【レトロゲーム・レビュー&解説】#006 ジノーグ【みろく☆クロニクル】
■ジノーグ
・機種:メガドライブ
・ジャンル:シューティング
・発売日:1991年1月25日
・販売:メサイヤ
・開発:メサイヤ
■はじめに
このわし、浮御堂みろくがこよなく愛するゲームとその魅力を紹介する企画、それがみろく☆クロニクルじゃ。
まあ、あくまでわしの独断と偏見じゃが、皆が興味をもってプレイしたり語り合うきっかけになれば何よりじゃ。
元々はYoutubeチャンネルの動画向けの内容じゃが、記事化にあわせて若干補足・修正を加えつつ、だいたい10分程度で読み終えるようにまとめたものなので、ご承知おきいただきたい。
■概要
わしは、ゲームとは遊びであると同時に、映画と同じような総合芸術だと思っているのじゃが、時として商業的な成功を全く考えていないような、芸術性に偏った作品が生まれることがある。
名作と呼ばれることはなくても、その突き抜けた独創性は多くの人たちに強烈な印象を刻んで語り継がれていく。
今回紹介する「ジノーグ」は、そんなゲームの一つじゃ。
本作は、1992年12月18日に日本コンピュータシステムことメサイヤが開発・販売したメガドライブ用タイトルじゃ。
ジャンルとしてはオーソドックスな横スクロール形式のシューティングゲームじゃな。
全6ステージの構成となっており、エンディングは1種類のみで、難易度により一部のメッセージに違いがあるくらいじゃ。
残機制でコンティニューも可能だが、回数に制限がある。
「ラングリッサー」や「重装機兵」シリーズなど、メサイヤが数多くの個性的なゲームを世に送り出していた時期の作品じゃな。
■ストーリー
科学の発展とともに人類はその力だけでなく、悪逆な野心をも増大させていった。
一方、人々の恐怖や迷信や幻想を力の源としていた魔族たちは、徐々にその力を失いつつあり、ついに人々の持つ悪しき野心を糧に、最後の反撃を企てた。
その時、自らを含めた魔族全体の存続の危機を知った翼族の若者が、悪の精神の拡散を防ぐために、悪しき野望に染まった同胞たちとの戦いに立ち上がった、という設定じゃ。
悪逆な野心を増大する人間世界を背景にした、魔族対魔族の戦いという世界観が、より退廃的でダークな雰囲気を高めてくれるのじゃ。
■ゲームシステム
攻撃方法は、ノーマルショットと魔法攻撃の2種類じゃ。
ノーマルショットは、アイテムを取ることで3パターンに変化する他、青のオーブを取ることで攻撃力が、赤のオーブをとることで攻撃範囲がそれぞれ最大5段階まで強化される。
羽をとることでスピードアップも可能じゃ。
残機が減ると、パワーアップやスピードが1段階だけ下がってしまう。
魔法攻撃は少し特殊で、8種類の巻物を取ることで、大型の火球を放つエナジーボールなどの攻撃系以外にも、時間制限のバリアや、ノーマルショットの弾が大きくなるワイルドファイアなどが使用できる。
最大3つまでストックすることができ、同じ巻物をストックしていると、発動したときに最大3段階まで強化される。
ただ、弾数制限があるものが多いのと、巻物自体が種類が多いわりに出現頻度が低いので、積極的に使っていくことをおすすめするのじゃ。
■主な開発メンバー
本作のディレクターである高杉学氏は、みろく☆クロニクル#005で紹介した「改造町人シュビビンマン」でエグゼクティブリーダーを担当していた人物じゃ。
その後、「重装機兵レイノス」でプログラムを担当した後、本作を手掛け、「ラングリッサー」ではプロデューサーを務めるなど、メサイヤを代表する個性的な作品を作り上げている。
いずれも独特の世界観とこだわりを感じる作品ばかりで、本作の徹底した世界観の表現に大きな影響があったと思うのじゃ。
本作のボスキャラなど主要キャラクターのデザインを担当したのは、アーティストとして現在も活躍中の仲井さとし氏。
「重装機兵ヴァルケン」のメカニックデザインや「カルドセプト」のモンスターデザインも手掛けており、その独特の世界観はまさに芸術じゃ。
そして、音楽を担当しているのは、後に「ラングリッサー」シリーズや「LUNAR」シリーズ、「グランディア」などの楽曲を手掛け、ゲーム音楽に限らず世界でも活躍する作曲家である岩垂徳行氏じゃ。
