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【レトロゲーム・レビュー&解説】#007 ザ・ファイヤーメン【みろく☆クロニクル】


■ザ・ファイヤーメン
・機種:スーパーファミコン
・ジャンル:アクション
・発売日:1994年9月9日
・販売:ヒューマン
・開発:ヒューマン


■はじめに

このわし、浮御堂みろくがこよなく愛するゲームとその魅力を紹介する企画、それがみろく☆クロニクルじゃ。
まあ、あくまでわしの独断と偏見じゃが、皆が興味をもってプレイしたり語り合うきっかけになれば何よりじゃ。
元々はYoutubeチャンネルの動画向けの内容じゃが、記事化にあわせて若干補足・修正を加えつつ、だいたい10分程度で読み終えるようにまとめたものなので、ご承知おきいただきたい。

■概要

今回紹介する「ザ・ファイアーメン」は、「消防士」という題材を本格的にゲーム化することに成功したはじめての作品じゃ。
1994年9月9日にヒューマンより開発、発売されたスーパーファミコン用タイトルで、ジャンルはトップビュー形式のアクションシューティングじゃな。
全6ステージで、各ステージの最後にいるボスを倒すことでステージクリアとなる。
エンディングは一種類のみじゃが、消火率や救助者の数によってクリアランクが表示される違いがある。
本作は、映画的な臨場感をゲームで表現するというコンセプトで制作された「シネマティックライブ」シリーズの第2作目であり、第1作目の「セプテントリオン」、最終作である「クロックタワー」とあわせて、シリーズ三部作と言われているのじゃ。
また、当時ヒューマンは、「ヒューマンクリエイティヴスクール」というゲーム開発系の専門学校を経営しており、このシリーズ自体その中で実施された「生徒作品商品化プロジェクト」によって生まれたゲームでもある。
いずれのゲームも、学生らしい、今までのゲームにない個性的な視点やアイデアで、後のゲームにも影響を与えた作品じゃな。

■ストーリー

西暦2010年、文明が進んだといっても今より少しだけ生活が楽になった程度の時代。
クリスマスの夜、化学薬品の製造をするメトロテック社のクリスマスパーティーの会場で火災が発生した。
地下室には開発中のMDLという薬品があり、その薬品に引火すると大爆発を起こす可能性があるという。
D地区消防署第一小隊のリーダーであるピートは相棒であるダニーと共に、ビルに乗り込んだ。
捜査員のマックスウォルター、そして記録員のウィノナとともに、MDLを回収し火災を鎮火するのだ、という内容じゃ。
シネマティックライブ」の名の通り、映画「タワーリング・インフェルノ」を彷彿とさせるストーリーとなっているのじゃ。
ちなみに、MDLというのは、「Most Dangerous Liquid(最も危険な液体)」の略で、開発コードネームらしい。

■ゲームシステム

プレイヤーは、放水担当のピートを操作し、地上の炎を消す下放水と、遠くまで届く上放水の、2種類の放水を使って消火していく。
放水は移動と同じく8方向であり、LRボタンで放水の角度を固定しながら移動できる他、消火爆弾、いわゆるボムもある。
特定のアイテムを取ることで放水の威力を強化できるが、ダメージを受けると元に戻ってしまう。
炎などに接触するとライフが減り、ライフが無くなるか、残りタイムがゼロになるとゲームオーバーじゃ。
相棒のダニー自動で行動し、機械を操作したり斧で炎を薙ぎ払ったりなどピートをサポートしてくれる。
しかもダニーは無敵なので、ダニーとの連携がこのゲームのポイントじゃな。
ちなみに、ステージクリアの条件は時間内にクリアすることなので、すべてのフロアを消火する必要はない

■主な開発メンバー

本作のオープニングおよびエンディングを担当した守屋俊氏は、その後「ファイナルファンタジーⅦ」や「ファイナルファンタジーⅧ」にプログラマーとして参加し、その後は「ゼルダの伝説 時のオカリナ」や、最近ではSwitch版の「ゼルダの伝説 夢をみる島」も手掛けているのじゃ。
また、背景などのグラフィックを担当したのは吉岡雅之氏。
本作の続編「ザ・ファイアーメン2」や「グローランサー」を手掛け、「ファイナルファンタジー零式」では背景映像を担当するなど3DCGにも活躍の場を広げている。
そして、本作でゲームデザイナーとしてデビューした石塚体一(いしづかたいち)氏は、ミステリー映画をモチーフにした「ミザーナフォールズ」、本作の精神的続編とも言える消防士をテーマにした「ハードラック」など、一貫して映画を意識した作品を手掛けている。
現在はゲーム業界を離れてカナダで山岳ガイド会社、ヤムナスカ・マウンテン・ツアーズの社長を務めているとのことじゃ。

