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【レトロゲーム・レビュー&解説】#003 エレメンタルマスター【みろく☆クロニクル】


■エレメンタルマスター
・機種:メガドライブ
・ジャンル:シューティング
・発売日:1990年12月14日
・販売:テクノソフト
・開発:テクノソフト


■はじめに

このわし、浮御堂みろくがこよなく愛するゲームとその魅力を紹介する企画、それがみろく☆クロニクルじゃ。
まあ、あくまでわしの独断と偏見じゃが、皆が興味をもってプレイしたり語り合うきっかけになれば何よりじゃ。
元々はYoutubeチャンネルの動画向けの内容じゃが、記事化にあわせて若干補足・修正を加えつつ、だいたい10分程度で読み終えるようにまとめたものなので、ご承知おきいただきたい。

■概要

今回紹介するのは、「エレメンタルマスター」じゃ!
本作は、1990年12月14日にメガドライブ用ソフトとして、テクノソフトから発売された、同社にしては珍しい縦スクロール形式のシューティングゲームじゃ。
開発・販売時期が近い「サンダーフォースⅢ」と同様に、前半はステージ選択式で、武器システムも似ているが、ファンタジー的な世界観をベースにビジュアルシーンをふんだんに盛り込むなどストーリーを重視したつくりとなっている。
縦と横、ファンタジーとSFと方向性の違いはあれど、一部のSEが共通だったりと、「サンダーフォースⅢ」とは異母兄弟のような作品じゃ。
ライフ制ということもあり、難易度はそれほど高くはなく、慣れればクリア自体はしやすいのが良いな。
全7ステージエンディングは一種類のみとなっており、難易度によってエンディングが変わるなどの要素はない。
本作を手掛けたテクノソフトは、メガドライブの最古参サードパーティとして「サンダーフォース」シリーズをはじめとした数多くの硬派なゲーム作りでセガユーザーからは絶大な信頼を受けてきたゲームメーカーじゃ。
得意とするシューティングゲーム以外にもリアルタイムシミュレーションゲームの「ヘルツォーク」シリーズや「ネオリュード」というRPGなど、いずれも独創的なシステムと高い技術力、丁寧な作り込みで評価されるゲームを数多く残しているが、残念ながら2001年に法人としての活動は終了している。

■ストーリー

精霊の都ローライルを襲った謎の魔導士、骸羅王を追い詰めた主人公の精霊使い・ラディン
しかし、ラディンを待っていたのは、骸羅王として変わり果てた兄、ロキだった。
骸羅王ロキの部下、妖姫サロメ黒竜王グラスによって、ローライル王は囚われ、地火風水の大精霊の力も封じられてしまった。
ラディンは、大精霊を助け出し、ローライルの都に平和を取り戻すため、骸羅王のあとを追う、という内容で、そのままRPGにできそうなストーリーとなっている。
オープニングやステージの合間には、ストーリーの展開にあわせてビジュアルシーンが挿入され、物語を盛り上げてくれる。
ファンタジー的な世界観のシューティングというと、「キングスナイト」や「ドラゴンスピリット」が有名だが、それらの作品と比べても、そのインパクトは本作の大きな魅力と言えるのじゃ。

■ゲームシステム

操作方法は、Bボタンが前方、Cボタンが後方へのショットとなっている。
ステージの進行に従い、ボタンを長押しすることで画面右のゲージが溜まり、チャージ攻撃をすることができるようになる。
そのため、一度ボタンを押すとしばらく連射が続くので、連打というよりはポンポンとテンポよく押すような、セミオート連射になっている。
後方に攻撃できるというのは本作の大きな特徴じゃ。
敵が前後左右から攻撃してくるので、出現位置にあわせて前後へのショットをうまく切り替えていくという戦略性が求められるわけじゃな。
アイテムについては、ステージ上の固定位置に宝箱があり、破壊することで様々な効果が得られる。
生命の実がライフ回復、紫水晶がバリア、そして金色の器みたいな神秘の薬をとるとライフの上限が上がる。
また、幻影の鏡を取ると残像が出現し攻撃してくれるようになる。
いわゆるオプションじゃな。
ライフがゼロになるとゲームオーバーで、5回までコンティニューが可能じゃ。

