ハンター的、カモ判別法 2
猟期に入るとSNSを賑わす非狩猟鳥の誤射問題。
特にカモ類のメスはどれも地味で、一見違いがわかりません。
簡単な判別法については以前記事で書きました。
さて今回は、もう少しわたしたちの脳の解像度を上げるためのトレーニングと解説をしていきます。
カモはどうやって判別する?
つい先日、Twitterにこんな投稿をしました。
この写真は、とあるカモを、スマホで適当に色を変えた加工写真なのですが、何も言わずに投稿してみました(笑)
するとその反応は『オカヨシガモでは🤔?』『翼鏡が白い😨』など、非狩猟鳥の疑念を持ったものが多くありました。バーダーを名乗る方でさえそういった反応がありました。
実はこの加工写真、きちんとカモ類の特徴が分かっていれば、こんなカモはいない、と瞬時に気づく(私のいい加減な加工技術はさておきw)ものです。
ではこうしたカモの判別はそもそもどこを見れば良いのでしょうか?
カモの判別ポイント
ここをチェックすれば確実に種が分かる、というのがこれらです。この写真は一見ハンターが何気なくSNSにアップした風ですが(笑)、狙って写しています。
クチバシ
カモの嘴は実は個性的です。採食のスタイルによって形状も異なります。ハシビロガモなどはわかりやすい例でしょう。その他にもオシドリなどはどんぐりを好んで食べるため、三角錐のような形状をしています。また色も様々です。黒色、グレーの嘴が多いですが、マガモやカルガモの黄色、オレンジ色は特徴的と言えるでしょう。
頭部
頭部の形状もカモによって異なります。マガモやカルガモのように鼻筋が通って面長なもの、ヒドリガモやヨシガモのように鼻筋が低く、おでこが張っているように見えるものなど。ただしこれは1羽だけだと判断しにくい場合もあるでしょう。またもう一つの頭部の判断ポイントとして過眼線があります。過眼線は嘴の根本から目を通り後方に伸びた模様です。一番はっきりしているのは体羽の色が薄いカルガモですが、多くのカモがこの過眼線を持っています。逆にヒドリガモなど、過眼線の不明瞭なカモもいることを忘れてはいけません。
それとコガモに近い大きさで特徴の薄いトモエガモのメスは、嘴根本付近にはっきりとした白斑があります。
足
足の色はざっくり言って、オレンジ、黄色、灰〜黒の3つです。これらを判断ポイントとしているハンターも多いでしょう。オレンジ色の足は、マガモ、カルガモが有名ですが、ハシビロガモも綺麗なオレンジ色です。
しかし実はマガモと間違えがちなオカヨシガモは、オレンジというより黄色に近い色で結構違います。またカモによっては、足の色が安定していないものもあります。コガモなんかは、年齢などにより薄黄色〜灰色まで個体差が大きいですね。
体羽
体羽は、今回の場合は翼を除いたそのほかの体の羽を指しています。分かりやすいのはカルガモで、彼らは、他のメスガモとは異なる羽のカラーパターンを持っています。一般的なメスカモの体羽、バックフェザー〜ボディフェザーは、羽縁がダブルリングのような色分けになっていますが(部位による)、カルガモは内側は茶色のベタ塗りです。これだけで、先ほどの加工写真が、カルガモである、と判断できる要素になります。
例えばマガモメスとカルガモを遠目で並べて見た場合も、マガモの体は鱗模様がはっきりして見えるでしょう。
この体羽のパターンは、ヒドリガモは成長度によりかなり不明瞭だったりシングルリングに見えることがあります。まあ彼らをカルガモと間違えることはないでしょうが。
次列風切(翼鏡)
カモの判別で、翼鏡という言葉を知っているハンターも多いでしょう。翼を広げた時に鮮やかに構造色で輝く羽です。ただし翼鏡はあくまで構造色で光沢を持つ羽を指しており、部位としては次列風切が正しい表現になります。つまり光沢のある翼鏡を持たないカモもいます。
三列風切(飾り羽)
