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博学審問 空気銃の圧力計を知ろう


PCPエアライフル(空気銃)に必ずついている部品と言えば圧力計です。
第一世代のエアライフルであれば、蓄圧タンクの残圧確認用に、第3世代以降であれば、モデルによりプレナム室=レギュレータ圧を確認するために追加装着されている場合があります。これらは基本的に同じ部品です。

一方、充填用の大型ボンベから銃に空気を移すためのアダプターにもメーターはついています。MDEアダプターであれば50mmほどの機械式メーターが付いているはずです。
これも大きさは違えど、どれも円形の表示板に針を備えた同じ構造の機械式圧力計です。

最近ではアフターパーツとしてデジタル式の小型圧力計が販売されたりして、自身の銃への装着を検討したことがある読者の方もいらっしゃるでしょう。

さて、それではこれらの圧力計は、どういう構造で、どういうメリット/デメリットがあるのでしょうか。というのが今回の話題です。

機械式圧力計の構造

エアボンベのアダプターについている50mmメーター

MDEアダプターに使用される大型のアナログメーターも、銃に装着される小型のアナログメーターも、基本的に内部の機械的構造は同じです。
MDEアダプターに付いているものであれば50mmほど、銃についているものはメーカーやモデルによって異なりますが、23mmm/25mm/28mmといったサイズが一般的でしょう。

ブルドン管の概念図

これらの内部にはブルドン管と呼ばれるとてもシンプルな構造を使用しています。
簡単に言うと、縁日のおもちゃの【吹き戻し】のような仕組みです。
吹き戻しってなに?と思われるかもしれませんが、あれですよ。
口で吹くとスルスル伸びて、離すとくるくる巻き戻ってくる紙の笛、通称?ピーヒャラ笛のことです。

実際のブルドン管はイラストのようなC型の管です。この内部に圧力がかかると、管は真っ直ぐ伸びようとし、先端が外側に開きます。この力を利用しギアと連動したメーターの針を動かしています。実にシンプルな構造です。

さてこれは何が良いかというと、ずばりシンプルな構造であることです。耐久性の観点でも安定しており、安価に作ることが可能です。


チューブタンクモデルの圧力計
AGNは23mmと小型の圧力計が付いている

一方デメリットもあります。
それは大きさと精度が比例している点です。先に述べたようにエアライフルに使用する機械式圧力計は小さいものでは20mm強です。
本体が小さければ中のブルドン菅も小さく、ギアなどの部品も小さくなります。そのため、精密に部品を作るのが難しくなり、動作精度に影響が出ます。またこれが少し考えれば当たり前の話ですが、表示面も小さくなるため、人間の目で正確に読み取るのが難しくなります。
もちろん小さくともちゃんとしたメーターであればきちんと校正を取っているはずですが、限界はあります。
逆に機械式は、本体が大きいほど計測精度は高くなります。

実は圧力計の世界シェアNo1は日本企業です。以前圧力計のことが気になって一日10時間以上眠れなくなってしまったことがあり、圧力計機メーカーのカスタマーセンターに電話をし色々教えていただきました。
(その節は大変お世話になりました。ご丁寧に対応いただきありがとうございました。)
ちなみに機械式で1bar単位の計測精度を求めるならどのくらいのサイズが良いですか?と聞いたら、【最低100mmは必要ですね♪】とお答えいただきました。
皆さんも丈夫で正確な機械式圧力計を欲しくなったらφ100mm以上の圧力計を装着しましょう(嘘ですよ)

また、大型圧力計の中には表示板にオイルを封入したものがありますが、あれは振動を吸収する目的ですので、エアライフルでの使用においては特にメリットはありません。
もうひとつ補足すると、メーターは表示面を自分から見て正面、つまり正立した状態で正確に表示するようにできています。ブルドン管は構造上、メーターの向きでも表示が変動しますので注意しましょう。(何を注意するのかわかりませんが)

デジタル圧力計の構造

https://www.sekhmetonline.com/products/pcp-airgun-digital-pressure-gauge

最近、エアライフルに装着できる20mm台の小型圧力計が(海外で)流行っています。
ではこれらの精度はどうでしょうか?

