【考察】ALTAROS M24はロマン枠なのか、問題。
前回書いた記事はこんな内容でした↓
さて早速ですが、最近FX Aitgunsが発表したDRS、TJOが発売するSP-M30Bともうひとつ、シュラウドエアチューブを採用するエアライフルといえばこれがありますので、紹介したいと思います。
それはALTAROS M24です。
M24はDRSやM30Bと同じくバレルシュラウドをエアチューブとして利用するエアライフルですが、有名な装薬スナイパーライフル、M24の外観をそのまま模してPCPエアライフルです。
実際に使用されるストックはM24をベースにしたものだそうです。
まずその前に、ALTAROSとは何者?という話ですが、アルタロスはチェコのエアライフルパーツメーカーで、特にレギュレーターにおいては造詣が深く、15年ほど前から、さまざまなメーカーの純正レギュレーターやアフターパーツとしてのレギュレーターを手がけています。今までスプリングの作動に大気解放を必要としていたレギュレーターを密閉型で初めて量産化したのもアルタロスの設計だと言われています。
また最近ではf-rangeでも取り扱うATPスラッグという、1発ずつ回転切削加工して作られたラウンドノーズボートテール弾という超変態的なプレジションスラッグを安価な価格で提供し始めたことでも有名です。
この弾は今までのホローポイントフラットベースのエアスラッグに比べてBC値が倍以上というロングレンジ弾で、現在SBが主流だったNRLなどの競技大会で旋風を巻き起こしています。
その勢いは競合他社も巻き込み、各メーカーが似たような弾を発表し、追従の兆しを見せていますが、現在のところ他社はスエージング製造であり、恐らく価格以外で回転切削のATPスラッグに追いつくのは至難の技ではないかと思います。
そんなチェコのこだわりメーカー、アルタロスがロングレンジシューティングを目的に作ったPCPエアライフルがこのM24です。
ALTAROS M24の外観、本国スペック
ALTAROS M24 (2024)
・全長:111cm(バット含む)
・重量:3.75kg
・バレル長:Lothar Walther製 600mm(ツイストレート 1:17.0)
・エアタンク容量:120cc
・充填最大圧力:300bar
・マガジン容量:5発
・他:0~100MOA調整式傾斜トップレール(ピカティニー)/外部調整レギュレーター/残圧/レギュレーターメーター
まず、外観的特徴から。
バレルは600mmノンチョークのLW銃身で全長は111cm、これはライフルタイプの形状なら特別長くはないでしょう。バレル厚は見当たりませんでしたが、総重量から察するにそれなりの厚みを稼いでいると思われます。
重量は3.75kgと、ライフルタイプ、特に同様のシュラウドエアチューブを採用するモデルとしてはかなり重めです。
ストック下には残圧/REG圧メーターが隠され、レギュレーターは外部調整可能となっております。
またロングレンジを謳うだけあって、トップレールが0~100MOA調整可能な傾斜レールとなっております。
さてこのM24を使いたいと思った時の、一番の問題はタンク容量でしょう。何せ120ccしかありません。
これはなぜかというと、本来のM24の外観を忠実に模したためです。つまりM24のバレル径=ストックのスペースに収まるようにこの容量となっています。
またこのエアライフルの本来の目的は精密射撃用であり、発射数は重要視されていません。
マガジンも元から5発仕様となっておりますが、ベースはシングルショットのエアライフルです。
タンク容量以外にも調べていくといくつか気になる点があります。
そのひとつはストックです。
M700系のストックとの互換性問題
M24/M700ストックと互換性がある、という触れ込みで評判になっていましたが、これは日本人の感覚の【ボルトオン】かというと正直、少々怪しいと思います。
これはシングルショットのM24ですが、前方にレギュレーターチューブとメーターが飛び出ており、ストック前方下部に長方形の穴が設けられています。私は装薬ライフルに詳しくないので、ちょっと調べた程度なのですが、装薬ライフルのM24≒M700系のストックにこれが収まるスペースがあるようには思えません。(詳しい方いましたらぜひお知らせください)
