「陰謀論チャート」について
世のなか、陰謀論花盛り。
陰謀論は21世紀の現代社会特有のものではない。人類が社会を構成した歴史が始まって以来、他者が何かを企てて自分達の安全を脅かしているという怖れは、いつの時代でもどこにでもあるだろう。そして、それが真っ当な危機意識であるときもあれば、社会にとって有益なものだろう。
しかし、その恐怖がパラノイアのように凝り固まってしまうと話は別だ。
インターネットは、これまでになかった速度で拡散させて、思わぬ影響力を与えてしまう。賢明たるには、これらの情報の峻別が必要だ。
荒唐無稽なものであっても、時にそれは危険なものになりうる。
そのためにつくられた陰謀論チャートというのがある。英語である。今回、これをつくったアビー・リチャーズ女史に日本語訳の許可を正式にいただいたので、こちらに掲載して、めくるめく陰謀論の世界に詳しくない人のために、上から順にひとつひとつ解説していこうと思う。
最上段からコアで危険な電波な陰謀論。現実から乖離してトンデモの世界である。あなたの友人がこのへんについて語っていたりすれば要注意だ。下にさがるにつれ、少しずつ危険性は減ってはいくが、実はその最後には・・・。
それでは始めよう。
米匿名掲示板「4ch」発の陰謀論
◆「Qアノン」
◆「白うさぎを追え」
まずは、もはやおなじみのアメリカの匿名掲示版の4ch発の陰謀論だ。解説の必要はないかもしれないが、日本の方々のために書いておくとすると、この4chanを経営しているのは、昨今なぜか論破王や実業家などと呼ばれてやたらとメディアに出てくる、あの西村博之氏だ。日本でネトウヨを生み出したといっても過言がない2ちゃんねるを経営していた(現在は経営陣の内紛により追放されている) 西村氏だが、アメリカでQアノンまで育てたというのは驚きの事実でもある。
さてその「Qアノン」とは、4chに投稿された「Q」と名乗る固定ハンドルネームと、そのQが語る一連の陰謀論を信じ込んでしまった信者のことを指す。バカにするなかれ、もちろんこれがアメリカで大変なことになってしまったのはご承知のとおり。
なお現在、世界の陰謀論研究家やジャーナリストは「Q」とはいったい誰なのかと正体を解き明かそうとやっきになっているが、アメリカのHBO Maxで放映されたドキュメンタリー「Q:Into the storm」では、それが札幌在住の5ちゃんねる(西村博之氏が経営問題のはてに2ちゃんねるを手放したあとに改名された)の管理人でもあったロン・ワトキンスであると伝えられている。これが本当ならば、Qアノンは日本発ということになる。
「白うさぎを追え」というのは、そのQアノン信者のキャッチフレーズのひとつ。映画『マトリックス』でも出てきましたが、もともとは『不思議の国のアリス』が出典。アリスのように白ウサギを追って行けば、やがて穴に落ち、そこには不思議の国の「真実」が待ち受けてます。ファンタジーですね。
古典的陰謀論からトンデモまで融合し変成する陰謀論
◆「ディープステーツ」
◆「シオンの議定書」
◆「イルミナティ」
◆「ニューワールドオーダー」
それぞれ世界はある秘密の勢力が牛耳っているというパラノイアのバリエーションである。この手の陰謀論の歴史は古くからあり、有名なところではユダヤ資本が世界を支配しているというものになるだろう。しかし、最近では様々な陰謀論が合流し、もはや収拾がつかないくらいの荒唐無稽なものになり果てている。
ちなみに、このへんのキーワードが出てくる投資話が流行中と聞きます。これもまた要注意。暗号通貨などとセットに出てきたら、まずは疑ってみるのが賢明。気をつけてほしい。
◆「地球平面説」
アメリカではこれを信じる人は「フラットアーサー」と呼ばれています。地球は円盤のようになっているという説で、その果ては南極や北極の氷があって進めないらしい。
これも別に人畜無害じゃね?と思っていたが、どうやらユダヤ陰謀論やQと最近では結びついているらしく……。政府の言うことはウソであるという懐疑の果てにたどり着くのがこういうところなようである。
◆「爬虫類人、人類征服計画」
