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大切な「兆候」をくみ取る力③
前回に続き、「兆候」について書きます。
大きな事故の前には、いくつかの「兆候」「前兆」がある。
この「兆候」を受け取り、適切に対処すれば大きな事故を防げる可能性が高く、逆に無視したり対策を先延ばしにすれば、やがて大きな事故につながってしまう可能性が高くなってしまいます。
たとえば数年前に発生した「知床遊覧船沈没事故」。
運航会社の杜撰(ずさん)な運航によって、乗員・乗客26名の死亡、行方不明者を出した痛ましい海難事故は記憶に新しいところです。
この知床遊覧船沈没事故も、事故発生前にいくつかの「兆候」がありました。
知床遊覧船沈没事故を起こした会社である「知床遊覧船」は、本来守られるべきことの多くが守られていなかったことが明らかになっています。
当たり前のことですが、船舶は天候の状況に大きく影響を受けます。
そのときの天候が比較的穏やかでも、いつなんどき急変することもあり、船舶の責任者は天候の変化に最大限の注意を払います。
しかし、知床遊覧船は売り上げを得るために事故当日も、他の遊覧船会社が荒天が予想されるため欠航すべきだとする提案に応じず単独で出航していたたのです。
このように同業他社からの忠告を無視して出航したのは、今回が初めてではなく以前から繰り返されていました。
また海上運送法は、運航時における運航管理者の営業所への常駐義務を定めていますが、運行管理者が不在に備えて補助者の設置を義務付けていますが、知床遊覧船では経費節減でベテランの運航者数名を解雇したため人材が不足し、社長の桂田精一氏が運行管理者と補助者を兼任していました。
よって、桂田社長は船舶運航時は常に事務所にいなければなりませんが、事故発生当時、知床遊覧船の事務所に運航管理者の桂田精一社長の姿はなく、従業員らが慌ただしく対応していましており、これが常態化していました。
さらには船舶の不適切な改造、沈没の直接原因となった前方ハッチの不具合とそれに対する適切な修理処置の不履行、無線連絡設備の欠陥などなど、その杜撰(ずさん)さは驚くばかりです。
そしてあの痛ましい事故が起こりました。
世間では知床遊覧船と桂田社長を厳しく追及する報道が繰り返されていましたが、はたしてそれだけでよかったのでしょうか。
もちろん、一番の責任者は桂田社長であり、厳しく追及されるのは当然です。
しかし、桂田社長と同じくらい責任があり、本来であれば厳しく追及されなくてはならない所在があります。
それは、この知床遊覧船を管理監督する「国土交通省」です。
報道は桂田社長への追及一本槍で、もうひとつの追及されるべき主体である国交省に対しては、うやむやにされてしまいました。
しかし、国交省は知床遊覧船の杜撰な体制や運営方法、さらには船舶の不備や危険性をあらかじめ知っていたのです。
そして、知床遊覧船はその杜撰さがもとでこの沈没事故以前にも、いくつかの海難事故を起こしていたのです。
これほど明確な「兆候」はありますでしょうか。
もはやこれは「兆候」ではなく、事象としてその不備や危険性が明確になったにもかかわらず、国交省はそれを見逃し、あるいは「なあなあ」ですましてしまっていたのです。
国交省がこの「兆候」を真摯にとらえ、適切な行政指導を行っていれば、この沈没事故は防げたはずです。
その観点で、この沈没事故は知床遊覧船と国交省の2つの主体がもたらした人災といえます。
この事故からわたしたちが受け取る教訓は、
『重大事故に至るかもしれない「兆候」を見逃さない眼を持つこと』、
そして
『その「兆候」を察知したときは、「多分大丈夫だろう」といった楽観に陥ることなく、面倒でも適切にその「兆候」に対処していこうという意志をもつこと』
だと思います。
この2つのどちらが欠けても、重大事故は起きてしまうのだと思います。
今回の心柱おじさんの気付き
・ 重大事故に至るかもしれない「兆候」に気付けるよう意識しよう。
・ 「兆候」に気づいたときは、面倒でもそれに対処する意志を持とう。
今回も読んでいただきありがとうございます。✋