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【レトロゲーム・レビュー&解説】#008 シルフィード【みろく☆クロニクル】


■シルフィード
・機種:メガCD
・ジャンル:シューティング
・発売日:1993年7月30日
・販売:ゲームアーツ
・開発:ゲームアーツ


■はじめに

このわし、浮御堂みろくがこよなく愛するゲームとその魅力を紹介する企画、それがみろく☆クロニクルじゃ。
まあ、あくまでわしの独断と偏見じゃが、皆が興味をもってプレイしたり語り合うきっかけになれば何よりじゃ。
元々はYoutubeチャンネルの動画向けの内容じゃが、記事化にあわせて若干補足・修正を加えつつ、だいたい10分程度で読み終えるようにまとめたものなので、ご承知おきいただきたい。

■概要

どのゲーム機にもその性能を十二分に使いこなして制作され、売上や知名度でそのゲーム機を代表するゲームというものがある。
今回紹介する「シルフィード」は、まさにメガCDというゲーム機を代表する作品じゃ。
1993年7月30日にゲームアーツより開発および発売された縦スクロール形式のシューティングゲームで、画面奥に向かって傾斜をつけることにより、3D的な奥行きを表現するハーフトップビューを採用している。
元々は1986年にPC-8801向けに発売された作品を、基本的なシステムはそのままに大幅にアレンジした内容となっている。
全12ステージ構成で、エンディングは一種類のみ。シールドゲージがなくなるとゲームオーバーで、一定回数のコンティニューが可能じゃ。
3Dポリゴンで自機や敵機を表現し、背景にCGアニメーションを流すなど、この当時の家庭用ゲーム機ではまだ珍しかった本格的に3DCGを活用したゲームであり、その大胆な演出は「レイストーム」や「ダライアス外伝」など、後のシューティングゲームにも大きな影響を与えた作品なのじゃ。

■ストーリー

3076年、各移民星系を突如、太陽系軍無人艦隊が襲った。
母星・地球にある銀河ネットワーク中枢フォトンコンピューター、”グレイゾン”システムが、謎のテロリストグループにネットワークジャックされたのだ。
テロリストのリーダーは “ザカリテ” と名乗った。
銀河連邦各星系の残存艦隊はザカリテを討つべく集結し、大改修および強化した有人戦術宇宙戦斗機 SA-77シルフィードを切札とし、母星地球に向けて反撃を開始した。
オリジナルとは少し違っているが、テロリストのザカリテを倒すべく戦闘機シルフィードが戦うというのは同じ設定じゃな。

■ゲームシステム

プレイヤーの武器は弾数無限のメイン武器の他に、オプション武器ステージ毎に選んで装備することができる。
メイン武器は、最初は1種類のみじゃが、獲得したスコアによって増えていき、最大4種類からステージの最初に左右別々に選択することができるのが特徴じゃ。
また、オプション武器獲得スコアによって同じく最大4種類まで増えるが、こちらは敵を倒すことで増加するオプションエネルギーを消費するため、使いすぎるとゲーム後半で使用不可になるので注意じゃ。
そのため、できるだけ序盤から確実に敵を撃破し、スコアやオプションエネルギーを稼いでいくことが重要となるわけじゃな。
また、敵の攻撃を受けると減少するシールドゲージ制を取っており、6回までのダメージに耐えることができる。
ここで、本作の特徴のひとつが、シールドがなくなった状態ですぐゲームオーバーになるわけではないということじゃ。
ダメージを受けると、武器の左右どちらかが使えなくなるかスピードダウンとなり、その状態からさらにダメージを受けた時点でゲームオーバーとなる。
徐々に機体が破壊されていく感じがよく出ていて、わしの好きな演出の一つなのじゃよ。
さらに、ステージ中には、スコアボーナスやシールド回復、一定時間無敵になるアイテムなども登場するなど、既存のシューティングゲームの定番要素をおさえつつ、独自の要素を加えたシステムとなっているのじゃ。

■主な開発メンバー

本作のディレクターを務めた宮路武氏は、オリジナルの「シルフィード」のゲームデザインを手掛けた他、セガサターンの名作「グランディア」や「ガングリフォン」などハードの性能を最大限に引き出しつつ、高い完成度の作品を生み出した天才的なゲームデザイナーじゃ。
あの「ゼビウス」を開発した遠藤雅伸氏が、かなわないと思ったプログラマーの一人と言われ、カーナビでよくある鳥瞰視点のプログラムを世界で最初に組み上げたという話もある。
残念ながら、2001年に病気のためこの世を去られている。
メインプログラマーの浜田憲一氏は、同じくセガサターンの「ガングリフォン」「ガングリフォンⅡ」などでもプログラムを担当し、「ガングリフォンブレイズ」ではゲームデザインも手掛けている。
また自機シルフィードは、「星界の紋章」などを手掛けた漫画家であり、SF小説のイラストレーターでもある米村孝一郎氏によるもので、現代でも古さを感じさせないデザインなのが素晴らしいな。