そんなもん信じてもらっても別に危険ではないのでは?と思われる方もいらっしゃるだろう。自分もつい最近まではそう思っていた。ところが、昨年のクリスマスに起きた、アメリカのナッシュビルの爆破事件の犯人がどうやらこの爬虫類人を信じてしまっていた人のようで・・・。
この爬虫類人、日本ではずいぶん前から日本の一部の好事家にはよく知られていたのだが、それはかつて新左翼のカリスマと言われていた太田龍という人がこれにハマってしまっていたからである。新左翼活動家から反差別活動家やエコロジストを経て陰謀論者へと昇華されていくコースは、ちょっとした定番のキマリ方でもあるのだが、それにしてもあの新左翼の有名イデオローグが、爬虫類人が世界を支配していると言い出したのは、その業界ではどう言っていいのか皆わからなくて困惑する事態となった。
これを書くにあたり、この爬虫類人陰謀論の教祖デーヴィド・アイク著/太田龍監訳の大著『爬虫類人(レプティリアン) 大いなる秘密』(三交社)の上下巻を取り寄せ、読もうとかんばりましたが、20ページくらいで断念してしまった。本当に申し訳ない。
なお太田龍は『日本人が知らない「人類支配者」の正体』(ヒカルランド)という本を、あの船井総研総帥の船井幸雄氏と共著で出されてもおられる。この船井氏もいろいろとキツイ方である……。
「反富裕層」と「幼児虐待」の悪魔合体
◆「セレブ御用達のペニスフェイシャル」
◆「アドレノクロム」
◆「悪魔崇拝者が幼児虐待」
◆「火星に子供を性奴隷にしている植民地がある」
◆「ウェイフェアゲート」
ハリウッド女優の大御所サンドラ・ブロックやケイト・ブランシェットなどが使っている美顔療法、通称「ペニスフェイシャル」が一時期話題になった。ペニスの包皮からとられた成分からつくられた美容成分を肌に施術するというものというのが、サンドラ・ブロックのトークバラエティショーでの説明。これが大きな話題になったばかりか、陰謀論者をも吸引したのである。
なぜこれが陰謀論に関係があるかといえば、歴代の定番の陰謀ネタに、特権階級の人間はどこからか誘拐してきた幼児を、常日頃から組織的に虐待しているというものがあり、そればかりか、若返りのための養分として食べたり、そのエキスを美容注入しているというものがあるからだ。
さっそくほら見たことか!と陰謀論者はハリウッドセレブがディープステーツやイルミナティの一員であるという妄想につなげていったわけである。幼児たちを誘拐して自分達の慰めものにしているのはセレブたちだ!ということです。これはQアノンの主張でもある。
例えば「アドレノクロム」というのは若返りの成分として一部で注目されているものだが、この言葉で検索すればわかるとおり、様々な陰謀論のターゲットになっている。この成分は、幼児を拷問などにかけて虐待し、それでホルモンを分泌させて抽出するらしい。それをセレブは美容に使っているという由。
さて、サンドラ・ブロックの「ペニスフェイシャル」の実際は、韓国の幼児からとられたペニスの包皮から培養されてつくられた成分の一部が入っているもの。韓国は割礼が一般的なので入手しやすいというのはあるかもしれないが、別にそのものズバリのものが入っているわけではない。あくまでも培養される最初の細胞がそれということ。
これをペニスから出来た成分と言ってトークショーでオモシロネタとして話してしまったのが良いのか悪いのかわからないが、世界を支配する勢力は恐るべき幼児虐待を日に日に秘密の場所で行っているという妄想にさらに確信を与えてしまったと言う罪はあるのかもしれない。
「悪魔崇拝者が幼児虐待」をしているというのも、このひとつだ。さらにイマジネーションに拍車がかかると「火星に子供を性奴隷にしている植民地がある」という説に至るわけである。別に火星じゃなくてもいいと思うのだが、どうなんだろうか。
なお、さすがに火星が出てきても現実感がさすがにないだろうという人のためには「ウェイフェアゲート」というのもある。
アメリカの家具の通販業者のウェイフェアが、実はそのビジネスの陰で、タンスやキャビネットの中に子供を隠して児童売買しているという説だ。子供たちは人身売買される前に窒息したりしないんだろうか。
ちなみに、この陰謀論が出てきた理由のひとつは、販売されている家具の商品名に人の名前っぽいものがつけられていて、それが行方不明の子供の名前と同じということらしい。そんなわかりやすいことしないと思うんだが、普通。