少なくとも流用するならある程度の加工が必要なのでは?というのが私の見解です。
余談ですが、私は昔、米国から大型バイクのフルカウルを取り寄せたことがあり、それも【ボルトオン】を売りにしていましたが(ネットでは装着後の画像のみ)、いざ手元に届いたら、固定ボルトの穴はおろか、ウインカーやライトを収める穴すら空いてませんでした。そうです。穴を開けるのは加工ではないのです(笑)
これが世界常識のボルトオン、です(笑)
と、冗談はさておき、もし加工が必要ならばシンセやウッドはなんとかなりそうですが、アルミシャーシなどは結構大変そうですね。穴を開けた場合の強度も気になるところです。
もしこのM24を入手して市場に溢れるM700系ストックに載せ替えたいと考えているのでしたら、装着が可能なのか今一度確認が必要でしょう。
さて、次に気になったのがこちら。
弾の装填とマガジン問題
分かるでしょうか。前側のスコープリングの横に斜めに刺さっているのがマガジンです。一般的な回転式ではなく、カセットに横に並べて詰められた弾が下から引き出されていく構造です。
でこの映像はボルトを引いた瞬間なのですが、マガジンから弾が引っ掻き出されてるように見えます。
この弾はレールに乗っており、その後ボルトを押し込むと、バレル後端(画像では弾のちょうど下あたり)に挿入されます。
エアフォースコンドルなどの構造に近いイメージです。(伝わる人いるかこれw)
でこれが何が問題かというと、恐らく、水平に近い状態でないと、コッキング時に弾が落ちる、もしくはジャムる可能性がありそうだということです。
このM24は元はシングルショットのエアライフルで、後からこのマガジン機構を足しているためこのようにせざるを得ないのだと思います。
ですので、これをもし狩猟に使うつもりなら、基本はシングルショットの運用で考えた方が良いでしょう。(それでも一度水平にしてから装填する必要はありそうですが)
出力特性と使い勝手問題
さて最後に注意したいのが先のエアチューブ容量とも関係のある、出力特性について。ここが実用かロマン枠かの分かれ目です。
ありがたいことに世界のチューニングレギュレーターの雄、ALTAROSではファクトリーセッティングとチューニングセッティングを公表していますので見てみましょう。
出力スペック(5.5mm)
●80bar = 30ft/lbs 52 ショット 270 m/s / 885 fps(JSB ジャンボヘビー 18,1gr 使用)
●180bar = 63ft/lbs 10ショット 257 m/s / 843 fps(ATP King 40gr使用)
●210bar = 71ft/lbs 7ショット 271 m/s / 889 fps(ATP King 40gr使用)
●250bar = 79ft/lbs 5ショット 286 m/s / 938 fps(ATP King 40gr使用)
※工場出荷設定:63ft/lbs(Reg180bar)
まずこのスペックを見て安心するのは、5.5mmで一般的な
18grペレットの発射可能数(SPF)が53ショットとそれなりにあることです。
レギュレーター圧も80barとかなり低く、SPFに貢献しています。
これはなぜかというとM24の独特なプレナム/バルブ構造が要因でしょう。
さっきの写真の続きに戻りますが、こちらをご覧ください。
これがナンジャと言うと、銀色のボルトチューブが全てプレナムを兼ねています。
で右側のバレル下の小さなチューブはレギュレータースペースで、この2点を耐圧チューブで繋いで、ボルトプレナムが前後に動かせるようになっています。
また調べた限りでは詳しく見つかりませんでしたが、空気を放出されるバルブはこのボルトプレナムの方についているようです。
これにより、大容量のプレナムの空気を、余計なバイパスを介さずバレルの後端から直接放出できるため、高燃費を実現できているのだと思われます。
