「かぷかぷ」について

2024年4月、春のM3にて頒布した『PEAKY PARKA』の5曲目に収録されている「かぷかぷ」という曲ですが、これは

「賢さんコンピ」

という、2022年4月のM3にて、宮沢賢治の作品をテーマにしたコンピレーションアルバムに参加させていただいたときの曲です。

これがほんと素敵なアルバムでね、もうね、ぜひ買ってください。ホント。

「かぷかぷ」はもちろん、「やまなし」をテーマに作ったものです。クラムボンの笑い方ですね。

「やまなし」の思い出

やまなしは多分みんな国語の教科書で読んだことあると思います。結構長いこと教科書に乗ってて、知らない世代は殆ど無いとか。

当時小6だった僕に、この作品はとても印象深いものでした。というのは、情景が綺麗だとか美しいとかではなく、「クラムボンとは何なのか最後まで分からずじまい」だったからです。

「クラムボン」とはなんなのか

多分、それまで12年生きてきて初めてぶち当たった「答えのない問い」が、「クラムボンとは何か、自分なりに考えてみましょう」という、担任の先生の作ったプリントの一問だったと思います。

いわゆる「イイコ」だった自分は、学校で習うことは全て答えがあるものだと思っていました。
総合の授業で福祉や環境についても学びましたが、みんな「模範解答」があって、教師はそれを求めており、それを幼い自分は理解していました。

だからこそ、このクラムボンという存在は、自分の人生においてある種のターニングポイントであったように思います。
答えのない問いというものがあること。そして実は、世界は答えのない問いのほうがたくさんある、ということもここからだんだんと気づいていくわけなのでした。

答えのない問い

僕は作詞する中で、わざと言葉や情景を曖昧にすることが多いです。
理由は大きく2つあって、
1つ目は単に直接的な表現が恥ずかしいから。
2つ目は聞いてくれた人がそれぞれの思いや答えを持ってほしいから。

今にして思えば、このクラムボンという存在は、自分の詞にも受け継がれているような気がします。
とはいえ、こういうnoteを書いているように、この歌詞はこういう意図で作ったんだよということを知ってほしい自分もいて、どこまで解釈を委ねるかみたいなところは常にジレンマです。

かぷかぷの歌詞について

さて前置きがながくなりました。
この「かぷかぷ」という曲ですが、実は随分前に作った曲をモデルに、新しく作り直した曲です。

このミナソコという曲は、たぶん僕が初めて参加したコンピで、「40秒コンピ」という、楽曲全てが40秒ピッタリの、なかなかにカオスな企画でした。
興味があったら聞いてみてください。(↑は当時の音源じゃありませんが)

かぷかぷの歌詞を書くとき、やはり「答えのない」ことを意識しました。
頭の中に情景が自然と流れてくるように、それでいて、聞く人それぞれが違った景色が思い浮かべられるように。

やまなしの原文と何度も照らし合わせて、取り入れたいワードをピックアップし、ひとつひとつ繋ぎわせるように書いています。
「樺(はな)」とか「幻の燈」とか。

転調多くなっちゃった

数えてみたらこの曲9回転調しています。
転調したくてやったんではなくやらざるを得なかったんです。ホントです。
ここから先は少し音楽的な話になります。

まず動かしたくなかったのはサビのキーがGなのと、ラスサビで1音上がってAになること。これは僕の声の音域的な事情が主です。

その次、Aメロ後とサビ後の6度転調。
この曲の転調のうち実に半分以上を占めている手法です。
これはⅥmで終わるのではなくⅥsus4→Ⅵとメジャーに降ろしたあと、その音を主音としたⅣ度の音に持っていっています。
要は同主調転調です。たぶん。自分はそう解釈しています。

Aメロ→Bメロの部分に、暗めで静かな空気がパッと明るくなったように感じられたら幸いです。ちなみに今回のCD収録に際して、この部分だけハモリパートを足しています。sus4から降ろす部分を声で表現するとやっぱり味が出る気がします。
サビの最後の部分も、どうしてもsus4からメジャーに降ろしたかったので、同じ転調をすることにしました。

するとどうなったかというと、2回6度転調を続けたので、Aメロに戻す際にE→B♭の、いわゆるトライトーンの関係の転調をしなくてはならなくなってしまったと。
Aメロしょっぱなから少々無理矢理な転調をしたのはこのためです。
結果的に飽きない展開の曲が作れたのかなと思います。

あと個人的にギターソロから落ちサビに向かうところも気に入っています。全体的に見れば転調ではないけど転調感がある感じになりました。

楽器の話

・ピアノ
普段バンドサウンドばっかり作ってるので、こういうピアノが大事な曲を作るのはなかなか苦戦します。
自分はピアノが弾けないので、打ち込む際に人力で弾けるかどうかみたいなところはあまり考えないことにしています。

・エレキギター
普段エレキギターを打ち込みに頼ることはほとんど無いのですが、今回は打ち込みにしました。こういう、空気感が大事な曲は打ち込みエレキの無機質寄りな音のほうが「脇役に徹する」ことができているように思います。

・ベース
以前誰かが言っていた「ベースは音が鳴ってないときの方が存在感がある」的なことを意識して音を置いています。ハイポジの音を目立たせるの難しくていつも苦労します。

ということで

この曲を好きと言ってくれる方が多くて、とても嬉しいです。今回のアルバムの中だと、製作消費カロリー的には一番多かった曲だと思ってるので、その甲斐があったなぁという感じです。

最後までご覧頂いて、本当にありがとうございました。そしていつも聞いてくださってありがとうございます。
これからも自分の好きな曲を作り続けていきますので、気の向いたときに聞いてくださると嬉しいです。

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