現実世界を侵食し始める陰謀論
◆「ピザゲート事件」
この子供を連れ去り虐待するというパターンは他にもある。そしてその妄想は「ピザゲート事件」で、最悪の形で現実の世界にグロテスクに姿を現す。
民主党のヒラリー・クリントンや関係者が、そのような幼児の人身売買や性的な虐待に関わっているという陰謀論で、一時期4chanにて盛り上がりった。人身売買と悪魔崇拝者が幼児虐待はQアノンにも引き継がれた現代アメリカの定番陰謀論である。
これを信じきってしまった4chanねらーが、その幼児売買の拠点となっているとネットでデマを流されたピザ屋に乱入し発砲事件を起こすという完全にシャレにならない事態になったのである。
このピザゲート事件は、「悪魔崇拝者が幼児虐待」「火星に子供を性奴隷にしている植民地がある」などのバリエーションの陰謀論のはずなのだが、民主党という新しい要素が加わって爆発的にネットで拡散されてしまった。考えればそんなことはありえないというのはわかりそうなものなのだが、なんでこんなことを信じてしまうのだろうか。
◆「白人大虐殺」
南アフリカでは農園主の白人が大量に虐殺され、その農園が黒人に奪われているというアメリカの白人至上主義者の主張のこと。よりによってトランプ前大統領がこれを信じ込み、Twitterで「ポンペオ国務長官にこの件を調査するように伝えた」とツィート(ツイートはアカウント凍結で閲覧不可)。南アフリカ政府が抗議するという事態に。
ただし、南アフリカでは長い白人至上主義の時代からアパルトヘイトの最近まで、植民地時代の大土地所有が残りつづけており、農地改革的の政策が進んでいることは事実。そのためにそれに不公平感を抱く南アフリカの白人層がいるのも事実。そして、そもそも治安が世界最悪レベルで悪い土地柄、白人で犯罪に巻き込まれる人も多数いるのもこれまた事実。
しかしこれを「白人大虐殺」されていると表現できるかといえばどうなのかと。
この無理やりなジェノサイド認定には、普段、黒人やアメリカ先住民が虐殺されたという話を悲劇として語る人たちに対する当てつけの意味がこめられているのであろう。もちろんこの主張を繰り広げているのは、土地収用に反対する南アフリカの白人の人たちの一部と、これを支持するアメリカの白人至上主義の人たちがメインである。
お決まりの陰謀論ターゲットな著名人
◆「ジョージ・ソロス」
◆「ビル・ゲイツはマイクロチップを人の頭に埋め込もうとしている」
現代アメリカの陰謀論には至る所に出ずっぱりでレギュラーで出演している人物がいる。そのうちジョージ・ソロスとビル・ゲイツは両巨頭といっていいだろう。ジョージ・ソロスはユダヤ金融資本陰謀論と相性が良く、ビル・ゲイツは科学陰謀論と結びつくことが多い。
両者とも大金持ちのエリートで慈善家の側面もあり、そこから来る格好のうさん臭さから、「実は・・・」という展開に結びつきやすいのであろうか。
筆者もこの二人は100%は信用できないと思っているが、ワクチンにマイクロチップを混入させてそれを人に植え付けようとしているとかなんとかと語る人よりは、それでもまだ信用度は遥かに高いのではないだろうか。
現実の社会問題の「写し鏡」としての陰謀論
◆「サンディフック銃乱射事件は政府のでっちあげ」
2012年にアメリカのコネティカット州で、20歳の若者による小学校での銃乱射事件があった。この事件では子供と学校関係者26名が命を落としている。この手の無差別テロが現在でも延々と発生し続けているのは、その銃乱射したテロ事件を賛美するような4chanのようなダークサイドウェブの存在や、そもそもの銃が野放しになっているアメリカの実情などが様々に絡み合っているからだ。
銃規制に関してはこれまで幾たびも議論されながら、いまだ全く目途が経たないのがアメリカなのだ。
さらには、この痛ましい事件を銃規制に対する陰謀だとして、銃乱射事件は存在しなかったという人たちがいます。当時、銃規制に積極的だったオバマ政権が仕組んだ陰謀というわけです。
