エアスラッグ博学審問(12)エアライフルの精度とは①セッティング編
エアライフルで遊んでいるとたまに、
使っている銃のグルーピングが悪くなってきた、そんな話を聞くことがあります。
またこれはエアライフルに限らず、新銃でも『これはハズレの個体だ』なんて言葉も耳にします。
言葉にしてしまえば一言ですが、では一体それらは物理的にはどういうことなんだ、というのが今回の話です。
理論上は、銃のグルーピングというのは同じ環境条件のもと同じ弾を同じ銃のバレルで、同じエアフローで押し出せば、そしてそれが適正弾速であれば、毎回同じ場所に当たるはずです。でも実際はそうなかなか完全なワンホールを実現することはできませんし、外的要因を毎回完璧に揃えることは難しいでしょう。
しかしグルーピング精度を求めるには、そこに至るまでのあらゆる事象の精度が必要です。
その一つはセッティングの精度です。
まず正しいセッティングとは、弾の好む弾速、バレルの好む弾速、そのための正しいレギュレーター圧とハンマースプリング(HS)設定で決まります。
基本的にPCPライフルは、ハンマーでバルブを叩くことでプレナムに貯蔵された空気を放出しています。貯蔵される空気はレギュレーターを通して充填圧より減圧し同じ圧力に保たれることで、毎回同じ空気吐出量になるようコントロールされます。
ハンマーは圧縮したスプリングを解放することで動作し、毎回同じ力でバルブを叩きます。
この機構がPCPにおいて一番奥深いところでもあります。
例えばある銃でReg圧を130barと140barの2パターンを用意したとして、同じスプリングパワーでハンマーを動かした場合、どちらが空気の吐出量が多いと思いますか?
…答えは【ハンマーとスプリングの設定による】です(笑)
一見Reg圧が高い方が空気の吐出量が増えそうに思いますが、圧力が上がると、ほとんどのPCPではバルブの抵抗が強まります。そうなると、スプリングとハンマーのエネルギーが弱い場合では、バルブを十分に開けなくなります。これを解決するためには、HSを強める必要がありますが、例えばハンマー自体が軽すぎた場合などはスプリングパワーを上げても限界がきてしまうこともあります。
このReg圧とHSのパワーバランスには、黄金比とは言わないまでも適正値、範囲があります。
例えば25grの弾を950fpsで押し出すセッティングをしたいと思った時に、
Reg圧130barでHSを目一杯強くして達成するのと、
Reg圧140barでHSを緩めて達成するのでは、
まったくグルーピング結果が異なる可能性があります。
現代のおおよそのPCPではHSは弄れるようになっていることが多いですが、
設定されたReg圧に対しての、HSの調整による弾速の許容幅は20fps(6mps)ほどです。
この幅はファクトリーセッティングがこの適正弾速範囲の中のどこに置いたものなのかによって、上下どこまで調整できるかは変わります。
この幅から大きくズレたHS設定にした場合、弾速が不安定になったりグルーピングが極端に悪くなる可能性があります。
また、適正範囲内だったとしても、最終的なベストセッティングはその中の1点であり、それにはReg圧も微調整する必要があります。
これらにより完璧なセッティングが出た場合、弾速は常に安定し、燃費も良くなります。これがセッティングにおける精度の理想です。
ただこれは、実際のグルーピング結果においてはわずかな弾速のばらつきはPOIに影響が出ないことも多く、メーカーによっては故障リスクの低減や、コストを抑えるため、その他理由で多少の弾速変化は目を瞑った構造、セッティングになっていることもあります。
※例えば超ハイパワーな銃で、ローパワーセッティングでは弾速が安定しない、など
というのも弾速が5fpsズレたところで50m先のPOIシフトは2mm弱ほどで、これは射手や環境の変化量に吸収されるレベルの誤差だからです。
このセッティング理論にはきちんと公式が存在し、特殊な構造のPCP 以外、9割方はそれに基づいてファクトリーセッティングが取られているはずです。と、こういうことを書くと、公式教えてください、とか〇〇のセッティングはどうしたら良いですか?といった質問がたくさん来ることになります(笑)
ただ残念ながら、別に意地悪したいわけではなく、こうした質問には私はお答えできません。
理論の話は説明しだすとキリがないですし、短くまとめることもできません。私が熟知していないエアライフルや構造もたくさんあります。
そして最終的には、実際の弾速データを確認し、修正しながら仕上げる必要があります。
ですのでぜひご自身で海外のフォーラムやサイトを漁り勉強してみてください。きちんと自分で理解するためには、まずそれが必須です。Youtubeなんかにも良い情報はありますね。今はChromeが勝手に翻訳してくれるし、動画も日本語字幕がついたりします、無料で勉強できる本当に良い時代です。