エアスラッグ 博学審問⑩ 2024年はエアスラッグガンが続々登場!!
今猟期も安全に無事終えることができ、その振り返りもしたいところですが、このところ新しいエアライフルの発表が各社ありましたので、先にそれらについて書いてみたいと思います。
日本でも少しずつ増えてきたエアスラッグ弾の運用ですが、
ペレットとは大きく異なる飛翔体であるため、今まではエアスラッグ弾で精度を出すには少なからずのセッティング調整が必要でした。
そのような中、昨年2023年には国内初のエアスラッグ専用エアライフル、AGN VULCAN3が発売となりました。
これは私の経験値を元に、輸入後に組み直しを行い専用セッティングを施し、射撃場で試射確認をし、弾痕証明を付けたエアライフルです。
エアスラッグやエアスラッグガンについては本noteの過去記事をご参照ください。
そんなエアスラッグガンですが、
昨年末くらいからファクトリーセッティングでエアスラッグ専用を謳うエアライフルが各社発表、発売され始めましたので、本稿にてまとめてみたいと思います。
①FX パンテーラ/ダイナミック
トウキョウジュウホウさん取り扱いのFX Airgunsの最新モデルがパンテーラ/ダイナミックです。この2モデルはストック周りのパーツが違うだけの兄弟機ですので、まとめています。
パンテーラについては発表時に過去記事を書いてますのでこちらもご参照ください。
特徴としては、まずバレルシュラウド内蔵のプレナム(2次気室)を備えていることで、これは他にはない独特な構造です。
(それにより、今までのFXのモデルより発射音が大きめになっています)
またレギュレーター、ハンマースプリングは外部調整式で、レギュレーターの調整にプレナムの空気を抜く必要がない、というのも便利です。(一般的な外部調整レギュレーターは減圧時にはエアを一度抜く必要がある)
ハンマースプリングは無段階ネジではなく、ダイヤル式でセッティング確認が容易です。
このモデルにはバレル長違いで500/600/700というバリエーションがあり、
600/700はエアスラッグ専用、500はペレット+軽量エアスラッグチューンとなっています。
エアスラッグだけを撃つなら600か700を…と言いたいところですが、
基本的に全てハイパワーモデルですので国内で狩猟にも使う、というレベルなら500でもいいんじゃない?とも思います。
参考までに海外の箱出しのセッティングは600の5.5mmで、28~30gr、6.35mmで30~34grのエアスラッグを撃つようなかなりハイパワーな出力設定のようです。
700はさらにハイパワー設定だそうですので、自分でセッティングをしない、できないという場合は、こちらは選ばない方が無難だと思います。
また500は600と同じ出力設定だそうで、じゃあ何が違うかというとバレルが短い分、レギュレーター圧が少し高めになっているようです。
トウキョウジュウホウ取り扱いのものがどのようなセッティングになっているかは分かりません。
どのモデルにしろ出力調整はできますが、きちんとセッティング理論を理解していないと精度は出ませんし、箱出しでも何かしらの微調整が必要だと思いますので、そうした遊びに手を出したいエンスー向けのモデルと言えるでしょう。
重量や長さはモデルによって違うのでここでは書ききれませんが、ブルパップモデルに比べるとかなり長くなるので、要注意です。
②Kalibrgun クリケット2 タクティカル-700
先日、ガンショップ栄興さんから発売されたチェコの古参メーカー、Kalibrgunのクリケット2TCのロングバレルモデルです。取り扱いは5.5mmだけのようです。
今まで販売していた600mmバレルモデルからの主な変更点は、700mmノンチョークバレル、20MOA傾斜レール、ウッドストック、です。
基本的な作りはバルカン3によく似ていますが、バルカンがCZノンチョークポリゴナルバレルなのに対し、クリケットはCZノンチョーク12条700mmバレルとなります。ツイストレートは17.7でエアスラッグ用として一般的なものです。
※エアスラッグ用バレルは現在はポリゴナルバレルを採用するメーカーの方が多いですね。FXの自社バレルも形状としてはポリゴナルの一種です。理由としてはポリバレルの方が抜弾抵抗を低くできて、燃費やパワーが稼げるからというのが大きいようです。