この陰謀論を流布したひとりが、アレックス・ジョーンズという陰謀論のデパートのようなラジオのDJだ。あらゆる極右の陰謀論がとめどもなく延々と垂れ流されるアレックス・ジョーンズのラジオ番組「インフォ・ウォーズ」はそれでもアメリカでは人気番組のひとつとなっている。
そして、よりによってトランプ前大統領は「世界のどんな政治家よりもキミに会いたかった」とまでアレックス・ジョーンズを賛美してしまっていたのである。もうどうなっているんだろうかアメリカは……。
◆「幼児番組のサブリミナルメッセージ」
テレビや映画や広告などの画像に、ある種のメッセージをわからないように紛れ込ませて認知させたり、それによって潜在意識に訴えかけるというのがサブリミナルメッセージ。
しかし、そもそもこのサブリミナルメッセージというのが実際に効果があるのかという議論が、まずは大前提としてある。そんなものが実際に人間の潜在意識に働きかけるのかという疑問がひとつ。さらには、広告画像に性器などのセックスシンボルをまぎれこませて広告効果を狙うというのもあるが、そんな手の込んだことしなくてもセクシー女優を広告につかっておけばいいだけじゃね?ということだ。
一時期、テレビのアニメ番組に、オウム真理教の教祖の画像がヒトコマだけ紛れ込ませてあったというのが見つけられて大騒ぎになったこともあったが、結局アニメーターや編集スタッフに信者がいたわけでもなく、単なるお遊びだったわけだ。もちろんその効果を本気で信じてやる人たちもいるのだろうが、すでにそのようなものは社会から叩かれてしまうものでリスクのほうがむしろ大きい。
それなのに……延々とアニメなどの幼児番組に性的なサブリミナルメッセージが仕込まれていると、心霊写真を発見するように大騒ぎする人たちが多数いるわけである。これはいわゆる信頼されている大手メディアなどでもマジメに取り上げられていることが多いようだ。自殺を誘導するようなメッセージが仕掛けられているとかなんとかうんとかも陰謀論のみなさんはさらに深刻に受け取っていくのである。
しかしそんなことを心配する前に、セクシーな露出や性的なシーンがあったり、暴力シーンや死を美化するようなアニメやゲームをなんとかするほうが、より社会のためになるのではと思うのだが……。もちろんそうしろというわけではありませんので念のため。
都合が悪いことは何でもかんでも陰謀のせい
◆「山火事はアンティファの犯行」
とにかく今はアメリカの右派陰謀論ではとにかくアンティファが仮面ライダーのショッカーのように至る所に出没する。
アンティファは、反ファシズムを掲げたり、反差別の実力行動を行う人たちの自称である。
中には直接暴力行動をする人もいないではないが、実際はスローガンみたいなもので、誰でも名乗れはアンティファということができる。私もアンティファ、あなたもアンティファ。
そういう、「実態がないのに存在感は大きい」という意味で謎めいたものになるのはわかるような気もするが、とにかく何か悪いことが起きるとアンティファの仕業というの定番の陰謀論となってしまっている。
最近では今年はじめの連邦議事堂襲撃事件はアンティファが仕組んだものというのがあった。もちろん現在に至るまでアンティファの存在は一人たりとも見つけられていない。当たり前だが。
日本の右翼発言で有名なお笑いタレントさんもその説をテレビで開陳していた。お笑いの人は頓珍漢なことをいっても笑われてナンボということですんでしまうからいいとは思うが。
昨年にオレゴン州の大規模な山火事があったが、これもなぜかアンティファの犯行とされて通報が殺到し、消火活動の迷惑だからとFBIが正式にこの情報を否定したということがあった。それにしても反差別のために山火事をおこして何かいいことあるのだろうか。陰謀論者の無限の想像力には感服する。
ネトウヨ学者や知識人が毒される陰謀論
◆「フランクフルト学派」
これは原文は「文化マルクス主義」だが、日本語訳には「フランクフルト学派」とした。なぜならば日本では、この文化マルクス主義、つまりフランクフルト学派のことなのだが、この陰謀論というのがフランクフルト学派の名のもとに、日本ではけっこうな知識人でも真面目に語ったりしているからだ。「コミンテルン陰謀論」とか「WGIP(ウォーギルトインフォメーション)陰謀論」とセットになっていることが多いようだ。