結論から言って、20mm台の圧力計であれば機械式とは雲泥の差でデジタル式の方が優れています。
なぜかというとデジタル式はそもそも圧力センサーを使用して計測しています。圧力センサーにも色々種類はありますが、基本的には圧力をダイヤフラム(圧力で膨らむ膜のようなもの)に送り、それがセンサーと触れることで電気抵抗を感知して圧力をデジタル表示しています。

機械式と大きく異なるのは、この圧力センサーというのは元々小さな部品であり、本体を小型化しても精度に大きな影響がないということです。
そして表示もデジタルであるため、人間の目の読み違いも起きません。
もちろん大型のものは、物理的制約がないためより精度の高い圧力センサーの設計や配置を行うことができますが、私たちが確認したい1barといった単位においては大きさによる精度の差に優位性は特にないでしょう、とのことでした。

一方、デジタル式のデメリットは、ひとつは電力が必要な点です。当然ですが、電池やバッテリーが切れてしまえばメーターは読み取れません。
もうひとつはメーカーできちんと校正が取れていないと正しく表示されない可能性があるということです。

後者の問題は以前どこかで、デジタルメーターは正確でない、といった話題を見ましたが、私の知る限りアリエクで売っている5000円程度の安いデジタルメーターでさえ、数barを超えるような圧力のズレを見たことはありません。もしそうした問題を実際に経験したのであれば、むしろ計測に使用したアナログ計の精度の方が心配です(笑)

この精度の差については人気YoutuberのSub12Airgunnersさんも言及しています。


結局どっちがいいの?

これは適材適所です。
まず、銃についている小型機械式圧力計は、はっきり言って全てがいい加減な精度です。圧力計の表示が、実際の圧力から5~10bar程度ズレている、なんてのは当たり前です。なぜなら先述の物理的制約があるためです。

しかしながら、それが必ずしも使用においてデメリットとなるとは限りません。
例えば使用する銃のレギュレーター圧が130barだったとします。
しかしメーターはその数値からずれている、例えば本当は130barなのに140barと表示される、という状態でも、それを分かっていればその手前で空気を充填すれば良いだけです。
最大充填圧も、その辺のバッファを含めて設定されていますので、メーターのズレ分で多少入れすぎても問題ありません。

レギュレーターメーターの場合も同様で、セッティングを変えて色々遊びたい、と言った場合でも、メーターが一貫してズレているならば、その読み取り値をベースに記録すれば良いだけです。
いい加減、は良い加減、とも取れます。

しかしながら例えば、セッティングデータを他人と共有したい、1bar単位でセッティングを突き詰めたい、といった場合には、アナログメーターでは少し役不足でしょう。

とはいえその場合でも、残圧、レギュレーターの2つのメーターが付いているならば、デジタルへの換装はレギュレーターメーターのみで十分でしょう。
デジタル式が電力を必要とする点も忘れてはなりません。
例えば急に電池が切れて読み取れなくなった場合、それが残圧計であれば困ることもあるかもしれません。

また、数値がはっきりわかることで、気になることが増えて夜が7時間くらいしか眠れなくなる可能性があります。
例えば、ボトル残圧が昨日と今日で違う、レギュレーター圧が気づいたら上がっている、などなど。
残念ながらエアライフルとは元々そういうものです(笑)今まで認識できなかったから、気にならなかっただけです。

坊やにはまだ理解できないかも知れませんが、世の中には見えない方が都合が良いこともあるのです(誰)


さて最後に、小型機械式圧力計の精度がいい加減なのはお分かりいただいたかと思いますが、それ故に、銃の残圧が減ってきた時の空気充填は、その銃のレギュレーター圧の最低10bar以上高いメーター表示で再充填いただくことをお勧めします。設定圧以下での射撃は、精度や弾速に影響が出るだけなら良いのですが、モデルによってはレギュレーター部品を摩耗させる可能性もあるからです。

ということで今回はここまで。次の記事で100記事です。
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ではでは。

眠れない夜長にブルドン管の概念を体感したい方はこちら

概念なんて俺が殴ってやる、というヤーヤーヤーな貴方はこちら。
地獄のピーヒャラ、パッパパラパー。



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