ただ海外では伝統的な12条ライフリングを好むシューターは多く、このあたりはどちらに良し悪しが、というものではないでしょう。
個人的感覚としてペレットのグルーピングは12条ライフリングの方が良い印象がありますが、FXはそもそもポリバレルだし、実際どちらが良いというものではないのかもしれません。
ちなみにチェコの銃は質実剛健な作りが売りで、特にカリバーガンは頑丈さに振っている印象です。その分、ほぼ同スペック、構造のバルカン3に比べると少し重量が重く4kg弱となります。ただし全長は928mmですので取り回しは良いでしょう。
個人的には600の独立グリップよりこっちの方が好みです。
またクリケットを語る上であまり触れられない点ですが、コッキングインジケーターが付いているのは安全運用の面で安心ですね。とても良いと思います。
プレナム容量は53ccとなっていますので、恐らくレギュレーター圧は130~135barくらいかな?プレナムの大きいバルカンより少し高めだと思います。クリケットやバルカンは内蔵型レギュレーターで、外部調整はハンマースプリングのみとなりますので、基本的には、セッティング調整はしないものとして考えていた方が良いでしょう。
③RTI Arms プロフェットシリーズ
あくあぐり〜んさんが取り扱うRTI Airmsはスロベニアの新興メーカーです。ただし世界の評判は高く、米国の大きな射撃大会で単身出場、優勝したことでも有名です。
小さなメーカーであるためバリエーションはなく、このプロフェットをこまめに進化させて、今はGen3モデル、P-3という名前で販売しています。最初のモデルから現在のモデルに至るまで、エアスラッグ仕様に変化しています。
特徴は、フレームレスのモジュラー構造で、機能部品のみで構成されている点です。
またこれにより、グリップー銃身のハイトがとても低く、挙銃時の安定性が抜群に良いのもポイントです。ここまでバレルハイトが低い他のエアライフルはAGNウラガンが次いで挙げられるくらいです。
P-3には20~150MOA間で調整可能なレールが付いてるのも面白いですね。
バレルはオリジナルの600 mmバレルでエアスラッグ用のスローチョークになって…いたはずです。
レギュレーター、ハンマースプリングの外部調整が可能ですので、セッティングを弄りたい、という人にも向いています。
全長83.5cm、重量3.3kgもかなり軽量な部類と言えるでしょう。
ただし、重量が軽いのは基本的には良いことですが、光学機に大きくて重いものを載せるとふらつきを感じやすくなるので注意しましょう。
なんでもバランスが大事です…
④AGN バルカン3-700
これは過去に何本も記事を書いていますので今更ですが、基本的には上記クリケットに近いスペックです。
クリケットとの違いのひとつはバレルで、こちらはCZノンチョークポリゴナルバレルです。また販売モデルはデュアルエアポートになっています。
プレナム容量は150ccほどと、パンテーラの700と比べても遜色ない大容量で、とにかく燃費が良いです。
国内仕様はZAN 25.5grスラッグを950fps程度で飛ばすセッティングですが、それでもレギュレーター圧はわずか120barほどです。300barの満充填から100発程度は撃てるでしょう。
重量は3.5kgほどとクリケットより少し軽く、全長は970mmと少し長めになります。
AGNの他にはない利点としては、マガジンの作りです。オープンタイプのカセットマガジンであるため、弾のセット、マガジンの脱着が非常に簡単です。これは猟場での使用にとても有利になります。
最後にこのバルカン3は国内輸入後に全て分解し、パーツの研磨などを行い組み直し、射場で1丁ずつ調整し弾痕証明をつけて販売している、スペシャルチューンドモデルとなります。
⑤ AMA KRiT-X
これは今年f-rangeで扱うAirMaks Aigunsというチェコのエアライフルになります。
チェコのエアライフルが質実剛健な作りなのは先に書きましたが、AMAはそこに新しい機能や発想を盛り込んだ、面白いエアライフルを作ります。
今までのチェコエアガンとFXを足して2で割った感じですw
他のモデルはまた別の機会に書くとして、まずこのクレイトXはバルカンと同じCZノンチョークポリゴナル700mmバレルです。
ポートもデュアルポートになっています。
