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『桜』という曲とOTODAMA甲子園の記憶

 なんで人生には漫画みたいな最終回がないんだろう。ハッピーエンドっぽいところでシュワっと消してくれればいいのに。もし自分で終わりを選べるなら、僕は高校二年の夏のOTODAMA甲子園の時期を選ぶだろうと思う。『桜』というこの曲は当時僕がやっていたナコルルというバンドの一曲だ。

 僕たちの高校はなぜかライブハウスの出演が校則で禁止されていて、理由はどうやら一昔前にパーティー券なるものが流行ったためという事らしいのだけど、僕らの時代には存在しない産物だったし、何よりチケットの売り買いを禁止するという内容なのに吹奏楽部が演奏会のチケットを五百円で手売りしていることは容認されていて、つまりは私立高校だから学校の宣伝価値のない部活は必要がないというのが学校側の本音だったのだろう。当然僕たちは全く納得していなかったから隠れてライブハウスには出てた訳だが、それも長くは続かず高校二年の八月頭に学校から呼び出しを食らって以降ライブはできなくなってしまった。

 そんな中で最後に出演したのがOTODAMA甲子園という神奈川のローカルバンドコンテストだった。これは学校公認のコンテストで、僕たちは予選を通過して八月の中旬に由比ヶ浜のOTODAMA SEA STUDIOで決勝選に出場、何を間違ったのか優勝を勝ち取ることになった。優勝景品でレコーディング合宿に行くことになって、その際に録ったのがこの『桜』というこの曲。レコーディングするにあたって元キマグレンのクレイ勇輝さんに見てもらいながらアレンジを考え直して録音した。一応音源は完成したものの、もっとクオリティの高いもので公表したいので公開は待ってくれと言われ、そしてその後大会を運営していた地元テレビ局から連絡が来ることはなかった。

 やっぱり大会で優勝というのは印象深いもので、自分たちが選ばれるとは思っていなかった分喜びも大きかった。高校生活はあまり好きではなかったけれど、高校二年の夏だけは今でも掛け替えのない記憶だ。だからこそこの『桜』という曲はどこかで公表したくて、四年越しで自分で撮り直して公表することにした。改めて前に録った音源を聴いた時、曲があまりに勢いだけで戦ってるものだから笑ってしまった。単純にテンポが速すぎてストロークが全然間に合わない。今の自分と昔ではもう完全に別人だなと思いつつ、勢いだけなのにカッコ良く聞こえる若さがちょっと羨ましかった。今回この曲を公表するに当たって、一応テレビ局と録音音源は公開しないという約束をしていたので、今の自分の手癖とかを取り入れながら流行りっぽい展開に所々変えて自作したけど、基本はなるべく当時のまま残して再現した。

 この曲に関しては語ることが多すぎて全く書き切れる気がしないので、まとまらないけどとにかく話はここまでにしようと思う。言いたいことはとにかく一回聴いてもらえれば分かってもらえると思うし。高校生の僕が残したこの一曲、ぜひ聞いて気に入ったらダウンロードして貰えればと思う。一人でも聴いてくれるなら四年間放ったらかしだったこの曲も報われると思うので。

※追記

要望があったのでストリーミング配信に対応しました。




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