■主な開発メンバー

本作はエンドロールを見ても、開発スタッフのほとんどがニックネームで記載されていることもあり、詳細は不明じゃ。
ただ、開発時期が近かったこともあり、「サンダーフォースⅢ」のスタッフが多く関わっていることがわかる。
例えば、敵移動プログラム担当の「マイペースがんちゃん」は、「サンダーフォースⅢ」のステージデザインやプログラムを担当し、その後も「バルクスラッシュ」やマリオパーティシリーズなどを手掛けた岩永孝氏と思われる。
また、敵キャラやデモのグラフィックを担当したパンクス・ムートン氏は、同じく「サンダーフォースⅢ」でデザインを手掛けた武藤洋一氏ではないかと思う。
ただ、作曲担当については、発売されたサウンドトラックから判明していて、「サンダーフォースⅤ」「ハイパーデュエル」「ネオリュード」などで素晴らしい楽曲を残した新井直介氏はその一人じゃ。
そして、「サンダーフォースⅢ」や続編のⅣの楽曲も手掛けた山西利治氏は、その後ガストに移籍し、アトリエシリーズの1作目である「マリーのアトリエ」のディレクター及び楽曲担当を務めている。
楽曲制作だけでなく、サウンドドライバ自体の開発も手掛けるなど、テクノソフトならではの個性を作り上げたサウンドクリエイターともいうべき方々じゃな。

■魅力①「ファンタジーの世界観とストーリー・演出」

本作の最大の魅力は、なんといってもそのファンタジーの世界観へのこだわりじゃ。
テンポやスピード感が重視されるシューティングというゲームジャンルと、じっくり世界観やストーリーを楽しむファンタジーを組み合わせるというのは、非常にバランスが難しく、ともすればどちらの良さも殺しかねない。
本作では、ストーリーの展開の上で節目となるビジュアルシーンが非常によく考えられており、登場人物の会話を主軸に簡潔かつわかりやすい内容になっている。
かといって物足りないということもなく、スクロールなどで動きをつけることで、ゲームの進行を妨げないよう、テンポよく見せることに成功していると思うのじゃ。
ステージクリアごと毎回入るわけではないところもポイントじゃな。
各ステージでボスを倒し、封じられた精霊の力を開放することで、使用できる武器が増えていくというのも、いわゆるファンタジーRPG的な展開に沿っている。
また、最初のステージをクリアすると、妖精のニーネが仲間に加わるが、ステージ2以降ではゲーム中にもしっかりニーネが登場し、攻撃に参加してくれるなどの演出も細かい。
チャージ攻撃が上級魔法、というのも、詠唱時間の長さと攻撃の強力さがトレードオフになっていて、納得感がある。
ゲームの展開とストーリーが自然な形でリンクしているのが素晴らしい。
突如悪の王となった兄を追って旅に出た主人公が、妖精を仲間にし、各地で精霊を開放してその力を得て強くなっていく、という展開は、そのままRPGにしても良いくらい、しっかりとまとまっており、本作の大きな魅力だと思うのじゃよ。

■魅力②「サンダーフォースⅢから受け継いだ完成度の高いゲームシステム」

前述したとおり、本作のゲームシステムは、横スクロールと縦スクロールの違いはあるが、「サンダーフォースⅢ」にかなり近い。
SEを流用していることも含めて、使いまわしているような印象を持つ人もいると思われるが、それだけシステム的な完成度が高いということでもある。
しかも、ただ使いまわしているだけではなく、前後にショット方向を切り替えられるという新しい要素が、前後左右どこから敵が出てくるかわからない、という緊張感や面白さにつながる。
特にボス戦では巨大な敵キャラが画面いっぱいに動き回るので、自分も自由な位置取りで回り込んで後ろから攻撃するなど、通常のシューティングでは味わえない楽しさがあるのじゃよ。
あとは、「サンダーフォースⅢ」にはなかった要素として、チャージ攻撃ができるため、ステージ攻略の幅が広がり、よりプレイヤーなりの楽しみ方が増えたということもいえる。
さらに、興味深いことに、続編となる「サンダーフォースⅣ」では、このチャージ攻撃だけでなく、シューティングゲームでありながらステージ中にストーリー的な演出や、使用できる武器が増えるなど、この「エレメンタルマスター」の要素が取り入れられている。
つまり、本作は「サンダーフォースⅣ」制作に向けた実験的な要素を取り入れた作品であり、「サンダーフォースⅢ」と「Ⅳ」をつなぐ存在であるとも言えるのではないかとわしは思うのじゃ。