ナチス時代にアメリカに亡命してきたユダヤ系の学者たちが広めた文化マルクス主義が、現在のポリティカル・コレクトネスなどの元祖であって、それはアメリカや日本を破壊するための工作なのだ。これが文化マルクス主義=フランクフルト学派陰謀論です。日本の場合はGHQの「ウォーギルトインフォメーション」による洗脳とかとセットになっていることも多い。
フランクフルト学派が文化的な影響力を与えたというのは間違いない話であろうが、じゃあそれが革命思想とか破壊思想かといえばそんなことは決してなく、むしろ穏健な社民主義と結びつくことのほうが圧倒的だ。
ポリティカルコレクトネスの行き過ぎが議論になることも多い昨今だが、これらが実際に様々な不平等や不実を正してきたのは間違いない事実だろう。
それがアメリカや日本を破壊するという陰謀とされるのは、自分達の考えている理想と違うものはすなわち破壊なのだという、自分達のかなえられない願望の裏返しなだけである。
「反科学」「反知性」を生み出す陰謀論
◆「5G」
◆「反ワクチン」
◆「新型コロナは生物兵器」
定番陰謀論である。科学というものは重要だと思う……とだけ言っておこう。すべて日本でも信奉者が多数いる。決して邪険にはせず優しくしてあげたほうがいいかもしれない。そしてそっと間違いを指摘してあげよう。それ以上は自分で気づくまで何をやっても無駄だろう。
そのうえで言いますと、ワクチンに対する不安はもっともなことではある。
しかし、自閉症児の原因とか、さらにそこから飛躍してそのワクチンがユダヤ人による人類白痴化計画のためにつくられているとか、ワクチンの中にマイクロチップが混入されているとか、さすがにそういうのは世のなかのためにならない珍説の類いである。
◆「フィンランドは存在しない」
フィンランドは、日本とソ連がでっち上げた架空の国で、バルト海の漁業を独占するためにつくられたんだそうな。そのため今でもシベリア鉄道でその魚を今でも日本に運んでいるということらしい。日本の家庭のお魚のために、そこまでの壮大な取り組みが行われていたとは驚きである。
◆「なぜマットレス店はあんなに多いのか」
マットレスファームという、マットレス小売チェーン店が、交差点の角すべてに4店あるのを見かけたが、マットレスなど何年に一回しか買い換えないのに、売れるはずもなくおかしい。マットレスファームは実はマネーロンダリングの拠点なのではないか・・・という陰謀論。
ちょっと前に『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』(光文社新書)という本がベストセラーになっていたことがあった。さおだけ屋に限らず、町中の布団屋や家具屋やミシン屋はなぜ潰れないのかというのもネットにはいろいろ書かれているのである。
この答えは実に簡単で、買い替え需要が数年や数十年に一度という商品はたいがいは粗利が高く、多売薄利を見て繁盛していると判断している人には不思議に思えるだけなのだ。業務用や通販などの倉庫の代わりに展示してあるというのもあるそうだ。まあ確かになんで潰れないのか不思議にもなるのはわかるが……。
◆「ソイボーイ」
日本語直訳で「豆男」。日本ではこのソイボーイを紹介するのに、男性らしいガツガツとした恋愛感情がない「草食男子」や、オタク男子の「チー牛」のネットスラングを例に出しているようだ。しかし、これはちょっとニュアンスとして違う。これはずばりゲイっぽい男性のことを指すといっていいだろう。
豆ばかり食っているような人間は男らしくないというところから来るわけだが、それだけではすまないのが、アメリカ陰謀論の世界のディープなところ。
陰謀論のデパートとして「サンディフック銃乱射事件は政府のでっちあげ」で出てきたアレックス・ジョーンズがここでも登場する。
曰く、もともとアメリカ軍が敵対する軍隊の戦闘力を減らすために、男性が同性愛に走るようにプログラムされた大豆をつくった。男性同士が恋愛すれば、軍隊は混乱するだろう。しかし、それがなぜかアメリカの大豆にまで混入して、そのために男性の同性愛者が増えたのだ。そうでなくとも男らしいガッツのあるヤツがすくなくなってきたろう?