このクレイトはチェコガンには珍しくレギュレーター、ハンマースプリングが外部調整可能です。
出力について市販仕様がどうなるかはもう少し検証が必要ですが現状箱出しでコンスタントに15mm以下/5shot/50mのグルーピングは出ています。
プレナム容量は60ccで、国内の使用シーンを考えるととてもちょうど良い容量です。プレナムが大きくなりすぎると単純にスペースが必要になることと、ショット毎の圧力回復に少し時間がかかります。
それがグルーピングにどれほど影響出るかというと、射手の影響に隠れる程度ではありますがw
また独自の構造で機関部の前後長がとても短く、国内全長は850mm程度に収まる予定で、これは700mmバレルのエアライフルで最短の全長になると思います。
また重量も3.1kgとクラス最軽量です。ドレスアップパーツにうまく樹脂を使っていて、これもよく考えられていると感じます。
グリップハイトもプレナムスペースを最小限に抑え、大容量プレナムモデルよりかなり低くなっています。
さらにバットプレートは前後上下に可変式となっており、一番短い状態では競技銃のようにグリップを握った腕を脇につけて構えることもできるため、
今後増えるであろう狩猟用エア射撃大会ではかなり有利に働くのではと思います。
どの評価ポイントでも高次元にバランスを取っているのがこのクレイトです。安全面でも二重装填防止機能が付いているので、これも評価ポイントです。
このクレイト、f-rangeで発表後すぐに問い合わせをいただいているのですが、ウッド/ラミネートストックに興味を持たれる方が多い印象です。
ARグリップのベースモデルは細身で横面に起伏がないため、写真映えしないのが悲しいところなのですが、実物はかなりカッコいいです。
とまあ、こんな感じに書いたところで疲れてきたのでこの辺で締めたいと思いますw
最後に、こうしたエアスラッグガンに興味をお持ちの方へ。
まずエアスラッグというのは各メーカーから様々なサイズ、重量、特性の弾が販売されています。
よく、弾の相性が、といった表現を聞きますが、基本的に使う弾に対して適切なセッティングを施せばどのメーカーのどの重さの弾でもグルーピングは出ます。そうした調整ができない場合に、そのままで精度が出る弾を探すのが、相性、です。
また、レギュレーターが外部調整できない銃でも、ハンマースプリングは調整できる、こうした銃も多くあります。
ですが本来、ハンマースプリングで調整できる弾速幅はおおよそ〜30fps(10mps以下)です。
最適弾速には、最適なReg圧と最適なスプリングプリロードがあります。
そこから外れると、レギュレーターが入っていたとしてもタンクの圧力差によって弾速が変わってしまったり、マズルブラストが出て燃費が悪くなったりします。もちろん精度にも影響します。
弾速、Reg圧、HSプリロード、この3つが最適値に揃ってこそのベストセッティングです。
では外部調整できる銃の方が良い、と言いたくはなりますが、
高圧の空気を蓄圧するエアライフルにおいては、内部の圧を調整できるということは、エア漏れリスクを上げることに繋がります。
機械的に外部から調整する以上、間にOリングを咬ませて空気を保持しているからです。
またそうした構造である以上、むやみに弄り続ければ、Oリングの摩耗や損傷リスクを上げることになります。
外部調整できるエアライフルはエア漏れをする、ということではありません。物理的にそのリスクは存在する、ということです。
ですので自身で射撃、セッティングの沼にハマりたくない方は、セッティングの出ているエアライフルを購入することをお勧めします。
また、くれぐれもオーバーパワーには注意してください。
6.35mmペレットと同重量の5.5mmエアスラッグでも、6.35mmペレット以上の残存エネルギーがあります。
5.5mmなら25gr程度で十分な精度が出ます。
6.35mmでも30gr程度に抑えておいたほうが賢明です。
もちろん標的射撃専用なら話は別ですし、狩猟行為でも、地域や有害駆除などの対象によっても考え方は変わるかもしれません。
とにかく、知識や理由なくハイパワー、ヘビースラッグを使用するのは、十分に注意してくださいね。
長文になったので今回はここまでっw
お読みいただきありがとうございました。
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