この辺りもエアフォースコンドルのような思想を感じますね。
で話を戻して、ファクトリーのセッティングはATPキング弾40grを843fpsで飛ばす設定になっています。その場合のSPFは10shot。
10shotと聞いて、狩猟ではそんな撃たないからそれで良いと、お思いかもしれませんが、このSPFで大事な要素の一つに最大圧力があります。
そう、このM24の場合、最大充填圧力は300barで、そこから10発なのです。
120ccだからハンドポンプでいけるでしょ、と思う方もいらっしゃるかと思いますが、いや…かなり厳しいと思います。
(私は実験で500ccカーボンボトルを0→290barまでハンドポンプで充填したことがあります)
120ccの場合は容量が少ない分、時間はかからないと思いますが…
次にエアボンベでの運用。これも満足に使えないでしょう。
なぜかというと満充填の300barタンクからエアライフルに空気を移しても決して300barにはならないからです。
理由の一つは、300bar→それ以下の容器に移す時点で必ずそれ以下の圧力になること、もう一つは一般的にショップでのエア充填は300barタンクであっても、温度変化による圧力差の安全性を取って、300まで入れてもらえないからです。
そうなると、このヘビースラッグ仕様でのM24のエア充填はコンプレッサー頼りになると思います。
それであれば、10発しか撃てなくても良いよ、という方でも十分に使える可能性があります。120ccなので充填スピードもかなり早いでしょう。
ただし射撃場で数撃って遊ぶときはどうするか、という問題はあります。射撃場では数発ごとに300barまで上げずにハンドポンプで充填、と言うのが現実的な手段でしょうか。
ちなみにエアスラッグを843fpsというのはペレットの標準弾速より遅い設定です。BC値の高いATPスラッグがこの速度でもまとまることは私も試射して確認していますが、この弾速域だと、エアスラッグを使うメリットの一つである直射性の高さは享受できません。
よくある間違いなのですが、エアスラッグが直射性が高いというのは、BC値が高いからではなく、弾速が速い場合、の話です。
ですので低弾速のエアスラッグは、ロングレンジシューティングには問題ないと思いますが、ハンティングに有利かというとドロップが大きくなんとも言えません。
また40grはかなりの重量で、ATP Kingは高BCのプレジション弾ですから、安易に狩猟に使うのは考えものです。ラウンドノーズではないので潰れませんし、跳弾などのリスクも高くなります。狩猟にはお勧めできません。
ただし、私が計算してみたところ、おそらくこのファクトリーセッティングのままZANスラッグの30gr~33gr程度を撃てば、950~970fps程度のほぼ良いセッティングになると思われます。それであれば直射性の恩恵もありますし、弾も潰れやすく、狩猟用途もアリなのではないでしょうか。だからといってSPFは増えませんが…
そういえば精度のことをすっかり書き忘れましたが、海外のレビューやアルタロスの中の人の話を聞く限りは間違いなく良いと思います。
そこは安心して良いでしょう。詳しくはYouTubeなどで調べてみてください。
ちなみに1マイルチャレンジなどでM24が登場しますが、あれはどちらかというとATPスラッグの恩恵の方が大きいと思います。そこまで飛ばすともう自由落下みたいなもんですしね(笑)
もちろんM24がちゃんとしているから出せる記録でしょうけど…
射撃音問題
DRSの記事などもご覧いただいた方は察しがついていると思いますが、シュラウド部分がタンクになってますので射撃音は結構大きめです。
この動画はとてもわかりやすいですのでぜひご覧ください。
結局エアライフルの射撃音は、エアの吐出量と弾速です。弾速が高いほどうるさくなります。
ATPスラッグは低めの弾速でも精度が出るので、その場合の音量はそこまででもない可能性はありますが、
一般的な高弾速のエアスラッグチューンの場合、ある程度の覚悟が必要でしょう。
と、最後に長々書いてしまいましたが急に結論です(笑)
Q:M24って結局どうなの?