アメリカがつくった「食物兵器」でアメリカがやられてしまっているという、なんともおまぬけな話だということなのだが、これがネットでは大流行。こうして大豆陰謀論のソイボーイが出来上がったというわけである。
害は少ないけど陰謀論は陰謀論
さて、ここから下の部分は定番の陰謀論でも比較的害の少ないものが並ぶ。月刊ムーの世界である。
先日、ムーの最新号がQアノン特集だと聞いて、どんなもんだろうとのぞいてみたが、その特集ページまでの見開きが
「最新UFOレポ:パキスタンにフーファイター」
「ブリューゲルの名画に恐竜が描かれていた」
「ポラロイド写真に謎の霊メッセージ」
「清田益章がデジカメ念写」
などと続き、何故かホッとした気分になった。
その中で、日本の人たちには今一つ事情がよくわかってないものをいくつか解説しよう。
◆「#ブリトニーを自由に」
ブリトニー・スピアーズさんが、もう長らく精神的に不安定な状態が続いていることはご承知の方もいらっしゃるだろう。結婚と離婚と奇行と入院をくりかえし、それをパパラッチが追いかけまわして、また雲隠れとカムバックというサイクルを20年繰り返してきている。
ウィキペディアの日本語版のブリトニーの項目を見にいったら、そのスキャンダルも2010年くらいで書かれておらず、どうやら日本のブリトニーファンも哀れに思って編集するのをやめてしまったようだ。
ブリトニーは現在では成年後見人の保護下で暮らしており、父親が彼女の生活の面倒を見ることになった。が、これがブリトニーの財産目当てで、彼女は監視下で不自由な生活を送っているということになり、アメリカのセレブまでもが、ブリトニーを後見人から自由にしてあげるようにとのネットのハッシュタグ運動をはじめてしまったのである。
これは非常に微妙な問題で、実際にブリトニー自身も父親が後見人になるのを拒否しているのであるので、なんともいえない話ではある。
そんなわけで、このあたりからは陰謀論とも必ずしも言い切れないものが続く。UFOとかエリア51がここにあるのはご愛敬。
デタラメを強化する「本当にあった陰謀論」
そしてここから先のいちばん小さな部分が実はもっとも問題で、陰謀論が世に溢れて出てしまうもっとも有力な理由となってしまう原因となるのだ。つまり、これは陰謀論だとされていたが、実は本当にあったこととわかったものだ。
「コインテルプロ」は、悪名高き、FBI初代長官のエドガー・フーヴァーによる違法な政治団体などの監視プログラム。もともとはアメリカ共産党を監視するための情報操作作戦だったのが、これがいつのまにか反差別団体やフェミニスト団体、反政府的な主張を持つということで、ジョン・レノンのようなアーチストやジェーン・フォンダのような俳優などにまで、スパイ活動や妨害工作、ある時は脅迫活動までしていたのである。
この手の話で実際にその陰謀がバレたものは多数ある。
「MKウルトラ計画」は、人間の洗脳プログラムのこと。SFなどでおなじみだが、これをアメリカは本当にやろうとしていたのだ。
なんとも残酷な非倫理的な人体実験ともいえるが、これに関してはもっとショッキングなものが「タスキギー実験」。
梅毒の治療方法の実験のために、アメリカの黒人たちが梅毒治療の実験材料とされて、長らく梅毒にかかったことを研究者は知りながら、そのまま治療されずに観察対象とされいたのである。