■魅力③「プレイヤーを飽きさせないドラマティックなストーリーと演出」

タイトル画面からギンギンに鳴り響くFMサウンドは、まさに「サンダーフォースⅢ」を彷彿とするテンションでプレイヤーを盛り上げてくれる。
本作のオープニングとステージ1を手掛けたのが新井直介氏、その他の楽曲は山西利治氏が担当している。
全体的には、シューティングゲームらしい疾走感がありつつも、メロディラインが重厚で、ファンタジーならではの世界観を見事に表現しているのじゃ。
通常ステージでは勇壮かつドラマティックなメロディ、そしてボス戦はFM音源の激しいドラム音と、メリハリのある構成となっている。
そのクラシカルな要素を取り入れた楽曲の数々は、サンダーフォースシリーズとは似ているようでしっかり差別化されており、さすがだと思うのじゃよ。
特に、わしは火のステージのBGMである「火炎の舞い」が大好きで、主人公の危機的な状況を踏まえた緊張感や焦燥感だけでなくファンタジーらしい荘厳な雰囲気さえ感じさせてくれる。
あのテクノソフトが手掛けたファンタジックなシューティング、という期待を裏切らない素晴らしいBGMなのじゃ。
本作のサウンドトラックはリリース当時に発売されたあと、なんと2022年にあらためてデジタルレコーディングで復刻されており、時を経てなお高く評価されているということじゃな。
のちに名作「マリーのアトリエ」シリーズの音楽を手掛けるメイン作曲家、山西利治氏のサウンドが、ファンタジーという世界観に合っていたことを、本作は図らずとも証明していたのかも知れないな。

■まとめ

本作「エレメンタルマスター」は、テクノソフトのシューティングゲームという意味では、ちょっと異色の内容で、発売時期が「サンダーフォースⅢ」とⅣという名作の間に挟まれたこともあり、知名度はあまり高くない。
しかし、多関節キャラがグリグリと動き、多彩なグラフィックのステージ、荘厳かつノリのよいBGM、ファンタジーの世界観とストーリーをテンポよく組み込んだドラマティックな演出と、高次元でまとまっており、まさにシューティングの匠であるテクノソフトらしい完成度じゃ。
ライフ制で、しかも回復アイテムも出るので、難易度面での間口の広さも良いな。
プレイヤーに強烈な印象を与えた冒頭の骸羅王のデモシーンでネタ的に話題になることが多いが、ストーリーとしても最後までしっかり描ききっていて一つの物語としても完成しているのはもっと評価されてほしいところじゃ。
シューティングゲームでありながら、ビジュアルシーンだけに頼らずにドラマティックなストーリーを描く、という挑戦が、わしの大好きなところなんじゃよ。
この方向性をさらに昇華した先に、「サンダーフォースⅣ」、そして名作「サンダーフォースⅤ」があることを考えると、それらの作品が好きな人にはぜひプレイしてほしいゲームじゃ。
珠玉のサウンドに浸りながらプレイすると、後の名作に受け継がれる魂をあちこちに感じることができると思うのじゃよ。

■最後に

エレメンタルマスター」はセガサターンなどに移植されている「サンダーフォース」シリーズと違い、移植されておらず、現在の環境でプレイするのが難しい。
2022年10月27日に発売された「ジェネシスミニ2」に収録されたのみなので、ぜひ何らかの形で復刻されることを願っているのじゃよ。
興味を持った方にはぜひプレイしていただければ幸甚の至りじゃ。
また、369クロニクルで取り上げたゲームは、プレイ動画も公開中じゃ。
実際にプレイしながらより深く紹介しているので、興味をもったらぜひ観てくれると嬉しいのじゃ。


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