■魅力①「炎を敵として捉えた画期的なゲームデザイン」

本作は「火を消す」ことがゲームの目的になるわけじゃが、火を単なる障害物だけではなく、画期的なのは縦横無尽に動き回る「敵」としてデザインしたことじゃ。
最初は単調に近づいてくるだけだが、ステージが進むにしたがって高速で突進してきたり、近づくと拡散したりとパターンが増え、プレイヤーを飽きさせない。
もちろん、ボスは予測不能に暴れまわる業火として苦労させられる。
まさに「火は生き物」として描かれており、これはアイデアとして非常によくできていると思うのじゃよ。
バックドラフト消火爆弾など消防士ならではの要素を取り入れているのも面白いな。

■魅力②「映画を意識したドラマティックな演出」

ゲームデザインを担当した石塚氏映画好きであることを公言しており、本作は映画「タワーリング・インフェルノ」に大きな影響を受けていると思われる。
主人公がベテランの消防士と若い相棒であることや、同じ消防チームのメンバーのやり取りなどは、台詞回しも含めて洋画やアメリカのドラマのような雰囲気を感じさせる。
刻一刻と変化していく火災現場の状況、ビルの設計者との意見のぶつかりあい救助者の人間関係ややりとりなど、まさに「シネマティックライブ」の名にふさわしく、明らかに大人の視聴に耐えうる表現を目指しているのが伝わってくるのじゃ。
ザ・ファイアーメン」というタイトルの意味がわかる演出や、ところどころに出てくるアメリカンジョーク的な言い回しはわしのお気に入りなのじゃよ。

■魅力③「アクションゲームとして優れたゲームシステム」

映画的、というと、ともすればゲーム性が犠牲になることが多いが、本作の素晴らしいところはアクションゲームとして非常にシステムが練られているということじゃ。
エリア内が未消火だとゴウゴウという音でわかることや、救助者が近づくと警告音で教えてくれるなどの基本的な部分はもちろんだが、ステージの進行に伴い敵やトラップが少しずつ複雑になっていき、それを攻略していく中で自然とプレイヤーが匍匐前進や角度固定などの難しい操作も使いこなしていけるようになっているのが素晴らしい。
スーパーマリオブラザーズ」など、優れたアクションゲームに共通する「ゲーム展開が自然とチュートリアルになっている」というやつじゃな。
無敵キャラピート初心者救済になっていることや、消火率100%を目指すやりこみ要素があるなど、遊び方の幅広さもよく考えられているのじゃよ。

■まとめ

消防士として火を消す」「映画を意識した演出」というアイデアを、アクションゲームとしてしっかりシステムに落とし込み、テンポの良さや難易度も含めて絶妙なバランスの「ゲームと映画の融合」の成功例、まさに本作「ザ・ファイアーメン」はそういうゲームだと思うのじゃ。
あまりに完成されすぎていて、なかなか本作に匹敵する同種のゲームが出てこなかったくらいじゃ。
セガサターンで発売された「バーニングレンジャー」が、本作のコンセプトを昇華した作品と言えるかもしれないな。
しかし、発売されたのがスーパーファミコン後期という、プレイステーションやセガサターンなどのビジュアルや複雑なシステムが売りのゲームが多くなる時期だったため、あまり目立たなかったのが残念じゃ。
純粋なアクションゲームとしても、非常によく出来ているゲームなのじゃ。
若者のアイデアを具現化し、新しいゲームを生み出すという当時のヒューマンの取り組みにも、あらためて敬意を表したいな。

■最後に

ザ・ファイアーメン」は、残念ながら2024年現在、移植や復刻版がなく、プレイするにはスーパーファミコンのオリジナル版しかない。できれば、ダウンロード配信などでの移植を期待したいところじゃな。
興味を持った方にはぜひプレイしていただければ幸甚の至りじゃ。
また、369クロニクルで取り上げたゲームは、プレイ動画も公開中じゃ。
実際にプレイしながらより深く紹介しているので、興味をもったらぜひ観てくれると嬉しいのじゃ。


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浮御堂みろく@幽玄レトロゲーマー
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