■魅力①「3DCGムービーを背景に利用した圧巻の演出表現」

本作の最大の魅力は、ゲームとしては2Dシューティングにもかかわらず、背景で最大毎秒15FPSのCGアニメーションを再生しつつ、その映像に当たり判定なども同期させるという手法で、それまでのシューティングでは表現できなかったダイナミックな演出を実現したことじゃ。
目の前で撃破される味方の戦艦、敵基地の中を縦横無尽に飛び回り、砲撃が飛び交う艦隊戦のど真ん中を突き抜けていくなどのシーンのインパクトは、まさに衝撃的じゃ。
しかも、ただ美麗な背景映像が流れるというだけだといわゆるレーザーディスクゲーム(「タイムギャル」や「サンダーストーム」など)と同じじゃが、壁や隕石に当たり判定がついているということ、そして自機や敵もポリゴンで描かれているため、映像との親和性が高く違和感がないのが素晴らしい。
味方の通信が随所に入り、臨場感や没入感を高めてくれるのも、秀逸な演出じゃ。
ナムコの「スターブレード」にも同じような演出があるが、主観視点ではなく俯瞰視点のシューティングでこういった見せ方を実現したことが、本作が画期的な点なのじゃよ。

■魅力②「メガCDの機能を十二分に引き出した高い技術力」

メガCDはこの世代のゲーム機としては破格の性能を持っているが、それでもCD-ROMである以上、一度に転送できるデータの量には制限がある。
それも最近のゲーム機とは比べ物にならないほどデータ量は少ない。
フルサイズで最大毎秒15FPSの映像を再生し続けるというのは、他のメガCDのゲームと比較してもありえないくらいに難しく、データ量を最小限におさえるために15色しか使えなかったらしい。
この15色という限られた色数で、多彩なグラフィックを描いたデザインセンスもまた素晴らしい。
映像の再生にメガCD側のCPUをフルで使用しつつ、メガドライブ側のCPUで自機や敵機などゲームとしての処理を60FPSで実施し、音楽はメガドライブのサブCPUであるZ80が主に担当する。
これらすべてを完璧に同期させるということが、どんなに高度で緻密な技術なのか、あまり詳しくないわしでも想像できるくらいなのじゃ。
ゲームアーツは、メガCD自体の設計自体にも関わっていたようで、メガCDのCDからのデータを一時的に保管するRAMの容量が6MBと、当時としては破格の大容量になったのは、ゲームアーツの要望によるものと言われているのじゃ。
まあ、そのせいでメガCDの価格が49,800円と高額になったという噂もあるのじゃが。

■魅力③「SF作品としての志とこだわり」

スタッフクレジットによると、本作に用いられる宇宙空間の映像は、NASA日本天文学会からデータの提供を受けている。
また、CGなどゲーム内のデザインには、多くのSFアニメのデザインなどを手掛けたデザイン工房戦船も関わっている。
さらに、地球や月の地形は、当時最新のフラクタル理論を用いて描かれるなど、随所にSF作品としてのこだわりが感じられるのじゃ。
スターウォーズ」などのSF映画を思わせるCGムービー、人間のキャラクターを登場させないことで国籍を意識させない工夫、全編英語のナレーションに日本語字幕が入るなど、単に日本国内向けというのではなく、世界に通用するSF作品を創り上げようという志があったのではないじゃろうか。
現在でもメガCD、そしてゲームアーツの代表作として、時代を超えて海外でも多くのファンから愛されているのは、その高い志ゆえの普遍性を持っているからだと思うのじゃよ。

■まとめ

ゲームアーツの作品全般に言えることじゃが、ハードウェアの限界や性能を知った上で、ソフトウェアの技術とセンスを駆使して自分たちの表現を実現しようという、この時代の開発者の方々の気概が感じられる作品じゃ。
シューティングゲームとしては画期的なシステムではないが、左右の装備の使い分けやオプション武器の使いどころなど、戦略的な面白さがあり、何よりプレイヤーを飽きさせない各ステージの演出は必見じゃ。
ゲームアーツ作品に多く関わったメカノアソシエイツによる楽曲も素晴らしく、まるで一本の映画を見終えたあとのようなエンディング後の満足感は、ぜひ体験してほしい。
わしとしては、演出面ではステージ8の艦隊戦がお気に入りで、楽曲としてはステージ5の亜空間ステージが一番好きなのじゃよ。

■最後に

本作「シルフィード」は、当時はメガCDユーザーが全員が購入したのではないかというくらいの売れ行きだったが、いかんせんメガCD自体が38万台程度しか売れていないことと、メガCDに特化した作りだったこともあり他機種に移植がされず、かなりプレイが難しいゲームの一つだったのじゃ。
しかし、メガドライブミニ2に収録されたことで、はじめて実機以外でプレイできる環境ができたと言える。
残念ながらメガドライブミニ2自体も限定生産だったこともあり、かなりプレミア商品になってきてしまったので、ダウンロード配信などでの移植を期待したい。
興味を持った方にはぜひプレイしていただければ幸甚の至りじゃ。
また、369クロニクルで取り上げたゲームは、プレイ動画も公開中じゃ。
実際にプレイしながらより深く紹介しているので、興味をもったらぜひ観てくれると嬉しいのじゃ。


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浮御堂みろく@幽玄レトロゲーマー
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