驚くべきことにこの実験は1970年代まで続いていた。担当していた研究者たちは「彼らは被験者ではあるが患者ではない」として治療しなかったことを弁解したというが、なんともはやな話である。
「モッキンバード作戦」はCIAによるメディアの情報工作作戦のこと。都合の良い情報を流して世論対策をするというものだが、これは日常的にどの政府もやっていることだろう。アメリカのメディアの「正義」に確たる裏付けもなく信用してはいけないということだ。
アメリカではないが、密接に関係があるのが「ナイラ証言」。
1990年にイラクがクウェートに侵攻した時に、クウェートから逃げてきたという少女が「イラク兵が病院で乳幼児を殺している」と証言し、イラク兵の残虐性を訴えたのだが、実はこれが芝居であったことが後に発覚。クウェート政府が雇った広告代理店が仕込んだプロパガンダであったのだ。
このナイラ証言の陰謀は、「目撃者」と感情的な情報のみでメディアが報道してしまう危険性と、戦争プロパガンダを企業が行うという二つの問題点を残したが、おそらくこれはまだ世界各地で続いているのではないかと思われる。どれがそれに値するプロパガンダかは、もちろん時間がたたなければわからない。感情的なだけの報道には要注意なのだ。
「PRISM」は、アメリカの全世界のネット監視システムのこと。2013年にエドワード・スノーデンの内部告発によって暴露された。Google、Facebook、アップル、マイクロソフト、YouTubeなど、そうそうたるアメリカのネット企業のメールなどの通信データが、実はアメリカ国家安全保障局(NSA)により、いつでも情報入手ができたという実態は全世界に衝撃を与えた。
最近、LINE社のデータが中国から閲覧可能だったことが問題視されたが、とうの昔からアメリカはもっと露骨にやっていたのだ。そればかりか日本、フランス、ドイツなどの首相までもが電話盗聴の対象だったということまでバレてしまったオマケつき。
当時のオバマ大統領は、どこの国の諜報機関でもそれぐらいはやっていると苦しい言い訳をしつつ、その活動を制限することにしましたが、これも今でも続いていることだろう。
これにより、エドワード・スノーデンは陰謀論者のなかでは、自分達の正当性を証明する英雄になった。
終わりに
「読んでみたけど自分でどう調べたらいいのか分からない」
恐らくほとんどの人がこう思ったはずです。
何もかもが誰かにとって都合よく作られているような現代社会において真実とデマを見分けるのは楽ではありません。
あなたはこれまで情報収集にどれだけ時間を使ってきましたか?
おそらく真実とデマを上手に見分けている人ほど膨大な時間を使っているはずです。
僕も一度立ち止まり、24時間365日を情報整理のために費やしました。
多くの人々は何か特定の物事に詳しい人物に対し、他のことも詳しいはずだと思い込みます。
仮にそんな場所があったら誰もが入りたいと思うのではないでしょうか。
実際に僕はそのような場所を探していたのですが、残念ながら見つからなかったのです。
人々の認識を変えられる人間なんてほとんどいないので当然とも言えます。
だから、自分で作りました。
何か限られた特定のことだけではなく、現代社会を生きる上で必要な情報が整理された場所。
コミュニティ参加の流れは、
①下記のリンクから私の公式LINEに飛ぶ。
②年齢、名前(実名が望ましいが、偽名可)のメッセージを送る。
こちらの2ステップです。
これから起こる出来事を一緒に俯瞰しながら乗り越えましょう。