[創作1000ピース]28,福島の浜辺(エッセイ)

 小学校の夏休み。毎年父と共に家族で帰省していた浪江町。

 いとこと出かけた夏祭り。
 提灯をぶら下げ、長い列を作って親戚一同お墓参り。
 田んぼと畑に囲まれた道路。とうもろこしをもぎった畑仕事。
 外の風呂釜に薪を焚き、ヘチマのスポンジで体を洗う。「綺麗になるよ」とおばさんが背中を流してくれた。
 縁側で冷えたスイカを頬張り、朝には産みたてのたまごでたまごかけご飯を食べた。こんなに美味しいと思ったのは初めてで、たまごかけご飯が大好きになった。

 お弁当を持って出かけた福島の浜辺。
「浜通りの波は荒いからね」
 注意されたそばから、大波に私はさらわれ、海水の中で何回転も回りながら浜に打ち上げられた。
 夜には花火が上がり、都会で見るごみごみとした花火大会と違って開放的でゆっくりと楽しめた。しょっぱい潮風と花火の匂いを思い出す。

 あれから11年。
 もう花火を見た浜も港も津波にさらわれ、跡形もなくなったらしい。もうおじさんもおばさんも浪江町には帰れなかった。
 3月11日と夏が来ると、福島の浜辺を思い出す。少しでも心を寄せて。

 何の慰めにもならないけれど、少しでも私は福島のことを思っています。


*** 創作1000ピース ***

 たくさん書いて書く練習をするためにまずは1000の物語を書く目標を立てました。形式は問わず、質も問わず、とにかく書いて書いて、自信と力をつけるための取り組みです。

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