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【レトロゲーム・レビュー&解説】#009 アインハンダー【みろく☆クロニクル】


■アインハンダー
・機種:プレイステーション
・ジャンル:シューティング
・発売日:1997年11月20日
・販売:スクウェア
・開発:スクウェア


■はじめに

このわし、浮御堂みろくがこよなく愛するゲームとその魅力を紹介する企画、それがみろく☆クロニクルじゃ。
まあ、あくまでわしの独断と偏見じゃが、皆が興味をもってプレイしたり語り合うきっかけになれば何よりじゃ。
元々はYoutubeチャンネルの動画向けの内容じゃが、記事化にあわせて若干補足・修正を加えつつ、だいたい10分程度で読み終えるようにまとめたものなので、ご承知おきいただきたい。

■概要

常軌を逸した作り込みによる緻密な演出独創的なシステムで高い完成度にももかかわらず、開発陣の作りたかったものと企業側が売りたかったもの、またユーザーが当時求めていたものが噛み合わず、長年不遇の評価を受けていた作品、それが今回紹介する「アインハンダー」じゃ。
本作は、1997年11月20日スクウェアより発売されたプレイステーション用タイトルで、ジャンルは横スクロール形式のシューティングゲームじゃ。
全7ステージの構成となっており、ステージ6の結果によりエンディングは2種類に分岐する。
一発でも当たったら残機が減り、特定ポイントからのやり直しとなる。
この時期、「ダライアス外伝」や「サンダーフォースⅤ」、「レイストーム」など、3Dポリゴンと2Dシューティングを融合させた名作が多々生まれたが、演出・音楽・グラフィック、そしてその独創的なゲーム性も含めて、まさにそれらの名作に勝るとも劣らない完成度の作品なのじゃ。

■ストーリー

23世紀の未来では、独立を求める月面都市国家セレーネと、あくまで宇宙での権益を守ろうとする地球の連合国家ゾードムの戦争が、半世紀以上の長きに渡って続いていた。
技術力では勝るも戦力では劣るセレーネは、少数からなる新型の戦術戦闘機の特別攻撃部隊による奇襲降下作戦で時間稼ぎを行う。
マニュピレーターで武器弾薬を強奪しながら、自殺行為とも思える勇猛な戦闘活動を行う、その戦闘機を、ゾードム軍は”アインハンダー”(一本の腕)と呼んで恐れた。
その日、無人司令衛星ヒュペリオンが発案したゾードム壊滅作戦に従い、3機のアインハンダーが出撃する。
それがアインハンダー最後の出撃となったのじゃ。

■ゲームシステム

自機の通常武器は弾数無限のショットの他に、敵の武器である「ガンポッド」を奪い取り、使用することができるのが大きな特徴じゃ。
ガンポッド通常が8種類入手条件が特別な隠しガンポッドが4種類の合計12種類で、いずれも弾数に限りがある。
また、同じガンポッドであっても、マニピュレーターで上下に切り替えることで発射方向や能力が変化する。
ガンポッドを同時に持てる数にも制限があるため、敵や場面に合わせてガンポッドを切り替えていくだけでなく、どのガンポッドを残し、どのガンポッドを捨てるのかなどの判断を常に求められる戦略性、つまり「考える」ことが重要なシューティングゲームじゃ。
さらに、特殊な条件を達成すると得られるシークレットボーナスや、連続して一定時間内に敵を倒すことで発動するスコア加算ボーナス制で、ハイスコアを狙う楽しみもあるのじゃ。
自機も3種類から選ぶことが可能で、隠し機体も用意されている。

■主な開発メンバー

本作はコナミから移籍してきたスタッフを中心に開発されている。
メインデザイナーの浅野裕治氏は、アーケード版の「グラディウスⅢ」「メタモルフィックフォース 」「究極戦隊ダダンダーン」などに参加し、後にこだわりの演出で評価の高い「オールスター・プロレスリング」シリーズのディレクターを経て、最近では「Ghostwire:Tokyo」の制作にも参加している。
また、グラフィックデザイナーの櫻井潤氏も、アーケード版「沙羅曼蛇」「魔獣の王国」「GIジョー」などコナミ時代に数々の作品を手掛け、本作の後には「ファイナルファンタジーIX」などに参加しているのじゃ。
さらに、本作の緻密な設定はカプコンで「バイオハザード」のシナリオを手掛けたプランナーの岩尾賢一氏が担当している。岩尾氏については、その後は「ファイナルファンタジーⅪ」の世界観を築き上げた人物として有名であり、本作の設定の細かさを知ると納得じゃな。

■魅力①「3Dポリゴンによる立体的かつ緻密な演出」

3Dポリゴンにより画面奥や手前からの攻撃、カメラワークなど立体的な表現ができるようになったのは、この世代のシューティングゲームの特徴じゃ。
本作では、3Dポリゴンによるリアルな表現を押し進め、敵を倒した時もただ爆発するのではなく、攻撃した部位ごとに破壊され、それによって攻撃が変化するなど、よりディティールに拘った演出で説得力を高めているのが素晴らしい。
そして、それらの表現を支えるのは、ゲーム上では表れない、細部にまで至る緻密な世界観の設定じゃ。
例えば、セレーネ軍は英語圏であり兵器は曲線形なものが多く、ゾードム軍はドイツ語圏で直線的な造形の兵器が主体などの違いがあること、そしていずれも同じ企業の規格を採用しているのでガンポッドの共用が可能など、そのままRPGにできるのではと思うほど膨大かつ緻密に積み上げられた設定があるからこそ、敵キャラの1体、背景の一部などに奥深さを与えてくれている。
各ボスキャラには細かい開発経緯なども設定されているのじゃ。
そんな魂のこもったボスキャラのモーションの作り込みは本当に凄まじく、破壊した部位による攻撃の変化、撃破時と時間切れの際の違いなど、いまだにプレイする度にこんな動きがあったのかと驚かされるくらいなのじゃよ。