こちらも一般的に飾り羽と呼ぶこともありますが、部位としては三列風切という名称です。この三列風切は、有力な判別ポイントでもあります。基本的には特徴的な形態はオスに現れますが、メスでもそれに近しい形状をしています。例えば先の写真で言うと、広葉樹の葉のような大きな三列風切が見て取れます。一方真っ白な次列風切と言うとオカヨシガモが有名ですが、彼らは柳葉状の細長い三列風切ですので、全く当てはまりません。
名前と知識と判別方法
さて先ほどの写真に戻りまして。
先にネタバラシをすると元のカモはカルガモ(メス)です。
じゃあ右の加工写真を見てまずどう思うかというと、目立つのは次列風切でしょう。しかし白=オカヨシガモではなく、オカヨシも次列風切の一部が白いだけなので当てはまりません。そして足はオカヨシの黄色ではなくオレンジ色。嘴はなぜか黒です。そして体羽はシングルリングの羽縁。そして最後は適当な加工では誤魔化しきれない、広い幅の三列風切。
こんなカモはいません(笑)そしてベースがカルガモであることは明白となります。
さて急に、論理的思考の話をします。
自然への見識を深めたり、解像度を上げるために最も有効な手段は、言葉を知ること、言葉にすること、です。
人間の脳は言葉が記憶のアクセスコードになっています。
例えば私たち日本人が空を見上げて見える虹は7色、赤〜紫へ連続する色彩です。当然ですね。
しかしこれは英語圏では6色とされ、アフリカのリベリア・バッサ圏ではなんと2色にしか見えません。
なぜかというと、目に映った色を表す言葉がそれしかないためです。
言葉がなければ、人の脳は目に映った違いを区別、表現することはできません。
言葉を使わずに記憶を思い出すと言うのは非常に困難です。
もちろん、嗅覚や視覚などが過去の記憶を呼び起こすことはあるでしょう。しかしそれは断片的な記憶で、言葉で整理、カテゴライズされたものではないため、意識して思い出すことはできません。
ですからこうしたカモの判別、自然への理解を深めるには、まずはそれを表す言葉を覚えることが肝要です。
それではもう少し皆さんと一緒に解像度を上げてみましょう。
これは、カモをはじめとした鳥の翼の部位名称です。
鳥の翼は飛翔するための風切羽(かざきりばね)と文字通りそれを上から覆う雨覆(あまおおい)からできています。列、については人間で言う手首から先が初列、前腕が次列、上腕(付近)が三列と言う名称ルールです。カモの場合、次列風切に何らかの色の特徴があり、その上の大雨覆にも色が乗っているケースがほとんどです。
この部位の名称を覚えるだけでも、判別の知識、スキルはグッと上がるでしょう。ここまでお読みいただいたら、再びこちらの過去記事でその意味と違いを確認してみてください。
いかがでしょうか。
ハンターの皆さんでしたら、バードウォッチングと違い、実際の鳥の羽を間近で見ることが可能でしょう。
ただの食材だからと羽をむしってしまう前に、一度じっくり観察してみてはいかがでしょうか。
自然への解像度が上がれば、比例して狩猟中の楽しみも増えます。ぶっちゃけ楽しいことだらけです。私はバーダーでもありハンターでもありますが、獲物を獲る、という執着、目的があるおかげで、バーダーの時には出会えなかった素晴らしい自然の一瞬に出会えたことが何度もあります。だから狩猟が好きです。
ただし、あまりそうした楽しみが増えると、狩猟そっちのけになることもありますのでご注意ください(笑)
(私は実際に、珍しい鳥や自然現象を見つけて狩猟をせずに帰ってきたことが何度もあります)
最後に、こうした鳥の判別は最終的には、きちんとした本で学ぶことをお勧めします。
おすすめの書籍を貼っておきますので、ぜひご参考くださいね。
※↑識別図鑑、だけあって、かなり写真が多く、実際の見え方が非常に参考になります。お値段はしますが、持っていて損はないです。
※↑野鳥観察雑誌BIRDERの古い号ですが、チャート式の判別表がとてもよくできていて超お勧めです。その出来のおかげか中古品がすごい金額になってますね・・・Kindleはお値段据え置きなので持っている方はすぐに買って入れておきましょう。
というわけで今回はここまで。
お約束ですが、最後にスキ!ボタンのご協力をお願いします♪
ではでは。