メガドライブでは、他に「鋼鉄帝国」や「スペースインベーダー」なども手掛けていて、当時まだ二十代半ばなのにその音楽的な引き出しの幅広さには驚かされるのじゃよ。
■魅力①「グロテスクだけではない、独創的なキャラクターデザイン」
本作の最大の特徴ともいえるのは、なんといっても「人間と機械の融合」というテーマを元に描かれたボスキャラクターのデザインじゃ。
「人間機関車」「海底船長」「工場長」など、そのデザインだけでなく凄まじいまでの細かいドット絵の描き込みで、もはやアートといってもいいほどのクオリティじゃ。
「科学技術の発達で増大した人間の悪逆さを悪魔の力で具現化した」というテーマが、ただグロテスクなだけでなく、人間としての本能が揺さぶられるような一貫した芸術性を表現していると思うのじゃよ。
もちろん、キャラクターだけではない。
「人間製造工場」や「魔物の腹」といったステージの背景グラフィックも、本作の頽廃的かつ背徳感の漂う世界観を見事に描いているのじゃ。
■魅力②「終末の戦いを彩る重厚かつ荘厳なBGM」
本作のBGMは、神魔の戦いを描くかのように、全体を通して重厚な音色で制作されており、FM音源の魅力を存分に堪能できる。
しかも、ステージ1から2あたりまでは勇壮さや疾走感を、中盤のステージ3から4ではバロック調で荘厳さを、そして、ステージ5では狂気をはらんだメロディラインと、ステージ展開にあわせて変化させているのも素晴らしい。
最終ステージの描き方も含めて、ゲーム内容と楽曲が見事に連動しているというのが本作の芸術性をより高めてくれているのじゃ。
後に数々の名作RPGの楽曲を手掛ける岩垂徳行氏らしく、ストーリー性を感じる楽曲にもぜひ注目してほしい。
■魅力③「徹底した世界観へのこだわり」
本作は、人間はその力の増大とともに悪逆な野心が増大し、その影響で滅びかけた魔族は人間の野心を糧に最後の反撃を試み、主人公はそれらを防ぐために同族である魔族に戦いを挑むという、勝っても負けてもその先には絶望しか無いような世界観を元に制作されている。
キャラクターもステージ背景も、人間の心理の負の部分が凝縮されたかのように描かれ、楽曲もまた世界の終末を彩るように荘厳かつ殺伐とした曲調で、あたたかさやぬくもりを感じさせない。
これは、それぞれのクリエイターが企画のコンセプトに沿って制作した結果であり、これらをまとめあげたディレクターの高杉氏の手腕によるところが大きいと思うのじゃ。
このこだわりがあったからこそ本作はまさに総合芸術と言える作品であり、今もなお多くのファンを惹きつける魅力を持っているのじゃよ。
■まとめ
巻物がいまいち役に立っていなかったり、音楽もシューティングとしては地味だったりと、ゲームとしての完成度はそれほど高いわけではないが、それを補ってあまりある独特の世界観は、まさに本作「ジノーグ」にしか無い魅力じゃ。
難易度も比較的高く、後半はかなり苦労することになるが、そういった点も含めて、他に類を見ない突き抜けた個性は、手元に置いて時々プレイしてみたくなる作品なのじゃよ。
商業的に大きな売上が見込めるような内容ではないにかかわらず、本作を世に送り出した当時のメサイヤの英断には敬意を表したい。
また、本作については、同じメサイヤの「超兄貴」との関係性がよく言われるが、実は制作スタッフはほとんど被っておらず、あくまでデザインなど一部をなぞっただけで、コンセプトや方向性も別物で、個人的にはほとんど関係はないと思う。
まあ、突き抜けたコンセプト、世界観という意味では、両者に通じるものはあるし、わしも「超兄貴」自体は大好きな作品の一つなのじゃよ。
■最後に
「ジノーグ」は海外にもその芸術性の高さから多くのファンがいるようで、移植には恵まれており、現在Nintendo SwitchやXBOX、PS4/PS5などでダウンロード配信されており、気軽に遊ぶことができる。
興味を持った方にはぜひプレイしていただければ幸甚の至りじゃ。
また、369クロニクルで取り上げたゲームは、プレイ動画も公開中じゃ。
実際にプレイしながらより深く紹介しているので、興味をもったらぜひ観てくれると嬉しいのじゃ。
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