①18gr(程度)ペレット仕様にセッティングを変更する(できる)なら狩猟もOK、多少の不便はあっても普通のPCPとして使えるでしょう。
②ファクトリーセッティングの40gr重量弾(もしくはZAN30gr程度)を使用するなら、コンプレッサーは必須。標的射撃のみがオススメです。狩猟(特に鳥)は弾の選定とエア充填問題を解決しましょう。
③これらの目的で使用する限りは十分に高スペックなPCPエアライフル、これ以外の使い方はロマン枠です。
これら以外の使い方として、例えば5.5mmエアスラッグで狩猟用に最適な20~25gr程度の弾でセッティングを出す、という方法もあります。
25.4grのジャンボモンスターペレットでも良いですね。
恐らくその場合のSPFは20発程度は稼げるでしょう。
ただしこれらのデータはアルタロスでは公表していないため、自身でセッティングを出す必要が出てくるでしょう。
なんにせよM24は外観/コンパクトさとハイパワーを両立させるためにshot数を犠牲にしてます。この辺りを自身の使用目的と照らし合わせて、検討していただければと思います。
現在、このアルタロスM24はガンショップ栄興さんで受注予約をとられています。実物を見るのが楽しみですね♪
今回はたくさん書いたので以上となります。
(ちなみに僕は標的用にめっちゃ欲しいです)
高圧ガス保安法を守ろう
最後にちょっとコラムです。ぜひ読んでってください。
このM24の海外動画を見ると、エアタンクを銃に繋げたまま射撃をしているシーンをよく見かけます(というかこの容量ではそれが当たり前)
国内射撃場においても、たまにそのような使用をされている方を見かけますが、これは違法性が疑われる行為ですので、やめましょう。
射撃場はどこも監視カメラで録画しており、定期的に警察の巡回でチェックされています。特に長野の事件が起きてからというもの、今までの形式的な確認ではなく、しっかり内容を見られるようになった、と某射撃場さんからもお聞きしました。
そもそも、我々が高圧ガスを扱うには本来資格が必要なのですが、
空気銃所持者(事業者)は特例として、高圧ガス保安法の規制から一部を除外されています。(適用除外)
その除外内容は、
・不活性ガス又は空気が充填される空気銃又は準空気銃で、高圧ガス部分の内容積が500ml以下のもの
・これらの空気銃、準空気銃に不活性ガス又は空気を充填する設備
とされています。
わかりやすく書き直すと、
●空気銃に備わるガス容量は空気銃につき500cc以内ならOK
●空気銃に空気を直接充填する行為はOK
●空気銃に充填する道具には制限なし(コンプレッサーもOK)
のみが許されているということです。
※念の為注釈を入れておきますが、この法的解釈は私が担当省庁にきちんと確認した上での情報です。
そのため、先のエアライフルへのタンク直刺し射撃は、充填行為ではなく空気銃のガス容器として判断される可能性は高いでしょう。
他にも例えば、最近のエアライフルにはチューニング、整備用にボトルにバルブが付いて、高圧状態のまま取り外しができるものがありますが、これを充填用ボトルとして別に所持、使用する行為は容量に関わらず違法となります。(空気銃の一部ではないため)
また充填自体も、空気銃に直接充填する行為のみが許されています。
他のガス容器への充填は容量に関わらず資格を有していなければ違法です。
また最近は海外から5L程度の大容量カーボンタンクを輸入して個人使用する方がいますすが、国内ガス法の検査を通したものは灰色に着色することが義務付けられていますので、射撃場などで使用すると、遠くから見ても1発で違法とわかります。
見たくなくても見えるので、勘弁してください(笑)
もちろんこうしたタンクはもちろんショップでは充填してもらえませんので、個人でコンプレッサーを使用し行っているのだと思いますが…こうした行為が『露見される事例』が増えてくれば、いつか空気銃への充填にコンプレッサーを使用することが禁止になる可能性十分にあり得ます。
ちなみに高圧ガス保安法は可燃性ガスの危険性もありますので、
罰則がかなり重いです。
罰金も高いですし、実刑の可能性もあります。
絶対にやめましょうね。
と、今回はたくさん書いたのでここまで。
ではでは。
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