかね。

シマノ　シースナイフ　小出刃

引き続きシマノのフィッシングナイフです。これは和式の出刃形状ですが、刃は両刃となっており、セイバーグラインドないしはスカンジグラインドになっていますので、扱いはむしろ西洋ナイフに近いでしょう。こちらもカーブが小さく、扱いには多少慣れが必要でしょうが、慣れてしまえば万能なナイフとなるでしょう。ブレードのフラット面が大きいため、解体後にまな板で肉のトリミングをするならば抜群の使いやすさでしょう。包丁の扱いに慣れている人にはとてもおすすめです。

ダイワ　シースナイフ90D +F(出刃）

世界最大の釣具メーカー、ダイワのフィッシングナイフです。
こちらも両出刃で、西洋ナイフ的な扱いです。グリップ形状は握りを選ばない樽形ですが、ちょっと太すぎる気もしないでもない。
でもやっすい。
基本的にはシマノの出刃と同じに考えて良いでしょう。シマノのナイフ同様、スピアーポイントのモデルもあります。

がまかつ　フィッシングナイフ　G1918

釣り人なら誰もが知る、釣具界の裏番長、がまかつのフィッシングナイフです。【がまかつの商品は無条件で信頼して良い】我が家に代々伝わる教えです（笑）
形状はセイバー系のストレートグラインド。刃長75mmは足るを知る絶妙なコンパクトさ。コスパ系ナイフには珍しいウッドハンドルに、樹脂シースの組み合わせ。慣れてきたらこのサイズ感のナイフは別に一本あると便利ですね。
恐らく和式の刺身包丁をイメージした造りなんでしょうが、絶妙に西洋バードナイフ的な仕上がりになっています。
非常に渋い商品を出します、さすががまかつ。
ワタシ、ワカル。コレ、ゼッタイ、イイ。

モーラ　フィッシングスケーラー　098

みんな大好きモーラナイフのコンパニオンシリーズのフィッシングナイフです。
細身のブレードに刃厚2mmのスカンジグラインド。背面には鱗取り（スケーラー）がついています。狭い刃高と僅かにしなるブレードが絶妙なコントロール性です。モーラらしいフィッシングナイフへのアプローチですが、結果として↑がまかつのナイフと似た造りになっていますね。面白いですねー。
用途のバランスと作業効率で言えばダントツではないでしょうか。
※実際に人柱として購入してみました。この薄さでしっかりスカンジ形状になっており、切れ味も抜群です。これは良い買い物です（笑）

フィッシングスケーラー。ちなみにモーラはフィレ専用ナイフも出してるのですが、刃長が長すぎるので紹介しません。

BRISA　ネッカー70

最後はフィッシングナイフではなく、フィンランドの大手ナイフ製造会社、BRISAのEDCナイフです。
本格ナイフとしてはお値段控えめですが、非常に良くできています。
鋼材は使いやすく研ぎやすい12C27。硬度のある『ちゃんとした12C27』です。刃長70mmと非常にコンパクトですが、このサイズでも十分鳥は捌けるとわからせてくれる一品です。
ハンドルはグルーブのないユーティリティタイプなので、ペングリップなどで細かい作業をするのにも最適です。
というか私は基本的にコンパクトナイフが好きなので、この長さが一番好きです。たまにこれで捌いたりしてます。

以上となります。
今回はフォールディングナイフは含めませんでした。
サイズ、形状的には鳥の解体にちょうど良いものは多いのですが、
構造が複雑で、隙間に地肉が入り込んで毎回洗うのが大変なためです。

解体に慣れてくれば、各々ナイフの好みも出てくると思います。
また、なにも1本のナイフで全てをこなす必要もありません。

結果は重要ですが、その過程も大切です。このナイフの方が気持ちが良いとか、楽ちんだとか。最終的には自分のお気に入りを使うのが一番です。

ただしそれらは自分が経験を積まないことには答えも出てきません。まずは手軽で間違い無いナイフから始めて、自分なりの刃物哲学を研いでいきましょう。

なんか上手い言い回しができたので、今日はここまで（笑）
ではでは。

最後にスキ！ボタンを押していただけると幸いです♪

🔰初心者向け🔰鳥猟に最適なナイフの選び方

ナイフの目的と用途を考える

鳥の解体にはどんなナイフが理想か？

フィレナイフと片出刃包丁

フィレナイフとは

トラウト＆バード

片出刃包丁

そのほかの西洋ナイフ

初心者におすすめの鳥用ナイフ

ラパラ 4インチフィレナイフ

シマノ シースナイフ ロング

シマノ シースナイフ 小出刃

ダイワ シースナイフ90D +F(出刃）

がまかつ フィッシングナイフ G1918

モーラ フィッシングスケーラー 098

BRISA ネッカー70

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