■魅力②「リソース管理の戦略的な奥深さが楽しめるガンポッドシステム」

自機の通常武器は非常に弱いので、ガンポッドを敵から奪いつつ、常に残弾数を意識しながら進めていくことになる。
また、同時に所持できるガンポッドの数にも制限があるので、補充だけでなく、できるだけ残弾を使い切ったうえで新しいガンポッドに上書きするなど、常にリソース管理を念頭に置きながらプレイするのが、ゲームの戦略的な奥深さであり、面白さなのじゃ。
かといって、自由度が少ないかというとそんなことはなく、選ぶ自機のタイプによって、ガンポッドの所持数が違ったり、通常武器が強いものもあるので、攻略の幅は広い
ガンポッドの出現場所や頻度も、途中復活がしやすいようよく考えられており、スクウェアらしい親切設計が随所に盛り込まれている。
開発スタッフの元所属先であるコナミの名作シューティング「グラディウス」のパワーアップカプセルシステムも、リソース管理の要素があるが、それをさらに進化・発展させたシステムとも言えると思うのじゃ。

■魅力③「ゲーム展開とシンクロした多彩なテクノサウンド」

本作のサウンドを手掛けたのは、元コナミ矩形波倶楽部にも所属し、「サンセットライダーズ」や「XEXEX」の作曲を担当した福井健一郎氏。
戦争で荒廃した世界観に不思議にマッチした、ラップやオペラを組み合わせたそれぞれのサウンドも素晴らしいが、ゲーム中のシーンに合わせてスムーズに変化していくのがすごい。
ステージ1の道中だけで5曲も用意されていると言えば、その凄まじさが伝わると思うのじゃよ。
また、無音の使い方がうまく、全体的に読み込み時間を感じさせない作りと相まって、シーンや展開の切り替わり、静から動への変化を自然に行っているのにも注目してほしい。
ちなみに、福井氏はその後XBOX360の「プロジェクト・シルフィード」の楽曲を手掛けており、同じ3Dシューティングの革新作が思わぬところでつながることに、不思議な縁を感じるのじゃよ。

■まとめ

シューティングとは思えないほど緻密に練られた設定と、それに基づく各ステージやキャラのモーションの作り込みの凄まじさガンポッドのリソース管理による奥深い戦略性シーンに合わせたセンスの良いサウンドと、全体的な完成度とクオリティは非常に高い
シークレットボーナスなどのやりこみ要素もあり、プレイステーションのオリジナルSTGでは1、2を争う傑作だと思うのじゃ。
ただ、コントローラーのボタンをほぼすべて使う操作性や、複雑で本格的なシステムは、初心者にはハードルが高いのも事実じゃ。
その割には爽快感を押し出した売り方をしていたり、スクウェアらしい裾野の広いゲームを期待していた大半のライトユーザーと噛み合わなかった結果、正当な評価を得られないまま埋もれてしまった。
この当時、シューティングというジャンル自体が、マニアックなものになりつつあったことも原因だと思う。
近年、その完成度とセンスは今の時代でも十分に通用することが知られ、再評価されているので、ぜひプレイしてみてほしい。

■最後に

本作「アインハンダー」は、当時のスクウェアが「ファイナルファンタジーⅦ」のヒットを受けて、3DCGを活用したゲーム制作を他ジャンルに向けて展開している中で、発売された作品じゃ。
シューティングゲームとしては、かなりの本数が発売されたものの、前述したような理由でゲーム内容が正しく理解されず、また他社のスタッフを受け入れて大きく成長した同社に対する「引き抜き」的な悪印象もあり、ビジネス的には失敗という判断があったのか、その後スクウェアから続編はおろか移植やリメイクの話題が上がることはなかった。
とはいえ、2025年現在でもPS3ゲームアーカイブスでダウンロード販売しており、安価で購入してプレイする事が可能じゃ。
また、プレイステーション4で2016年に発売された「ワールド オブ ファイナルファンタジー」で自機の「アインハンダー」が登場したり、「キングダム ハーツ III」でもミニゲームであるSTG「グミシップ」でボスの「シュヴァルツガイスト」とともにゲスト出演するなど、スクウェア内部でも本作は忘れられていないことがわかる。
現行機でのダウンロード配信やリマスター移植を期待したいものじゃな。
興味を持った方にはぜひプレイしていただければ幸甚の至りじゃ。
また、369クロニクルで取り上げたゲームは、プレイ動画も公開中じゃ。
実際にプレイしながらより深く紹介しているので、興味をもったらぜひ観てくれると嬉しいのじゃ。


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浮御堂みろく@幽玄レトロゲーマー
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