ボヘミアン・ラプソディー
イギリスのロックバンド「クイーン」のリードボーカルであったフレディー・マーキュリーの生涯を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディー」が多くの人の感動を呼び起こし、異例のロングランが続いています。日本でのこの映画の観客動員数が100万人を超えたことからも、如何にこの映画が多くの人の心を打ったかが窺えます。この映画についてテレビやネットに書かれているる記事を見ると、私の様にクイーンが活躍していた1970年代を知っている人ばかりでなく、若い世代からも絶大な支持を得ていることが特徴であり、若い人の中にも繰り返しこの映画を見た人も数多くいるという事に驚くとともに大変嬉しく思います。
一体何がそれほどまでに世代を超えてこの映画が共感を得たのでしょうか。
振り返ると、私自身のクイーンとの出会いは高校生であった1970年代です。高校に入学したばかりの私は、クラシック音楽が好きになり、自分の小遣いを貯めてLP(CDではありません)のレコードを買い始めました。 今でも覚えていますが、高校の帰り道に立ち寄ったレコード店で初めて買ったLPはショパンのピアノ協奏曲でした。それ以来、毎月の小遣いを貯めては、交響曲を中心に、当時の私にとってはとても高価であった一枚1,500円ほどのレコードを少しづつ集めていました。クラシック以外にも、時には尾崎紀世彦、伊東ゆかり、カーペンターズなどジャンルに拘らずに好きな曲が収められているレコードを買った覚えがあります。ただし、ロックは余りにも音量が大きく、音を楽しむという音楽本来の目的から外れている様に思い、クイーンに出会うまでは一度もレコードを購入することはありませんでした。
どの様なきっかけだったかは今となっては忘れてしまいましたが、その様な高校生であった私の前に突然現れたのが「ボヘミアン・ラプソディー」でした。複雑に重ね合わせられた和声と美しいピアノのメロディーラインで始まり、大きく展開して静かに終わるという「ボヘミアン・ラプソディー」を初めて聞いた瞬間に心を奪われてしまいました。 そこで、早速小遣いを貯めてレコード店で「ボヘミアン・ラプソディー」がおさめられている「オペラ座の夜」というLPを購入しました。家に帰ってからこのレコードを聞いたところ、その中に収録されている曲は私にとってどれも新鮮であり、彼らが極めて高い音楽性を持っており、クイーンが決して「ボヘミアン・ラプソディー」だけのグループではないことが良く分かりました。私がロックのレコードを買ったのは、後にも先にも現在に至るまでこの一枚だけですが、とても大切な一枚になりました。
けれども、今回の映画が公開されるまで私はフレディー・マーキュリーが、バイセクシュアルであり、エイズで亡くなったことを全く知りませんででした。今でこそLGBTは社会的に知られる存在になりましたが、1970年代は公言することすら憚られる存在でした。またエイズにしても、1981年に最初のエイズ患者が発見され、1983年にヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)がその原因ウィルスと判明するまでは、「エイズの人と握手をしても感染しないか」、「エイズの人が触った電車のつり革を触っても大丈夫か」という様な、今となっては信じられないような噂が流れ、大きな社会不安の原因になっていた時期でした。 何よりも、エイズの治療法がなく、発症したら免疫不全で確実に死亡する不治の病である事が人々を不安にしました。私の身の回りでも、1980年代に後半に在学していた大学の先生が輸血がもとでエイズに罹患され後日亡くなられましたこともあり、エイズは決して他人事とは思えなくなりました。
その様な厳しい状況の中で、クイーンのメンバーがフレディー・マーキュリーの体調を見ながら最後まで音楽活動を続けたのは、当時としてはとても勇気のいることだと思います。そのお陰で私たちは現在もクイーンの素晴らしい作品を聞き、新たなファンを魅了することができたのですから、感謝するしかありません。 さらに映画「ボヘミアン・ラプソディー」でフレディー・マーキュリーを演じているラミ・マレックが、当時のフレディーを知っている私たちの世代から見ても、あまりにも実物に似ていることも感情移入しやすかった要因だと思います。
改めて、音楽は時代も世代も超越する事を痛感した出来事でした。
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Love of My Life
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