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微動だにしない男との接見記録⑦   ~事件について~

被告人I 無職 事件番号:令和2年(あ)第●5●号

強盗殺人・傷害・窃盗・覚せい剤取締法違反

検察官求刑:無期懲役 

現在上告棄却決定に対する異議申し立て中

男には事件についてももちろん尋ねた。

「事件について教えてください」

「はい。何でも聞いてください」

「Iさんはあの日、つまり25年の2月22日にスバル・インプレッサが盗まれてそれを阻止しようとした持ち主の男性が車にしがみついたものの振り落とされて亡くなってしまった事件・・・被害者の方を振り落としていない?つまり運転してない?」

「はい。運転してません」

「まあ裁判でも証言してますが・・・では誰が運転していたんですか?」

「A(窃盗の共犯者)です」

「差し戻し前の一審では共犯者AさんとBさん及び知人Cさんの証言は信用できないとして無罪になりましたが第一次控訴審ではAさんとIさんの書簡が証拠請求され、それが判決に影響を及ぼす証拠とされましたが・・・」

「控訴審では手紙の他にAとBの証言は信用できるとされましたが、まあ手紙ですよね。有罪に導く証拠って手紙しかないんですよ」

「色々と聞きたいこともあるんですがまず差し戻し審にAさんとBさんが証人として来ました。自分も傍聴席にいたんですがAさんが右陪席の裁判官や裁判長と軽く言い合いましたが、その時傍聴席の知人の人に笑いかけてたのが見えたんです。あれはパフォーマンスだと思いますか?」

「Aは自分にもうつ伏せにして周りに見えないようにして笑いかけたりしてふざけてるんですよ」

「Aさんがこの事件のあと隠滅工作とかを主導的にしていると裁判で明らかにされてますがIさんは事件のあとそんなに気にしてなかった?」

「そうですね。まあ自分が運転していないというのもありますが全然気にしてなかったです」

「Aさんとの関係でいえばCさんの証言。つまり盗んだインプレッサをヤードに持っていったときの話ですね。この車を盗んだときに人がボンネットに乗ってきたが落ちたのを見たとそしてその車を運転していたのはY(Iの名前)だとAさんがCさんに言ったというやりとりですが・・・」

「それは差し戻し審でAがCにそんなことは言ってないと明確に否定してます」

「Bさんの証言についても聞かせてください。Bさんは差し戻し審で被害者が亡くなったこの事件の運転者は誰かという検察官からの質問に言いたくないと答えました。更に弁護人からの質問にそれは前の証言(差し戻し前一審の運転者は誰かという質問にIさんと答えてる)が偽証になる可能性があるからか?と聞かれ「そうです」と・・・」

「それはB君が自分にできるなりに真実を語ってくれたんだと思いました。これは面会に来てくれた友人とも話したんですがAもBも辛くて苦しんでるんだと・・・」

「Iさんはそれを聞いてどう思いましたか?」

「まあAはともかく(笑)・・・。B君は苦しんでると思いますよ」

「それは第一審でBさんがIさんが運転してたと証言したときに帰りの廊下ですれ違ったときに手を合わせて謝ってきたと・・・」

「そうですね。そういうこともありましたね。ただB君は本当のことを言うことでAを恐れてるんだと思います」

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